第114話 帰宅!
第11階層の攻略を終えてから少しして、陸は石床に倒れたままのグランドナイトへ目を向けた。
「そうだ、こいつも忘れないうちに」
陸は倒れた身体へ手を向ける。
「スケルトンラッシュ!」
青白い光が広がり、グランドナイトのスケルトンが立ち上がる。陸はそのままスケルトンストックへ戻した。
その直後、石室の中央に青白い光が集まり始める。
「あ、報酬!」
陸が見ている前で光が箱の形へまとまり、一つの宝箱が現れる。さっきまでグランドナイトと戦っていた石室はもう静かで、あれだけ響いていた衝撃音が嘘みたいだった。
「開けよ!」
「うん!」
エリナと一緒に宝箱へ近づき、陸は蓋を開けた。
中に入っていたのは、紫がかった銀色の金属塊だった。細長く整えられた表面には鈍い光沢があり、手に取ると見た目以上にずっしり重い。
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アダマンタイトインゴット ×1
希少な金属アダマンタイトを
精錬した素材。
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「アダマンタイト……!」
陸の表情がぱっと明るくなった。手の中のインゴットを少し傾けるたび、紫がかった表面に鈍い光が流れる。何度か角度を変えて眺めたあと、陸はようやくアダマンタイトインゴットを所持アイテムへしまった。
それから少しして、陸とエリナは家へ戻った。
「…………疲れた」
リビングまで来たところで、陸はそのままソファへ倒れ込んだ。柔らかい背もたれに身体が沈んだ瞬間、それまでどこかに残っていた力まで一気に抜けていく。隣ではエリナもソファへ飛び乗り、陸の横へぺたっと身体を預けた。
「つかれたー……」
「エリナもか」
「うん……」
家の中は静かだった。見慣れた天井も、テーブルも、ソファも何も変わっていない。それなのに、ここへ戻ってくるのがずいぶん久しぶりに感じる。
ここ数日は、ほとんど第11階層で過ごしていた。探索して、育てて、戦って、祭壇で眠って、また進む。休んでいる時でさえ、頭のどこかではずっと残り時間を気にしていた。
終わった。その事実が、家に戻ってきてようやく身体に追いついてきた気がした。
陸は横にいるエリナへ手を伸ばし、頭をゆっくり撫でる。
「ありがとな、エリナ」
「ん?」
「ずっと付き合ってくれて。エリナいなかったら、たぶんもっとしんどかったわ」
エリナは撫でられたまま陸を見上げた。
「エリナ、たのしかったよ!」
「そっか」
「リクと、いっぱいあそんだ!」
「攻略よりそっち覚えてんの?」
「うん!」
迷いのない返事に、陸は笑った。
「まあ、俺も楽しかったけど」
エリナの頭をもう一度撫でる。エリナは満足そうに目を細め、そのまま陸の横で丸くなった。
しばらく二人とも何もせずにいた。何かを急いで確認する必要もない。残り時間を見る必要も、次にどこへ向かうか考える必要もない。それだけで、陸はもう一度深くソファへ沈んだ。
やがて、テーブルの上に置いたスマホが目に入った。
「そういや……全然見てなかったな」
陸は身体を起こさないまま手を伸ばしてスマホを取り、そのままSNSを開いた。
「……うわ」
最初に見えた画面から、JOHNの名前が並んでいた。
『JOHNありがとう!!!』
『地球一位!!!』
『マジで最後の逆転やばすぎる』
『外に出られるぞ!』
『JOHN何者なんだよ』
『今日は一生忘れない』
画面を少し動かしても、またJOHN。トレンドも、動画も、ニュースも、ほとんど同じ名前だった。
「これ……全部俺のことかよ」
自分が攻略している間、外で何が起きていたのかはほとんど知らない。ただ一位を取ることだけ考えていた。陸はスマホを持ったまま、しばらく流れていく投稿を眺めた。
「なんか……すげえことしたんだな」
「リク?」
「いや」
陸は少し笑って、スマホを胸の上へ置いた。
「勝ててよかったなって」
「いちばん!」
「そう。一番」
エリナが嬉しそうに翼を動かした。
その時、陸の目の前に青白い光が集まった。
「ん?」
スマホの画面から顔を上げる。
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【文明攻略戦 最終結果】
最終順位:1位
【文明報酬】
外界への移動制限を解除
【個人特別報酬】
内容を確認しますか?
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「……来た」
陸はソファへ沈んだまま、目の前のウィンドウを見つめた。さっきまで身体を起こすのも億劫だったのに、疲れで重かった目が少しずつ開いていった。
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