第111話 激突!
先に動いたのは、四十体が融合したスケルトンだった。大きな白骨の翼が開き、翼骨の隙間をつなぐ青白い魔力の膜が揺れる。その巨体は軽々と石床を離れ、そのまま広い空間の上まで高度を取った。
「飛んだ……!」
エリナが見上げるより早く、上空で剣が振り抜かれる。青白い斬撃――フォーススラッシュが斜め下へ走った。
グランドナイトは横へ踏み込み、ぎりぎりでかわす。斬撃が背後の石床を抉り、砕けた石片が跳ねた。
その上から今度は、スケルトンの周囲へ百本近い青白い矢が一斉に広がった。マジックアローが雨のように降り注ぎ、グランドナイトの周囲一帯を埋め尽くす。グランドナイトは走りながら長剣を振るい、正面から迫る矢をまとめて弾き、わずかな隙間へ身体を滑り込ませる。それでも全部は捌けない。肩や脇腹へ青白い矢が次々とぶつかった。
バンッ! バンッ!
重い鎧が揺れた。それでも止まらない。
上空では、すでに次の光が集まっていた。マジックアローとは比べものにならない濃さの魔力が一点へ圧縮され、太い青白い塊へ変わっていく。
「まだ来る……!」
圧縮された光がマナブラスターとなって真正面から撃ち出される。グランドナイトは避けなかった。両手で長剣を握り、一歩だけ前へ出る。刃に青白い光が走った次の瞬間、ブレイドカウンターで迫る魔力の塊を下から斬り上げた。
ギィンッ!!
斬られたマナブラスターが、その勢いのまま跳ね返る。
「えっ!?」
一直線に戻ってきた光を、スケルトンは空中で身体を倒すようにしてかわした。すぐ横を通り抜けたマナブラスターが上方の石壁へ突き刺さる。
ドガァンッ!!
光と爆煙が広がった。
その下で、グランドナイトの姿が消える。
石床を蹴って跳び上がったグランドナイトは、エアステップで何もない空中を一段、さらにもう一段と蹴り、爆煙の脇を抜けて一気に距離を詰める。
「速っ……!」
スケルトンの目前まで迫った瞬間、グランドアクセルでさらに加速した。前へ弾けるように振り抜かれた長剣をスケルトンが剣で受けると、空気まで震えるような衝撃が走った。
ガァンッ!!
受け止めた。だが止めきれない。
スケルトンの巨体が空中を大きく弾き飛ばされる。翼を広げて姿勢を戻すころには、グランドナイトはもう石床へ落ち、両足で着地していた。
離れた。
上空と地上。
スケルトンが剣を振り下ろす。そこから放たれたフォーススラッシュが斜め下へ走り、ほぼ同時に、地上のグランドナイトも長剣を振り上げた。
下から撃ち返されたフォーススラッシュが昇る。
二つの青白い斬撃が、両者の中間で正面からぶつかった。
ドォォンッ!!
膨れ上がった光が視界を白く染め、爆風が石床まで叩きつける。陸は咄嗟に腕で顔を庇い、エリナも翼を縮めた。
その一瞬だけ、二体の姿が消えた。
次に見えた時、グランドナイトはもう煙の中を突き抜けていた。エアステップで一気に上へ駆け、スケルトンの懐へ飛び込む。
剣がぶつかる。
ガンッ!
スケルトンが受ける。二撃目が来る。流した直後、グランドナイトは空中を横へ蹴り、死角へ回った。
三撃目。
ガァンッ!
骨の身体がまた押される。
スケルトンが翼を広げて離れようとするたび、グランドナイトが追いつく。上へ逃れれば空を蹴って上へ。横へ流れれば、その進路へ先回りする。スケルトンが剣を振れば長剣で受け、押し返し、次の瞬間にはもう一歩内側へ入り込んでいる。
ガンッ! ギィンッ! ガァンッ!
火花が何度も散った。
スケルトンが一撃を受け流し、そのまま斬り返す。初めてまともに返した一撃だったが、グランドナイトは身体を沈めるだけでかわした。剣が頭上を抜ける。その懐へ踏み込み、横薙ぎ。
スケルトンが剣を差し込んで止める。
それでも、身体ごと大きく横へ持っていかれた。
「すごい……」
エリナの声が小さく漏れる。陸は返事もできず、空中でぶつかり続ける二体を目で追っていた。
遠くからなら、スケルトンが押している。斬撃も魔法も、空を動きながら撃ち続けられる。
けれど、剣が届く距離だけは違う。
グランドナイトが離さない。
上段から振り下ろされた長剣をスケルトンが受ける。すぐに剣が返り、今度は下から斬り上げてきた。
ガキィンッ!!
二本の剣が大きく弾かれる。
ほんの一瞬だけ、間が空いた。
スケルトンの翼が大きく開く。
一気に後方へ。
グランドナイトも追う。エアステップで空中へ踏み出した直後、その正面をフォーススラッシュが横切った。
身体を捻ってかわす。
その横では、百本近い青白い矢が一斉に広がる。放たれたマジックアローが空中を埋め、グランドナイトの進路をまとめて塞いだ。
グランドナイトは空を蹴って軌道を変え、わずかに空いた射線を抜けて石床へ着地すると同時に走り出した。続けて飛んできたフォーススラッシュには長剣を斜めから当て、横へ逸らす。
それでもスケルトンは止まらない。大きく弧を描くように空中を回り込み、別の角度からマナブラスターを撃ち込む。
グランドナイトが長剣を光らせ、ブレイドカウンターでマナブラスターを斬り返す。跳ね返された青白い塊は、もうそこにいないスケルトンの横を通り過ぎた。撃った直後には翼を傾け、進路を変えている。
グランドナイトが石床の上で長剣を構え直す。上空ではスケルトンが翼を広げたまま動きを止めた。
今度は、どちらもすぐには動かない。広い空間の中で距離を取った二体が、もう一度向かい合った。
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