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第11話 第1階層のボス戦!

 鼓舞の杖を手に入れた陸は、十体のスケルトンを連れて再びダンジョンの奥へ進んだ。


「次、早く試してみたいな」


 杖を肩に担ぎながら歩く。


 途中で何体かゴブリンと遭遇したが、十体になったスケルトンたちの相手にはならなかった。鉄の剣を持った大きなスケルトンが一体を斬り、短剣持ちの二体が別のゴブリンへ飛びかかる。残りも一斉に囲めば、戦闘はすぐに終わる。


「いや、十体になるとほんと一瞬だな」


 倒れたゴブリンを見ても、もう増やすことはできない。


「上限だけはどうにかしたいなあ」


 そんなことを考えながらさらに進んでいくと、しばらくして陸の足が止まった。


「……ん?」


 通路の突き当たりに、大きな扉がある。


 石壁にはめ込まれた両開きの扉で、表面には見たことのない模様が刻まれていた。


「うわ、なんかめっちゃそれっぽい」


 陸はすぐ近づく。


「これ、ボス部屋とかじゃね?」


 扉の前まで来ると、青白いウィンドウが浮かんだ。


━━━━━━━━━━━━━━

【第1階層 ボスエリア】


ゴブリンソルジャー ×1

ゴブリン ×9


入場しますか?

━━━━━━━━━━━━━━


「うわ、やっぱボスじゃん!」


 陸は一気に画面へ顔を近づける。


「ゴブリンソルジャー? なんか強そうなのいるな!」


 普通のゴブリンが九体。さらに、その上に見たことのない名前が一つ。


 でも、こっちも十体いる。


「十対十じゃん!」


 思わず後ろを振り返る。


 鉄の剣を持った大きなスケルトン。その周りに、九体のゴブリンスケルトン。


「いいじゃん。行ってみようぜ!」


 陸が入場を選ぶと、目の前の大扉が重い音を立てて開き始めた。


 ゴゴゴゴゴ……。


「うわ、演出までボスっぽい!」


 扉の向こうは、これまでの通路よりはるかに広い空間だった。


 その奥に、ゴブリンたちが並んでいる。


 一体、二体、三体。


 小柄なゴブリンが九体。


 そして、その中央。


「……でか」


 明らかに一体だけ違う。


 陸と同じくらいの身長があり、腕も脚も太い。普通のゴブリンが子供みたいに見えるほど体格が違った。


 しかも手には、幅広の鉄剣を握っている。


「あれがゴブリンソルジャーか!」


 ゴブリンソルジャーが低く唸る。


「グルルルル……!」


 その声に反応するように、周囲のゴブリンたちも一斉に身構えた。


 陸はすぐ杖を握り直す。


「よし。せっかくだし、最初から使ってみるか!」


 鼓舞の杖を高く掲げる。


「鼓舞の杖!」


 次の瞬間、杖の先端にはめ込まれた青い石が強く光った。


「おおっ!?」


 光が一気に広がり、十体のスケルトンを包む。


 直後、それぞれの骨の身体に薄い赤色の光がまとわりついた。


「うわ、何これ! めっちゃ強化された感ある!」


 赤い光は炎みたいに激しく燃えるわけではない。けれど、骨の周りを淡く揺れていて、明らかにさっきまでとは違って見える。


「よし! 行け!」


 陸が前を指さす。


 十体のスケルトンが一斉に駆け出した。


 向こうのゴブリンたちも動く。


 部屋の中央で、二つの集団がぶつかった。


 パァンッ!


 最初に響いたのは、ゴブリンスケルトンの拳がゴブリンの顔面を捉えた音だった。


「うわ、飛んだ!」


 殴られたゴブリンが、今までより明らかに大きく吹き飛ぶ。


 別の場所では短剣持ちのゴブリンスケルトンが相手の攻撃をかわし、そのまま腹へ短剣を突き込んだ。もう一体も横から斬りつける。


「やっぱ強くなってる!」


 鼓舞の杖の効果は、見た目だけじゃない。


 九体のゴブリン相手なら、もう完全にこちらが押していた。


 でも。


 ガキィンッ!


「うわっ!」


 部屋の奥で、今までとは全く違う音が響いた。


 陸がすぐそちらを見る。


 大きなスケルトンと、ゴブリンソルジャー。


 二本の剣がぶつかり合っていた。


「うおお! そこめっちゃボス戦してる!」


 ゴブリンソルジャーが力任せに剣を押し込む。


 大きなスケルトンが両手で鉄の剣を支え、真正面から受け止める。


 ギギギギッ、と金属同士が擦れる音がした。


「え、普通に押してる!?」


 今までのゴブリンなら、剣を振る前に首を落としていた。


 でも今回は違う。


 ゴブリンソルジャーが剣を引く。


 次の瞬間、横薙ぎ。


 ブンッ!


 大きなスケルトンが身体を後ろへ反らす。


 剣先が肋骨のすぐ前を通り過ぎた。


「うわ、危なっ!」


 避けた勢いのまま、大きなスケルトンが踏み込む。


 鉄の剣を斜め下から振り上げる。


 ガキンッ!


 ゴブリンソルジャーが剣で受けた。


「おおお!」


 今度は大きなスケルトンが押す。


 赤い光をまとった腕に力が入り、ゴブリンソルジャーの身体が一歩後ろへ下がった。


「効いてる効いてる! 杖の強化、絶対効いてる!」


 ゴブリンソルジャーが吠える。


「グガアアアッ!」


 剣を大きく振りかぶり、そのまま叩きつける。


 大きなスケルトンが横へ飛ぶ。


 ドガンッ!


 鉄剣が石床を叩き、鈍い音が部屋に響いた。


「うわ、床までいった!」


 その隙を逃さない。


 大きなスケルトンが一気に距離を詰める。


 振り下ろされた剣の横を抜け、そのまま懐へ入った。


 鉄の剣が横へ走る。


 ザンッ!


 今までの軽い一撃とは違う。


 刃がゴブリンソルジャーの脇腹へ深く食い込んだ。


「入った!」


 ゴブリンソルジャーの身体が大きく揺れる。


 それでも倒れない。


「まだ立つの!?」


 ゴブリンソルジャーが無理やり剣を振り上げる。


 でも、大きなスケルトンの方が速かった。


 一歩踏み込み、もう一度剣を振る。


 今度は首元。


 スンッ。


 一瞬だけ、音が消えたみたいに静かになった。


 次の瞬間。


 ゴブリンソルジャーの首が床へ落ちる。


「……うおおおお!」


 陸は思わず杖を握ったまま駆け出した。


「勝った! マジで勝った!」


 大きな身体が、ゆっくり床へ倒れる。


 ドンッ、と重い音が響いた。


 周囲を見る。


 普通のゴブリンたちも、すでに全部倒れていた。


 赤い光をまとった十体のスケルトンだけが、部屋の中に立っている。


「いや、めっちゃかっこよかったんだけど!」


 陸は大きなスケルトンのところまで走り、その肩を何度も叩いた。


「お前、普通に剣士じゃん!」


 スケルトンは何事もなかったみたいに立っている。


 その直後、陸の目の前に青白い光が浮かび始めた。


「……お?」


 さっきのモンスターハウスと同じように、ウィンドウが形を作っていく。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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