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第107話 もう一度囲め!

「今だ! 一気に行け!」


 石床を滑るソニックファングウルフへ、ダークウルフの本体と分身が左右から飛び込んだ。


「ラッシュファング!」


 本体が一気に間合いを詰める。ソニックファングウルフも立ち上がろうとするが、脇腹を抉られた直後では遅い。長い牙が肩へ食い込み、黒灰色の身体が大きく揺れた。


 すぐ反対側から分身も飛びかかる。ソニックファングウルフは強引に身体を捻ってかわしたが、その先へ今度は矢が飛んだ。


「ラピッドショット!」


 一射。二射。三射。


 最初の一本は頭を振って避けた。だが二本目が背中を掠め、三本目が脇腹へ突き刺さる。


「よし!」


 それでもソニックファングウルフは止まらない。低く身を沈め、ダークウルフの本体と分身の間へ飛び込もうとする。


 陸はすぐ後ろへ声を飛ばした。


「フレイムストーム!」


 ハイウィザードが杖を向ける。杖の先に赤い光が集まり、ソニックファングウルフの足元へ小さな火がいくつも灯った。


 黒灰色の身体が横へ跳ぶ。だが、そこにはダークウルフの分身がいる。反対へ切り返そうとすれば、アサルトホーンラビットが長い角を低く構えて迫っていた。


 次の瞬間、複数の炎が一斉に巻き上がった。


「ギャウッ!」


 炎がソニックファングウルフの身体を包む。黒灰色の毛が焦げ、敵は炎の中から転がるように飛び出した。立ち上がった時には、さっきまでの軽い動きがわずかに崩れている。


「今のでどうだ!」


 陸はすぐに鑑定した。


━━━━━━━━━━━━━━

ソニックファングウルフ

ランク:C

Lv.37


HP 238/520

━━━━━━━━━━━━━━


「半分切った!」


 まだ動ける。それでも、ここまで削れた。


 陸は拳を握った。


「よし! このまま押し切れ!」


 ダークウルフの本体が前へ出る。分身も反対側へ広がり、アサルトホーンラビットが逃げ道へ回ろうとした。


 その瞬間、ソニックファングウルフの輪郭がぶれた。


「来る!」


 一気に加速した黒灰色の身体が、囲みが狭まるより先にダークウルフへ突っ込む。本体も牙を剥いて迎え撃ったが、ぶつかる直前、ソニックファングウルフが鋭く向きを変えた。


「そっち!?」


 ダークウルフの横を抜けた直後、黒灰色の身体がもう一度踏み込む。長い牙が肩の骨へ食い込み、勢いのまま振り抜かれたダークウルフが石床を転がった。


「ダークウルフ!」


 横からアサルトホーンラビットが突っ込む。


 今度はソニックファングウルフの方が先に身体を返した。角の正面から外れ、そのままラビットの横腹へ肩からぶつかる。小さな身体が弾かれた。


「ラビット!」


 その間に、ソニックファングウルフは包囲の外へ飛び出していた。矢が追うが、一本目が届く前に黒灰色の身体はさらに加速し、広間の中央へ戻っていく。


「まだあんな動けるのかよ……!」


 ダークウルフもアサルトホーンラビットもすぐに立ち上がった。大きな傷ではない。


 陸は逃げたソニックファングウルフを睨む。HPは半分以下まで減っている。さっきの形をもう一度作れば、今度こそ倒しきれる。


「追え! もう一回囲むぞ!」


 三体が一斉に走り出し、ハイレンジャーも弓を引いた。


「ラピッドショット!」


 矢が放たれる。


 だが、さっきとは違った。


 一本目が届くより先に、ソニックファングウルフが大きく右へ走る。ダークウルフの本体がそちらへ回ろうとした時には、もう柱列の手前で向きを変えていた。


 分身が反対から挟もうとしても、二体が近づく前にまた広い中央へ抜ける。


「くそっ、囲め!」


 アサルトホーンラビットが先回りする。だがソニックファングウルフは角が届く距離まで近づかず、ラビットが踏み込む前に進路を変えて距離を取った。


「アローレイン!」


 一本の矢が上空へ昇り、魔力の光を帯びて大量の矢へ分裂する。


 だが、矢が降り始める頃には、ソニックファングウルフはすでに柱列から離れていた。降り注ぐ範囲の端を一気に駆け抜け、広い場所へ逃れる。


「また!?」


 ハイウィザードが杖を向ける。


 杖先に赤い光が集まったのを見た瞬間、ソニックファングウルフは走る方向を変えた。小さな火が灯った時には、もうそこにいない。炎だけが何もない石床から巻き上がる。


「なんで……」


 陸は眉を寄せた。


 さっきまでは、攻撃を避けながら逃げていた。だが今は、囲まれる形になる前に離れている。


 本体が距離を詰めると、今度はソニックファングウルフの方から一気に踏み込んだ。


「危ない!」


 ダークウルフが牙をぎりぎりで避けて下がる。その隙にソニックファングウルフはまた包囲の外へ走った。


 何度追っても、さっきと同じ形まで持っていけない。


 陸は広間を走る黒灰色の身体を目で追った。


「こいつ……戦い方、変えてきた?」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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