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第104話 ソニックファング!

 石橋を渡り切った陸は、そのまま城の奥へ向かって走り続けた。通路はすぐに屋内へ戻り、高い石壁に囲まれた長い廊下へ変わる。


 だが、さっきまで何度も現れていたモンスターが一体もいない。曲がり角を抜けても、階段を上がっても、聞こえるのは陸たちの足音だけだった。


「……いないな」


「しずか」


「ああ。なんか嫌だな、こういうの」


 止まっている時間はない。陸は速度を落とさず、やがて正面に見えた大きな入口へ飛び込んだ。


 その先は、天井の高い巨大な広間だった。左右には太い石柱が等間隔に並び、中央には奥まで長い深紅のカーペットが伸びている。壁には色褪せた旗や装飾が残り、広間の一番奥にはさらに先へ続く大きな扉が見えた。


 そして、カーペットの途中に一体だけ立っている。


「ウルフ……!」


 黒灰色の毛に覆われた身体は、普通のウルフより一回り大きい程度だった。だが、胴は細く、四本の脚は長い。大きな身体で押し潰すためではなく、走るために削ぎ落とされたような体つきをしている。


 口元からは長い牙の先が覗き、じっとこちらを見ている間も前脚と尾がわずかに動き続けていた。


 陸はすぐに鑑定する。


━━━━━━━━━━━━━━

ソニックファングウルフ

ランク:C

Lv.37


HP  520

MP  145

筋力 238

耐久 184

敏捷 278

賢さ 126


【スキル】

ソニックアクセル

クイックターン

ラッシュファング

━━━━━━━━━━━━━━


「敏捷278!?」


 サイクロンガーゴイルよりさらに高い。ソニックファングウルフが低く身を沈めるのを見て、陸はすぐに今の四体をストックへ戻した。


「入れ替える!」


 サイクロンガーゴイル、ハウリングバット、ゴブリンハイハンター、ゴブリンシャープシューターが青白い光へ変わって消え、代わって四つの光が広間へ広がる。


「来い!」


 陸が精鋭個体として呼び出したのは、ダークウルフ、アサルトホーンラビット、ゴブリンハイレンジャー、ゴブリンハイウィザードだ。


 ダークウルフは、シャドウウルフだった頃から骨の隙間で揺れていた黒い影がさらに濃くなり、足元の影まで生き物のように蠢いている。


 アサルトホーンラビットは、レイザーホーンラビットの頃より角が太く長くなり、肩や前脚の骨も一回り頑丈になっていた。


 ゴブリンハイレンジャーは、以前よりさらに引き締まった骨格で、長い腕と指を弓へ掛けている。手にした弓は、祭壇で育成していた時に作り直し、錬金で強化したものだ。


 ゴブリンハイウィザードは細い骨格こそ変わらないが、頭骨の周りだけだった青白い魔力が肩や腕にまで広がっている。手にした杖も、同じ時に作り直して錬金で強化したものだ。


「よし、行け!」


 最初にダークウルフが飛び出し、アサルトホーンラビットもすぐ横から駆ける。後方ではハイレンジャーが弓を引き、ハイウィザードが杖を向けた。


 ソニックファングウルフも動く。


「速っ!」


 黒灰色の身体が一瞬でカーペットの上から消えた。ダークウルフが向きを変えて追うが、距離が縮まらない。ハイレンジャーが続けて放った矢も、一本目を避けた時にはもう残りの射線から外れていた。


 横からアサルトホーンラビットが進路へ飛び込む。ぶつかる寸前、ソニックファングウルフは速度をほとんど落とさないまま身体を鋭く返し、石柱の外側へ滑り込んだ。


「クイックターンか!」


 陸はすぐに後方のハイウィザードへ顔を向けた。ハイウィザードの杖先も、ソニックファングウルフが抜けた先を追う。


「フレイムストーム!」


 杖の先に赤い光が集まり、ソニックファングウルフの進路へ小さな火がいくつも灯る。だが、複数の炎が一斉に巻き上がった時には、もう別の柱の向こうまで抜けていた。ダークウルフが追いつきかけても、敵の輪郭がぶれた次の瞬間には一気に距離を離された。


「ソニックアクセルまで……!」


 距離を取ったはずのソニックファングウルフが、今度は逆にこちらへ向きを変えた。ダークウルフが迎え撃とうと前へ出た瞬間、黒灰色の身体が低く沈む。


 次の一歩で、一気に間合いが消えた。


「ダークウルフ!」


 長い牙が脇腹の骨へ食い込み、そのまま勢いよく振り抜かれる。ダークウルフは石床を滑ったが、すぐに立ち上がった。その時にはもう、ソニックファングウルフは柱の向こうへ離れている。


「ラッシュファングまで速すぎるだろ!」


 速いやつをぶつけても追いつけない。矢も炎も、狙った場所へ届く前に抜けられ、近づけたと思えば逆に一瞬で攻撃される。


「くそっ! 普通にやったら当たらない!」


 ソニックファングウルフは広間を大きく回り、何本もの石柱の間を縫うように走っている。


 陸の目が、その柱へ止まった。


 追いつけないなら、追いかけなくていい。


「……逃げる場所を減らせばいいのか」


 陸は四体を見回し、広間の左右へ腕を振った。


「よし! 囲むぞ!」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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