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灼熱の魂  作者: ねこと
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第5話

「え、負けた!?」


 思わず叫ぶ。


 何度まばたきしたか分からない。


 視界の中で、白い光が高く跳ねる。


 カメラの連写みたいに。


 そのたびに位置が変わる。


 ――しかも。


 俺より高く、俺より速い。


 俺よりもメギドレイに押し負けた結果だ。


「……そうだ」


 気付く。


 メギドレイは。


 最初からあの光を狙っていた。


 そこに俺が割り込んだ。


 優先順位が俺に変わっていた。


「……はは」


 笑う。


 理解した。


「灼熱の魂は――俺の方だ」


 力が戻る。


 全身に、熱が巡る。


 だが。


 今の俺は、ただの“飛ばされた星”だ。


灼焼煉火(しゃくやくれんが)!」


 再顕現。


 炎が戻る。


 刀を握る。


 さらに。


「ソウルブースト!」


 光を増す。


 だが。


 遠くの白と、自分の赤青。


 どっちが上かなんて――正確には分からない。


 そして。


 仇であるメギドレイは、もう街を離れていた。


 暗い海へ。


 一直線に。


「……逃がすかよ」


 殺意が()える。


 でも。


 分かっている。


 今のままじゃ足りない。


 何百万年にも及ぶ霊体の経験値の差。


 そんなもの、埋まるわけがない。


 なら。


 ――奪う。


「白く輝くその力……俺に寄越せ!!」


 共闘なんて、ありえない。


 俺は一人だ。


 ずっと。


 これからも。


 だから。


 奪う。


 それだけだ。


「灼焼煉火、壱式――旭光(きょっこう)!!」


 刃の向きを変える。


 元の街へ。


 街を囲む山へ。


 切っ先を伸ばす。


 一直線。


 山に到達。


「ぐっ……!」


 衝撃が返る。


 全身に痛みが走る。


 だが。


 止まらない。


 止める理由がない。


「その獲物は――俺のものだ!!」


 さらに伸ばす。


 山に突き刺したまま、刃を。


 光を。


 距離を無視して。


 一瞬で。


 体が追い越す。


 メギドレイを。


 そして。


 目の前に。


 ――白い星。


 でも。


 手が止まる。


「……誰だよ、お前」


 見たことがない。


 ありえない。


 この強さなら。


 知らないはずがない。


 霊滅士の誰かだと思ったが、違う。


 いや。


 それでもおかしい。


 こんなやつ、絶対に世に知れ渡っているはずだ。


「それなのに……」


 知らない。


 でも。


 魂がざわつく。


 安堵(あんど)なんてない。


 むしろ――


 嫌悪(けんお)


「……青い」


 瞳。


 どこまでも、青い。


 俺の炎と同じ色。


 大嫌いな色。


 赤じゃない。


 熱じゃない。


 ――歪んだあの世の色。


「……っ」


 思わず目を逸らす。


 でも。


 逃げるわけにはいかない。


 視線を戻す。


 その瞬間。


 ――いない。


「は?」


 消えた。


 流れ星の一瞬で。


「待てええええ!!」


 叫ぶ。


 全力で追う。


 旭光を再度伸ばす。


 だが。


 軌道が乱れる。


 心がブレてる。


 それでも。


 どうにか追いつく。


 その時。


 手が、伸びてきた。


 白い手。


 そして。


 光が消える。


「……!」


 反射で掴む。


 手首を。


 絶対に逃がさない。


 だが。


 ――その瞬間。


「っ……!!」


 熱い。


 異常な熱。


 触れた瞬間、焼けるみたいな感覚。


 声が出ない。


 思考が飛ぶ。


 振り払えない。


 向こうも掴んでくる。


 両手で。


 逃がさないみたいに。


 ――おかしい。


 火傷はしていない。


 なのに。


 熱だけが、暴れている。


「……」


 思考が消える。


 確信したくなかった。


 灼熱の魂は誰かなんて。


 それなのに。


「あなたの手、冷たいのね」


 声。


 あざ笑う声ではなかった。


 静かで。


 柔らかい。


 でも。


 どこかズレている。


 笑っている。


 子供みたいに。


 でも。


 熱い。


 霊体の温度が明らかに俺より上だった。


 だから。


 俺は、即座に結論を出した。


 ――嫌いだ。


 こいつは。


 理屈じゃない。


 魂が拒否している。


 だから、奪っていい。


 そう、結論付けた。


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