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灼熱の魂  作者: ねこと
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第3話

「さぁ――殺してやる!!」


 宣言と同時に、刀から炎が()き上がる。


 ごう、と。


 だが、その光は弱い。


 世界を青白く染めているあの化け物と比べれば、まるで風前の灯。


 ――それでも。


 私は、笑った。


 口元を吊り上げる。


 手をまっすぐ伸ばす。


「霊界より(あふ)()つる力よ!」


 白い穴。


 あの向こう。


 誰も見たことのない力。


 本来なら、触れられない領域。


 霊獣か、最高位の霊滅士(れいめつし)だけが扱えるもの。


 ――でも。


 私は違う。


 人間じゃない。


 霊獣でもない。


 その“間”にいる。


 だから、分かる。


 あの力が。


 凍えるほどに、濃く、近く。


 感じられる。


「来い」


 手を握る。


 掴むように。


 潰すように。


「我が魂に宿(やど)れ――ソウルブースト!!」


 叫んだ瞬間。


 炎が、()ぜた。


 ごうごう、ごうごう。


 光が、世界を塗り替える。


 赤と青が混ざり合い、空を駆ける。


 街を照らす。


 海を照らす。


 雪を照らす。


 すべてに色が戻る。


 まるで――太陽だ。


「あの時の(つぐな)いを……今こそ!!」


 一歩踏み出す。


 足場はない。


 虚空(こくう)


 それでも、落ちない。


 ガラスに足をつける。


 そのまま、走る。


 真下へ。


 逆さに。


 支柱へ。


 さらに下へ。


 止まらない。


 私は霊体だ。


 壁も。


 空気も。


 全部、関係ない。


 加速する。


 ひたすらに。


 千メートルの高さなんて、一瞬で消える。


 青い海に到達。


 直角に曲がる。


 さらに速く。


 走る。


 走る。


 走る。


「霊界最強を倒せる者は――必ずいる!!」


 闇を切り裂く。


 光で塗り潰す。


 私の刀は。


 街の中心から、山の麓まで。


 一直線に伸びていた。


 夜を昼に変えるほどの光。


「私こそが――!」


 跳ぶ。


 山の手前。


 切っ先が、空を向く。


 そして。


「……いや」


 言葉が、変わる。


 自然に。


 当たり前みたいに。


「俺こそが!!」


 風が鳴る。


 紅い髪が揺れる。


 体が軽い。


 意識が、切り替わる。


 山を越える。


 視界が開ける。


 隣街。


 暗い。


 でも、明るい。


 あの化け物が、照らしている。


 青白い巨体。


 黄金の瞳。


 魂を喰らう視線。


 ――メギドレイ。


 誰も倒せない“最強”。


 だが。


 例外がある。


 ただ一つ。


灼熱(しゃくねつ)(たましい)!!」


 熱は力だ。


 霊体は冷たい。


 でも幽体離脱した人間は、少しだけ温かい。


 なら。


 もっと熱くなれば。


 届くかもしれない。


「俺こそが――灼熱の魂だ!!」


 刀を振り上げる。


 光が、爆ぜる。


 空を突き抜ける。


 雲を焼く。


 世界を照らす。


 メギドレイが、顔を上げる。


 黄金の瞳が、こちらを見る。


 ――そのはずだった。


 だが。


 視線は、すぐに逸れた。


 まるで。


 どうでもいいものを見るみたいに。


「……は?」


 一瞬、理解が止まる。


 そして。


 怒りが、爆発する。


「ふざけやがって!!」


 五年越しの復讐だ。


 見ろ。


 向き合え。


 逃げるな。


 でも奴は。


 興味すら示さない。


 地面に跳び。


 何かにじゃれつくみたいに動く。


 ――舐めている。


 完全に。


「殺してやる!!」


 刀を握る。


 両手で。


 殺意を込めて。


 体が反転する。


 空から地へ。


 一直線。


 加速。


 限界まで息を吸う。


 そして――


灼焼煉火(しゃくやくれんが)弐式(にしき)――日輪(にちりん)!!」


 振り下ろす。


 その瞬間。


 世界は、光に包まれた。


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