12本目
さる事件を通じて探偵多々木は佐須刑事と出会い、そして占い師と出会った。
その事件において多々木が刑事に披露した快刀乱麻のごたる名推理は、じつは占い師吉田の手柄だったのである。
密室とかマジで創るのも暴くのもムリだから! それをやってのけるには超常的な力が必要になってくる。
つまり彼女にはその力があるということだ。
めんそーれ吉田の存在およびその力は、佐須刑事には内緒ってことで。べつに探偵が手柄を横獲りしようと思ったわけじゃない。あくまで占い師の意向である。
強い不思議な力は公にしてはならない、というのが彼女の考えだった。
毎回アテにされても困るし、ぜんぶに対応できるとはかぎらない。ゆうたら正義のヒーローとおなじだ。あらわれるところにしか、あらわれない。
てことは、だ。いまがそのときなんじゃね? と多々木は思った。
それにしてもこの占い師、歳はいくつなんだろう。60代くらいにも見えるし50代にも見える。
スタイルがよく背筋もピンとしているので、顔を隠せばあるいは、このなかで50歳は誰でしょう in 20代水着女子キャンペーンに出られるかもしれない。
「何をくだらぬことを考えておる」
「あ、ちょっとヤメて、他人のアタマのなかを覗くのは……」
「ことは急いておる。青木という青年のことじゃ」
「……よく、ごぞんじですね。まあ、あなたにはお見通しか」
「青木を生き返らせる」
「ウソでしょ。生き返らないでしょ、死んだ人間は」
「まあそうじゃが、つまり、彼が死なない世界線におぬしが辿り着けばよい」
「あ、それボクの好きなやつ!」
数時間ぶりに探偵の瞳に輝きが戻った。こうなったらもう、やるしかない。
「テッテレーッ♪ マッチでーす」
そう言って占い師は小箱を差し出した。嫌煙の流れから、いまではめずらしいマッチ入りの小箱だ。
「旧っ。あいかわらず時代が八十年代で止まってますね」
「やかましい。ワシがただのマッチを出すと思うたか」
「はいはい、きっとすごいマッチなんでしょうね」
「すごいマッチじゃなくて、マッチでーす、じゃ」
「いいかげんにしろっ」
そして多々木は占い師を連れて事務所へ戻った。秘密の儀式を行なうために。
「おかえりなさい、所長。……あ、おばあちゃん!」
占い師のすがたを認めた若林芽衣がテンション高く叫んだ。
「ワシはおばあちゃんではない。これでも、このなかで50歳は誰でしょう in 20代水着女子に出られ……」
「はいはいはい」と探偵が遮った。「若林くん、すまんが今日はもう」
「えーっ! せっかく、おばあちゃんに会えたのに」
「だからワシはおばあ……」
後ろ髪をひかれるかたちで帰宅を余儀なくされた芽衣を尻目に、多々木は本題に入った。
「つまり、このマッチを擦ると炎とともに強力な磁場が発生し、メールを過去へ送れるというわけですね」
「左様。これが青木のメアドじゃ」
言って占い師はメモを渡した。
「その情報、どこで手に入れたんです?」
「組織からじゃ」
またそれか……しかし組織に目を付けられるとは青木、なかなかの人物なのかもしれない。とりあえず占い師の言葉に従うより、ほかにない。
「いちどに送れる文字数は130文字が限度じゃ」
「少なっ!」
「うるさい。その制限文字数内でこちらの状況を青木に説明し、彼の特定行動を阻止しなくてはならん」
「特定行動?」
「いわば撃鉄じゃ。その行動を青木が取ると、いまべつの世界線にいる彼がこちらに戻り、結果、死の運命が待っている」




