71話
クサリヘビ盗賊団の頭領『カバージョ』は、爪を噛んだ。
今夜もまた月が雲に飲まれている。遠く離れた銃声を聞きながらカバージョはアジトで部下からの結果報告を待っていた。さすがに負けるはずがないと確信していても心が落ち着かなかった。
商人に運ばせている荷を奪われること四度。しかも前回の襲撃では八人もの死傷者を出した。一体誰がこんな真似をしているのか。考えたところで、自分たちを恨んでいる人間など腐るほどいる。
街では『黄金の鷲』という冒険者チームが討伐に乗り出したと噂になっているようだが、それは偽情報に違いなかった。物資を奪うなどという攻め方は、貴族の坊ちゃんたちが好むやり方ではない。
いや、今となっては相手が誰であろうとどうでもよかった。食い物も酒もほとんど尽き、手下が皆苛立っているのが目に見えて分かる。
元々、盗賊をやる奴らなど頭のおかしい奴らの集まりなのだ。腹が減った状態では、いつ何をしでかすか分かったものではない。今はとにかく物資を手に入れることが最優先だった。
だからこそ今回は、アジトに必要最低限の人数だけを残し、残りは全員荷馬車の回収に向かわせた。その数、総勢二十四人。これだけの人数を動かせば、いくら何でも失敗しようがないはずだ。
もし襲撃犯を生きて連れて帰ってくることができれば、とことん拷問して素性を吐かせてやる。この報いは絶対に受けさせてやる。
「ジジ……ジジジ……」
その時、脳内で異音が鳴り響いた。
「頭領! 敵を撃ちました! 俺の撃った弾で相手に傷を負わせました!!」
雑音混じりの途切れ途切れの声で報告が入る。
特殊スキル『蚯蚓の通信兵』。
カバージョの持つそのスキルは、魔力で生み出した蚯蚓を他人の体内に潜ませることで、それを媒介にして離れた場所にいる者と通信を交わすことができる能力だった。
「ちっ……」
思わず舌打ちが出た。通信をする際は『まず名前を名乗れ』と口酸っぱく言ってきたにもかかわらず、またしても忘れられたからだ。
しかし、その苦々しい思いとは裏腹に、カバージョの表情は知らず知らずのうちにニヤついていた。
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