66話
ランプの光を頼りに、大きな荷物を引きながら馬車が街道を進んでいく。盗賊サバビーは、馬車から数メートル離れた位置を、剣を携えて歩いていた。
商人から届くはずの荷物が襲われたのは、昨日までで三度。痺れを切らしたクサリヘビ盗賊団は、ついに自らの手で荷を守るため八人の人員を派遣したのだ。商人の私兵と合わせれば十二人の大所帯である。
今やこの国でも名が知れ渡るようになった自分たちの荷を襲うとは、一体誰の仕業なのだろうか。辺りを見回してみても、何者の気配も感じられない。
街では『黄金の鷲』という冒険者チームが討伐に乗り出したと噂になっているらしい。だが、頭領は「どうせ偽情報だろう」と決めつけていた。
『黄金の鷲』は貴族の次男や三男で構成されたチームで、メンバー全員が幼少期から鍛え上げられた一流の剣士であり、一流の魔法使いでもあるという。
頭領が彼らの犯行を否定する理由はただ一つ――「戦い方がせこいから」だ。名誉を誇りとする貴族様が、盗賊から荷を奪って飢え死にさせるような真似をするはずがないというのだ。
確かに言われてみればそんな気もするが、サバビーは噂でしか知らないためよく分からない。ただ、ある程度生きていれば、貴族の「名誉」や「正々堂々」など嘘っぱちだと誰でも知っている。どんな汚い手を使ってきてもおかしくはないはずだ。
だが、下っ端の自分がそんな口を挟んだところで怒鳴られるのがオチなので、何も言わないでおいた。サバビーはただ、指示通り荷馬車を守り、アジトへ送り届けることだけを考えればいい。
荷を奪われたことで水も食料も尽きかけ、頭領をはじめ皆の気が立っている。今回ばかりは失敗など許されなかった。
月は相変わらず雲に隠れ、周囲の様子は何も見えない。だが、それは敵にとっても同じはずだ。この暗闇では、魔銃による奇襲攻撃を命中させることなど不可能に近い。だからこそ、サバビーは「流石に今日ばかりは敵も現れないだろう」と考えていた。
銃声の数からして、敵はせいぜい二人か三人。連日失敗しているこちらが警戒を強め、増員することくらい容易に想像がつくはずだ。引き際だと考えて手を引いても不思議はない。
その時、乾いた銃声が無月の闇を激しく破裂させた。
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