62話
「タピオカ味のさつま揚げっ!?」
「………ちょ、ちょっと勘弁してくださいよアーサーさん、また変な夢でも見たんすか?」
真っ暗な王都の宿屋で目を覚ましたレッドシューズが、隣のベッドから迷惑そうな顔で問いかけた。緑田には変な寝言を結構な声量で口走る悪癖があり、彼はこれまで何度もそれに悩まされていたのだ。
「蝶から合図がきた……盗賊団に動きがあったらしい」
「すぐに向かいましょう!」
二人は馬に飛び乗り、闇夜の荒野を抜けて盗賊団のアジトへと向かった。
「火が焚かれてますね」
レッドシューズの言う通り、アジトへと続く道沿いに点々と火が灯っている。それは明らかに人為的に配置されたものだった。
「アジトの周囲を照らしているみたいだな……」
「一体どうしてなんですかね。もう少し近づいてみましょうか」
「危険はないか?」
「問題ないと思います。監視がいるのは確かですが、こちらから見えない以上、向こうからも見えないはずです」
「分かった。慎重に行こう」
高鳴る鼓動を抑えながら、一番近い火に向かって歩を進める。
「これは……」
二人の視線の先あったのは、三脚の上に数本の薪が組まれた『篝火台』だった。
「道を照らしているようだな」
「そうですね。ということは、近々誰かがここを通るか、あるいはもう通り過ぎたか……。蝶の視点で何か見えませんでしたか?」
「ここを何かが通ったのは分かったが、暗すぎて正体までは分からなかった。ただ、人間ではなくもっと大きな何かだ」
「大きなもの……?」
「とりあえず、この近くで待ち伏せしてみないか? 火が焚かれたままということは、またここを通る可能性がある」
「なるほど、確かにそうですね。俺が見張ってますから、アーサーさんは寝ていてください」
「いや、監視は交代でやろう」
「……分かりました。それなら最初はアーサーさんが寝てください。俺が見張ってますから」
「わかった」
身を隠せる場所に移動し、静かな深夜の張り込みが始まった。
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