↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/73

61話

 


 夕暮れに染まる王都を抜け、二人の男が乗る馬が土煙を上げて荒野を走る。緑田とレッドシューズだ。


 クサリヘビ盗賊団の討伐を決めた二人がまず行ったのは、情報収集だった。向かった先は商人の集う商人ギルドだ。盗賊と商人は切っても切り離せない関係であり、必ず情報共有をしているはずと考えたからである。


 その推測は見事に的中した。


 盗賊団は王都と他の街を行き来する商人を襲い金品を奪っており、敵アジトの場所や大まかな人数を把握していた。二人がこの場にやってきたのは、その情報が正しいをか確かめるためだ。


「ああ、いますね……あそこです。あの高台に二人ほど確認できます」


「近づきすぎないよう注意しないとな」


 黒いフードを深くかぶった緑田が、やや緊張した声で言った。


「はい。ですが、まだ大丈夫でしょう。魔銃の実用射程は20から50メートルほどですから、この距離なら十分に余裕があります」


「あの岩山がアジトか……さすがにここからだと、中の様子までは見えないな」


「商人たちの情報では、敵の総数は四十から五十人。もし怪しいと思われれば監視から銅鑼(どら)が鳴らされ、本陣から大勢の敵が押し寄せてくるはずです」


「それだとさすがに厳しいな」


「……悔しいですが、その通りですね」


「できれば、もう少し中の情報が欲しいところだな」


「もっと近づいてみますか?」


 レッドシューズの問いかけに、緑田は首を左右に振った。


「いや、それよりもっと確実な方法がある」


「といいますと……?」


 緑田はすぐには答えず、腰の鞘から無造作にナイフを引き抜いた。


「見てろよ」


 不敵な笑みを浮かべると、ナイフの刃で自らの指先を斬った。


「なにを……!?」


 驚くレッドシューズの目の前で、赤黒い血液が指先から零れ落ちる。


 だが、その雫は地面へと着地する直前、鮮やかな赤黒い一羽の蝶へと姿を変えた。


「友人が託してくれた力だ。特殊スキル『アイリーンズ・バタフライ』」


 滴り落ちる血は、次々と幻想的な蝶へと姿を変えていく。


「おお……っ」


 感嘆の声を漏らすレッドシューズの目の前で、生まれたばかりの蝶たちがひらひらと舞い上がり、緑田の頭上に留まった。


「この蝶の一羽一羽が、俺の目になってくれるのさ」


「どういうことですか?」


「蝶が見ている光景を、俺もリアルタイムで共有できる。離れた場所にいてもな」


「ということは……」


「そうだ。危険を侵して潜入しなくても、敵のアジトを安全かつ完璧に監視できるってことだ」


「なんと素晴らしい……」


「あとはこの子たちに任せよう。敵に感づかれることなく、必ず有力な情報をもたらしてくれるはずだ。さあ、頼んだぞ」


 緑田は確信に満ちた笑みを浮かべ、上空へ羽ばたく蝶たちを見送った。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。