61話
夕暮れに染まる王都を抜け、二人の男が乗る馬が土煙を上げて荒野を走る。緑田とレッドシューズだ。
クサリヘビ盗賊団の討伐を決めた二人がまず行ったのは、情報収集だった。向かった先は商人の集う商人ギルドだ。盗賊と商人は切っても切り離せない関係であり、必ず情報共有をしているはずと考えたからである。
その推測は見事に的中した。
盗賊団は王都と他の街を行き来する商人を襲い金品を奪っており、敵アジトの場所や大まかな人数を把握していた。二人がこの場にやってきたのは、その情報が正しいをか確かめるためだ。
「ああ、いますね……あそこです。あの高台に二人ほど確認できます」
「近づきすぎないよう注意しないとな」
黒いフードを深くかぶった緑田が、やや緊張した声で言った。
「はい。ですが、まだ大丈夫でしょう。魔銃の実用射程は20から50メートルほどですから、この距離なら十分に余裕があります」
「あの岩山がアジトか……さすがにここからだと、中の様子までは見えないな」
「商人たちの情報では、敵の総数は四十から五十人。もし怪しいと思われれば監視から銅鑼が鳴らされ、本陣から大勢の敵が押し寄せてくるはずです」
「それだとさすがに厳しいな」
「……悔しいですが、その通りですね」
「できれば、もう少し中の情報が欲しいところだな」
「もっと近づいてみますか?」
レッドシューズの問いかけに、緑田は首を左右に振った。
「いや、それよりもっと確実な方法がある」
「といいますと……?」
緑田はすぐには答えず、腰の鞘から無造作にナイフを引き抜いた。
「見てろよ」
不敵な笑みを浮かべると、ナイフの刃で自らの指先を斬った。
「なにを……!?」
驚くレッドシューズの目の前で、赤黒い血液が指先から零れ落ちる。
だが、その雫は地面へと着地する直前、鮮やかな赤黒い一羽の蝶へと姿を変えた。
「友人が託してくれた力だ。特殊スキル『アイリーンズ・バタフライ』」
滴り落ちる血は、次々と幻想的な蝶へと姿を変えていく。
「おお……っ」
感嘆の声を漏らすレッドシューズの目の前で、生まれたばかりの蝶たちがひらひらと舞い上がり、緑田の頭上に留まった。
「この蝶の一羽一羽が、俺の目になってくれるのさ」
「どういうことですか?」
「蝶が見ている光景を、俺もリアルタイムで共有できる。離れた場所にいてもな」
「ということは……」
「そうだ。危険を侵して潜入しなくても、敵のアジトを安全かつ完璧に監視できるってことだ」
「なんと素晴らしい……」
「あとはこの子たちに任せよう。敵に感づかれることなく、必ず有力な情報をもたらしてくれるはずだ。さあ、頼んだぞ」
緑田は確信に満ちた笑みを浮かべ、上空へ羽ばたく蝶たちを見送った。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。
評価を頂ければさらに喜びます。
☆5なら踊ります。




