60話
苦痛に顔をゆがめながら、苦い過去を語り終えたレッドシューズ。何を言うべきか、迷う必要すらなかった。自然と緑田の口から言葉が零れ落ちる。
「……教えてくれてありがとう。その上で聞かせてくれ。レッドシューズ、お前はこれからも俺のために働いてくれる気があるか?」
緑田はこの男を深く信頼していた。
純粋な戦闘能力だけを見れば、他の奴隷たちと比べて格別秀でているわけではない。だが、彼が持つリーダーシップは何物にも代えがたい。時には真剣に仲間を引っ張り、時には冗談を交えて場を和ませる。自分が目立つことよりも、常にチーム全体のことを考えて行動しているのがよく分かった。
奴隷の主人でありながら、人を束ねることにまだ慣れていない緑田にとって、彼の持つ求心力は必要不可欠であると同時に羨ましくもある。
だが——もしレッドシューズが己の個人的な情動を優先し、チームや自分との契約を疎かにするというのなら、切らざるを得ない。
「どうなんだ?」
緑田の問いかけに、レッドシューズはふっと口元を緩めて笑った。
「そんなの、決まってるじゃないですか。これからもよろしくお願いしますよ、アーサーさん。俺はこれからもあんたの元で働きたいと思ってます」
彼はまっすぐ緑田の目を見つめ返した。
「そりゃ、クサリヘビの奴らのことは今でも頭から離れませんよ。だけど、ここまで良くしてくれているアーサーさんを裏切るなんて真似、できるわけがない。……それに、あいつらは俺一人でどうこうできる相手じゃないんです。ガキの頃みたいに感情任せに突っ込んで、また無様にやられるのは……もう真っ平御免ですからね」
「そうか……」
緑田は満足そうに口元を綻ばせた。
「それなら、二人で考えるとしようか」
「……何を、ですか?」
「その『クサリヘビ』とかいう盗賊団を壊滅させる方法だよ」
肉団子スープをすすっていたレッドシューズが、思いがけない言葉に激しくむせ返った。
「い、いや! でも、そんなことをしてもらうわけには……!」
「盗賊なんて社会の害悪だからな。潰せるなら潰しておいた方がいい。簡単だろ?レッドシューズの特殊スキルを使えばな」
「え……? なんで……なんで俺が特殊スキルを持ってることを知ってるんですか? 俺、一言も言ってませんよね……!?」
目を丸くして驚愕するレッドシューズに、緑田はフッと不敵な笑みを浮かべた。
「分かるさ。俺が持ってるのはそういう特殊スキルだからな」
レッドシューズは驚きのあまり、声を出すこともできなかった。
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