59話
「俺はそこそこデカい地方の街で生まれました。親父は歯車を作る工場の工場長で家では無口で晩酌とボクシングが生き甲斐みたいな男でした。お袋は口うるさいけど根は善人で世話焼き。そんな家庭で育ったんです。
子供の頃からやんちゃで、近所のガキ共を集めてチャンバラごっこばかりしてました。将来は絶対に冒険者になるんだって、本気で思ってたんですよ。
そんな時、夏の祭りでガラの悪い奴らに絡まれている同い年くらいのガキを助けたんです。そいつの名前はロビン。それがきっかけで、俺とロビンは親友になりました。
家が隣町同士だったんで会えるのは月に一度くらいでしたが、会った時はお互いの夢やくだらない話を何時間も語り合って……そんな交流がずっと続いてたんです。
だけどある日、約束の場所でいくら待ってもロビンが来ませんでした。今まで一度も遅刻なんてしたことがなかったから、最初は『俺と会うのが面倒になったのかな』なんて思ってたんです。
でも……後になって知りました。家族旅行に行っていたロビンが、盗賊団に攫われたってことを。
『クサリヘビ盗賊団』——人を攫って売り飛ばすことで有名な、凶悪な連中です。
俺がその事実を知った時には、事件からかなりの時間が経っていました。それなのに犯人は一向に捕まらず、痺れを切らして警察に聞きに行っても、まともに取り合ってくれず門前払いでした。
頭に血が上った俺は、ガキの頃の仲間に『ロビンを助けに行こう』って声をかけました。でも、全員に断られて……結局、俺一人で行くことにしたんです。
その頃には体もデカくなってたし、大人相手でも勝てると思い込んでたんですね。
だけど……甘かった。
乗り込んだ俺はあっという間に袋叩きにされて、何もできませんでした。意識が遠のく中で耳にこびりついたあいつらの嘲笑は、今でも夢に出ます。
気がついた時には、俺は奴隷として売られていました。殺すよりも売り飛ばした方が金になると思ったんでしょう。
それから色々あって俺も自分が生きるのに一生懸命で……。そんな中でアーサーさんに出会って、今は仕事も順調で仲間にも恵まれています。だから正直、ロビンのことすら忘れかけていたんです。
なのに先日、飲み屋でふと『クサリヘビ』の名前が聞こえてきて……それ以来、頭から離れなくなっちまったんです。
ロビンは生きているのか。今、どこで何をしているのか。
……いや、もしかしたらとっくに死んでるのかもしれない。別に今更会いたいとか、感動の再会がしたいわけじゃないんです。ただ、どうなったのかだけでも確かめたい……。
それで昨日、最近クサリヘビと一戦交えたっていう冒険者がいるのを聞きつけて、話を聞きに行きました。だけど相手は喋りたがらず、しつこく食い下がったら向こうが激高してきて……そのまま喧嘩になっちまったんです」
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