58話
いつになく真剣な表情でレッドシューズは語り出す。
「自分が奴隷の身分だってことは重々分かってます。主人であるアーサーさんに迷惑をかけるわけにはいかない。俺の人生は、もう俺だけの物じゃないんですから……。でも、どうしても頭から離れなくて。昨日は敵の情報を探るために調査をしてたんです。いてもたってもいられなくなって……本当にすみません」
しばらくの沈黙の間に小鳥のさえずりが聞こえる。
「……身分違いの恋じゃなかったのか?」
「え? 何ですかそれ?」
ポカンとするレッドシューズに、緑田はゲッシから聞いた噂話を説明した。最近飲みにも行かず部屋でブツブツ独り言を言っていること、そんな風に悩むのは『恋の病』以外あり得ないと同僚たちが騒いでいること。
「ゲッシの言うことなんて信じちゃ駄目ですよ! あいつは金と女のことしか頭にない法螺吹き野郎なんですから!」
「けど、老婆の手を握って街を歩くお前の姿を見たって言ってたぞ。だからてっきり、平民のお婆さんと許されない恋に落ちたんだとばかり思ってたんだが」
「はぁああああああああああ!? あの野郎、適当なこと言いふらしやがって! 今度会ったらタダじゃおきねえ……誰が老婆好きだ!!」
「なんだ、ただの勘違いだったのか。確かにちょっとおかしいなとは、俺も思ってたんだよ」
「あ……思い出しました。確かに街でお婆さんの手を握って歩いてたことはあります。でもそれ、娘さんとの待ち合わせ場所へ向かう途中で杖が折れて困ってたお婆さんを、案内して助けてやった時ですよ! ゲッシの野郎、見てたなら声ぐらいかけろってんだ、くそっ……!」
舌打ちをするレッドシューズはいつもの彼で、緑田は少しだけ嬉しくなった。
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