57話
明け方近くに叩き起こされた緑田は最寄りの警察署へ向かい、署内留置所と呼ばれる場所へレッドシューズを迎えに行った。
レッドシューズは奴隷のため、主人が直接迎えに行くのがルールになっているのだ。
警察官の説明によれば、拘束された理由は街中での喧嘩だという。頭を下げて罰金を支払うと、無事に解放されたレッドシューズが顔に青あざをつくって出てきた。伏し目がちで、あからさまに気まずそうな顔をしている。
これまでにも給料の前借りをしたり、酒臭いまま魔物狩りにやって来たりと目につく部分はあった。しかし仕事には真面目に取り組んでおり、他の奴隷たちからの信望も厚かった男だ。そんな彼が警察沙汰になるほどの事件を起こすとは、やはりゲッシの言うように「恋の病」のせいなのだろうかと緑田は思った。
「迷惑かけてすいません……」
いつもとは違う覇気のない声でボソリと呟くレッドシューズと共に、緑田は警察署を後にした。
◇
「よいしょっと……」
朝の湿った空気が心地よい公園に風が吹き、木の葉から朝露がひとつぽたりと落ちた。
緑田は近くの露店で買ったホットドッグを、レッドシューズは温かい肉団子スープを手に、ベンチへ並んで座ると無言で食べ始めた。
さて、なんと声をかけるべきだろうか。
レッドシューズは自分の奴隷だ。だが、年上の男であり、血のつながった家族というわけでもない。
隣から漂ってくる肉団子スープの匂いを嗅いでいると、かつて関わったマイクやエマ、ジェームズたちの顔がふと頭をよぎる。
感情に任せて人を殺めたこともある自分が、街で喧嘩をして警察の厄介になった程度の相手を責めるなど、お門違いもいいところだということは分かっている。
けれど、主人として——いや、仲間として、何か言葉をかけなければいけないような気がしていた。
「殺したい奴らがいるんですよ」
唐突に切り出されたレッドシューズの言葉に、緑田は思わず耳を疑った。
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