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56話

 




 ごくたまに、「あ、いま夢を見ているな」と自覚できる瞬間がある。


 高校生の頃の俺は、リサイクルショップの百円コーナーで面白そうな本を買い、近くの公園のベンチで読むのにハマっていた。


 そんな時に一人の少女と出会った。


 ジャージ姿の彼女は、暇を持て余したような顔でベンチに座っていた。話すきっかけは、本を買った時のレシートが風に煽られ、彼女の座るベンチまで飛んでいってしまったことだ。


 それをきっかけに、俺たちは付き合うことになった——なんて甘い展開は一切なかった。


 彼女の実家が剣術道場だと知った俺は、見学させてほしいと頼み込んだ。ちょうど宮本武蔵の本を読み終えたばかりで、剣術に強い興味があったからだ。


 だが、そこからが最悪だった。


 道場の稽古は想像以上に本格的で、命がけで木刀を打ち合う男たちの姿に完全に引いてしまった。引き揚げるタイミングを逃し、正座したまま見学していると、彼女の兄が道場に入ってきて——。


「ドンドンドン!!」


 強烈なノックの音に飛び起き、体がビクッと跳ねた。状況が呑み込めない状態で、さらに切迫した叫び声が飛び込んでくる。


「アーサーさん! 大変です、起きてください!!」


 そうだ、俺はアーサーだった。こんな夜中に一体誰だ。この声には聞き覚えがある。


「レッドシューズさんが警察に捕まっちゃいました! お願いです、助けに行ってあげてください!!」





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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