51話
「やーー!!」
「はーー!!」
茂みから飛び出した男たちが、背中を見せていたゴブリンの群れへ一斉に襲いかかり、次々と打ち倒していく。
すべてのゴブリンが倒れたのを見届けると、緑田が姿を現した。労いの言葉をひとことかけ、右手に持ったコンパスへ視線を落とす。
「南南西、中距離、青色複数」
男たちは緑田の指示に従い、短く言葉を交わすと、そちらの方角へ向かって歩き出した。
特殊スキル『開示』。差し込む日差しを遮るほど深い「ハミツの森」の、どこにどんな魔物が潜んでいるかを正確に教えてくれる。
これは魔物狩りにおいて極めて有効だった。不意打ちを受ける心配がなく、手に負えない強い魔物を事前に避けることもできるからだ。
手に持ったコンパスは、このスキルを悟られないための偽装にすぎない。奴隷たちには「魔物の位置を探知できる魔道具だ」と説明してあった。最初は半信半疑だった者たちも、その驚異的な精度を体験すると一様に驚愕の表情を浮かべる。ちょうど今のバウトが、まさにその顔をしていた。
この瞬間の反応を見るのが、緑田にとっては密かな楽しみでもあった。
「青ってことは最高でもEランクだから、大したことはないな。中距離ってことは徒歩で三十分くらいか。向こうがこっちに向かってくれば別だけど……」
レッドシューズは独り言のように緑田の言葉を噛み砕き、他の奴隷たちに共有した。
緑田が彼を信頼している理由の一つは、こうした点にある。
押しつけがましくないやり方で新人たちにチームのルールを浸透させ、無用な人間関係の摩擦を起こさないよう配慮してくれるのだ。
初参加のバウトは緑田のやり方を知らない。しかし年齢で言えば緑田やレッドシューズよりも年上だ。いきなり上から目線で指示をされれば、面白くない思いをするのは目に見えている。
「誰も怪我や疲れはなさそうですし、とりあえずこのまま向かいますよ?」
レッドシューズは緑田に視線を送り、最終的な判断を仰いできた。私生活こそいい加減だが、現場ではこれ以上ないほど配慮の行き届いた男だった。
緑田が静かに頷くと、一行は南南西へ向かって再び歩き出した。
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