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43話

 



 王都から伸びる街道を、一台の幌馬車が慌ただしく進んでいく。


「ねえ、タクロウ。もっとスピードは出せないのかい?」


 幌馬車の中からいら立ちを隠せない声を張り上げているのは、もじゃもじゃ頭の中年女性——ミナエその人だった。


「無茶言わないでくれよ。これだけの荷物を積んでるんだ、馬だってそう簡単に早くは走れないって」


「それは分かってるけどさ! でも、あまりモタモタしてたらすぐに追いつかれちまうよ」


「大丈夫だって。こっちはあえて一般の奴らは使わない裏街道を選んでるんだからさ。そう簡単に見つかりっこないって」


 御者台で手綱を握る、大柄な体格のもじゃもじゃ頭の男——タクロウがヘラヘラと笑いながら返す。


「それならいいんだけど……」


「それにさ、もし万が一追いつかれたって、俺が返り討ちにしてやるよ。こういう時のために母さんが仕入れてくれた『魔銃』の腕を磨いてきたんだからさ。むしろ追いついてきてほしいくらいだね。ようやく、本当の人間を撃てるんだから」


「何バカなこと言ってるんだい、追いつかれないに越したことないだろ!」


「うひょー! 二千万ゴールドだぜ? スリル満点で興奮するよな! それにしても、母さんにしてはこの思い切った大博打は意外だったけどさ」


「このままダラダラと細々と商売を続けても将来なんて知れてるからね。人生の一発逆転をかけるなら、今しかないと思ったのさ」


「いいじゃん、俺は母さんのそういうとこ嫌いじゃないぜ……」


 母子の軽口が交わされたその時だった。


「——止まれぇええ!!!」


 後方から猛烈なスピードで追いすがってきた騎馬の上から、鋭い怒号が叩きつけられた。


「……来たか!」


 タクロウは不敵な笑みを浮かべると、御者台の脇に立てかけてあった魔銃へとその手を伸ばした。







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