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俺は、キミに好きとは言わない。 私は、彼に好きとは言いっちゃいけない。「好き」の二文字は伝えない  作者: ぺんぎんは泳げない。


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6話


 鮮やかな緑が広がり出した五月。ゴールデンウイークに入り、琴葉と朝倉、蒼太と俺の四人は朝倉の別荘に来ていた。朝倉の家はちょっとしたお金持ちで、仲良くなった中学の頃から長期休みの時は四人で色々な所に遊びに行っている。そして今年は朝倉の別荘ってわけだ。



 辺りは自然豊かで空気が澄んでいて大きく深呼吸をしたくなる場所。建物は木造の平屋に広めのデッキがあり、大きな窓が並んでいて開放感がとっても気持ちのいい別荘だ。


「お父さん運転ありがとう」


「「「ありがとうございました」」」


「ん、どういたしまして。栞、明日の昼前には迎えに来るから楽しんで。それと湊君に蒼太君、娘と琴葉さんのこと、よろしくお願いしますね」


「「は、はい。もちろんです!」」


 鋭かった細い目が少しキラッと見開いて、普段あらわにしない眼光で俺たち二人を睨みつけた。圧がとんでもなく強い、そんなことしなくても何かする度胸はありませんのでご心配なく…。やっぱり心配なのだろう、娘を見るときの目がとっても優しいから。


「二人ともー、荷物運ぶの手伝ってー」


「ああ、今行くよ」



「二人とも楽しみなさい」


 鋭かった目も最後にはとっても優しい微笑みと共に、笑っていた。


「「はい!楽しんできます!!」」


 しっかりと釘を刺されつつも、俺たちのゴールデンウイーク一泊二日が始まった。





 -----



「ん~~きもちい~」


 手を組んで大きく背伸びをして気持ちよさそうに琴葉が伸びをしている。服が思いっきり引っ張られ、おへそが少し見えそうになり目を逸らした。


「ん~、なあに見てたのかなあ?」


「別に、琴葉の近くにおっきな虫が飛んでたから」


「え!うそっ」


「嘘」


「……いや、嘘なのかよ!」


 普段、揶揄われてるんだしこれくらいの仕返しはいいよね。


「蒼太と湊、バーベキューの道具の準備と火起こしまで任せてもいいかしら?私とことちゃんはちょっと作るものがあるから」


「ん、おっけー。てか何作んの?」


「それは後のお楽しみだよ~」


「うわ、めっちゃ気になる」


 二人が何を作るのかとっても気になるが、俺たちはバーベキューの準備を始めた。


 本格的な高そうなバーベキューグリルを、別荘の倉庫から持ってきて流しで埃を洗い流す。後で聞いたが十万超えらしい。大きめの折り畳みテーブルを広げ、椅子を並べる。後は火起こしのための炭と着火剤を用意する。


「よし、後は火起こしだけだな。これ着火剤に火つけて炭に放り投げればいいのか?」


 俺はあまりアウトドアなことをしてきてないから蒼太に聞いてみる。


「んーまあそれでもいけないことはないが、もっと簡単につけられるぞ」


 やっぱ蒼太は詳しかったみたいで「貸してみ?」とかっこよくライターと着火剤を攫っていった。


「まずは着火剤を真ん中に置いて、周りに炭を並べる。そして着火剤に火をつけて、炭を山になるように盛っていく。これで炭に火が通ってきたら崩すだけよ。な、簡単だし早いだろ」


「流石、蒼太」


「まあな」


 くっ…。ちょっとかっこいいなこいつ。




「二人とも準備ありがとう、こっちも出来たわ」


「じゃ〜ん!お肉焼いてる間とかにと思って一口サイズのおつまみ作ってましたあ!!」


「「うわあ~おいしそう!」」


 テーブルに運ばれてきたのは色鮮やかな野菜、サーモンや生ハムにチーズを爪楊枝で串刺しにしたピンチョス。綺麗に飾り付けられたサラダ。おにぎりも作ってくれた。


「ねぇ、湊。これ味見してみて」


「ん、じゃあ遠慮なく」

 

 ピンチョスに手を伸ばすと、


「ストーーップ!そうじゃなくて、こっち。はい…あ~ん」


 琴葉が手を引っ張って来て止められたと思ったら、手にピンチョスを持ってこっちを、濡れた目をしながら上目遣いで差し出してきていた。


「あ、あ~んって…自分で食えるよ」


「むぅーー、おりゃっ」


「むぐっ...」


 頬を膨らませながら口に突っ込まれた。強引だな…。


「どう、おいしい?」


「ん、おいひいれす」


「よかった!」


 「おいしい」を聞き、顔をパァーっとしてかわいい笑顔で嬉しそうにしていた。


「イチャイチャしてないで、バーベキュー始めましょう」


「そうだぞー二人とも、見せつけやがって」


「してねーよ!」


「ま、どっちでもいいけど」


 それから各々コップに飲み物を注いで、「「「「乾杯!!」」」」とコップをぶつけ合って、バーベキューを思う存分に楽しんだ。四人でこうして遊べるのが本当に楽しくて仕方がない。一緒に笑いあったり、どうでもいい話をしたり、こういう時間を何よりも大切にしたいと強く思う。


 お腹がパンパンになりながらも残すことなくしっかりと全部を綺麗に食べ終えて、分担しながら片付けをして、腹休めに別荘の中で休憩することにした。




 夜は花火をする予定だ。まだ昼過ぎで夜まで何しようかとなった時、琴葉が「せっかく大きいテレビあるし、みんなで映画でも見てゆっくりしない?」と提案してきたのでそれに賛同して映画を見ることにした。別荘に来たとはいえ周りは自然ばっかりだしゆっくりするのもいいな。それから男子と女子で見たい映画を一本づつ決めてふかふかなソファでくつろいだ。


 映画の途中で琴葉が寝ちゃって、その寝顔を眺めてたのは内緒にしておこう。




 -----



 日が沈み空には満天の星空と白く輝く月がこちらを照らし、木々の中からは虫の音楽が俺たちの耳を癒していた。


 夜はまだ肌寒い。みんな上着を羽織って、花火をするためにデッキに出る。


「ちょっと寒いねー」


「上着もう一枚いる?琴葉」


「ん〜、だいじょぶ。ありがと、湊」


 バケツに水を汲んで花火を机にズラーッと並べたら準備完了。


「よっしゃ!それじゃあ花火開始だ!!」


「おお!!」


 元気いっぱいな蒼太と琴葉の合図で夏にはまだほど遠い、初夏の花火が始まった。


「蒼太と琴葉持ちすぎ」


 両手に五本の花火を鷲掴みにしている姿は小学生のそれにしか見えなくて笑ってしまう。二人は互いに見つめあい、手を確認し「こんなもんだろ」と普通のように言うから、俺と朝倉は面白おかしくて二人らしいと思って笑いあった。


「ことちゃん、こっち向いてっ」


「ん~、お!へへっ、じゃ~ん」


 朝倉のスマホが琴葉に向いていて、琴葉はそれに応えるように両手の花火を可愛く振ってニカッとしている。この年になっても、こんなに無邪気に笑って花火を楽しめるのは琴葉くらいなんじゃないだろうか。そんなことを、この笑顔を見ていると思ってしまう。


「なあ湊、見てくれ」


「ん?」


「ケツから花火」


 ここにもいたな。大きな小学生のイケメンが。


「はは、お前なぁ。……ぷっ…あはは」


 俺も俺だ。こんなんで笑っちまう。


 楽しい。


 花火には限りがある。それは人生も同じこと、でも今に限ってはそんなことまで考えずにこの時間を楽しもう。


 限りある時間の一時を、この大切な四人と共に。



「線香花火でラストだね」


「うん、あんなに買ったのにな」


「じゃあ、最後まで落とさなかった人から順にアイス選ぶのはどうかしら」


「お、いいね。じゃあせーのだな」


 四人で円を作って肩を寄せ合う。風に勝負が邪魔されないように。


「「「「せーの!」」」」





 俺からしたら勝負なんてどうでもよくて、ぼわぼわと火花を綺麗に咲かせる線香花火が、このまま永遠に枯れることなく咲き続ければいいと、輝く星々に願った。








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