2話
階段を上った先の1年生のフロアは、入学初日でまだまだグループも出来ておらず元から知り合いなのだろうグループがまだらにできている。みんな新品の制服に腕を通し、艶のあるローファーが輝いている。これぞまさに、新生活スタートって雰囲気だ。
みなこうは制服がかわいいと評判で、琴葉もみなこうを選んだ理由に制服がある。小さい頃から、みなこうの制服かわいい、絶対みなこう行くんだって言っていた。
「それにしても良かったよな、みなこう合格出来て。琴葉小っちゃい頃からみなこうの制服かわいい!絶対みなこうに行きたいって、よく言ってたもんな」
「ほんとだよ!湊と一緒に受験勉強頑張ったかいもあって、無事にみなこうのかわいいかわいい制服に腕を通すことが叶ったよ。湊先生、ありがとう!!」
「いえいえ、今度いつものカフェでパフェを奢っていただきましょうか琴葉くん」
「りょーかいしましたー」
さらりと琴葉にパフェを奢らせることを取り付けた俺は、ちょっと上機嫌になっていた。
すると、
「ちょっと湊、その言い草ですと私が含まれてないのでは?」
と、少しすねたような声が後ろからした。
「いたのかよ、おはよー朝倉」
「おはよー、しおちゃん!」
「おはよー、二人とも」
「湊、ことちゃんにまるで自分のおかげかのように言ってましたけど、私にわかんな~いって泣きついてきたのはお忘れで?」
「あ、あーそんなこともありましたねー朝倉さん」
「では、湊は私にパフェを奢らなければいけませんね」
ん、俺は琴葉にパフェを奢ってもらう、俺は朝倉にパフェを奢る。
これは…。
「おい、これじゃ琴葉に奢ってもらう意味ないじゃ~ん」
そんな俺を見て二人はケラケラと笑っている。
「お!三人とも揃ってるな」
と、元気な声が聞こえてきた。
「お~、おはよー蒼太」
「おはよー、蒼太くん」
「おはよー、はやいじゃない」
「まあな、今日から四人で同じ学校に通えるしな、今日くらいはってね」
俺と蒼太、朝倉は中学で出会って仲良くなった。せっかくだからと琴葉に紹介して以来、四人でよく遊ぶようになった。この四人でいる時間が、俺はとても心地いい。
「あれ、二人も教室こっちなの?」
「何言ってるんですか、湊」
「そうだぞ、湊」
「へっ?」
呆けた顔をしている俺を見て、笑いを堪えるようにして俯いてくすくすと肩を震わせていた。
「琴葉さん?知ってて黙ってたでしょ」
「あはは、湊のそのぽかんとした顔、ひひっ、、あはは」
相変わらず琴葉はこういうちょっとした悪戯をしては、俺の反応を楽しんでいる。こういうところは、本当にずるい…。
琴葉が笑顔になるなら、いいんだけどね。
「琴葉にしてやられたぁ~、じゃあ二人も同じクラスなのか!四人揃うなんて嬉しいな」
高校で四人が同じクラスだったことをみんなで喜びながら、他愛もない話をしながら教室へと歩いて行った。
初日から男女四人で楽しそうに教室に入ってきたからだろうか。教室中の視線が、一瞬こちらへ集まる。
制服が良く似合う琴葉は、どこへ行っても目を引く。朝倉は落ち着いた雰囲気でいて、母性のあるお姉さんタイプ。蒼太は昔から女子人気が高い。
俺は......まあ、普通だ。
みんなで自分の席を確認して席に着く。
俺は廊下側の一番後ろ。窓際じゃないのと、廊下側は他のクラスの人に声を掛けられやすいから、少し外れだと思ったが。
「あ、隣だねみなとっ!やったね!」
「ああ、そうだな」
隣が琴葉だと分かり、平静を装いながら返事をしたが、
心が少し踊った。
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「あの二人は相変わらずね」
「だな」
琴葉は相変わらず、すぐに友達を作る。隣や前、後ろ、それに斜めの席の子にも、分け隔てなく愛嬌ある無邪気な笑顔を向ける。その人懐っこさで、あっという間に相手の心を開いてしまう。
わかる。わかるぞみんな…。あの笑顔は反則だよな。
蒼太はというと…。中学同様、超がつくほどモテる。席に着くとすぐに、女子に囲まれていた。
羨ましくなんかないさ、そう羨ましいなんて思っていない…。
「ことちゃんの笑顔って、みんなを明るくするわよね。あの笑顔を見てると、心がぽかぽかしてくるの」
「うん、俺もそう思うよ。何度、琴葉の笑顔に救われたか、わからないな」
「…本当にいいの?」
「………何がだ、朝倉」
朝倉が言いたいことは分かってる。
でもこれは、あの時に決めたことだから。
「はぁ…、まあいいわ。あなたの気持ちは尊重するわよ」
「それよりも、あっちの鼻の下を伸ばして、デレデレしちゃってるの、どうにかしないとね」
「はは、、ありゃ浮かれてんな」
暫くして、教室の前の扉が開いた。
「みんなおはよー、担任の佐々木です。これから入学式があるから、廊下に出席番号順.....いや、来た順で二列で並んでー」
どこに行っても校長先生というのは決まって話が長いようで、何を言っていたか途中からさっぱり分からなくなって、うとうとしてしまったのは内緒だ。
それ以外は特に何事もなく、入学式は終わった。
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「蒼太、あなたもカフェ来るでしょ?」
「ん、なんだ、栞たちカフェ行くのか?」
「ええ、湊の奢りでね」
「え!マジかよ湊!サンキューな」
て、おいおいおい朝倉。なぜ俺がパフェ奢るみたいな流れ作ってるんだよ!?そんなに琴葉に奢らせるのがお気に召しませんでしたかね……。
「おい蒼太、朝倉の言ったこと信じるなよ。確かに朝倉には奢るが、蒼太奢るなんてことは一言も言ってないからな。蒼太は自腹だ」
「えぇ~湊、ここは親友に奢ってくれてもいいじゃんかよ~」
「いやだね、元はと言えば受験勉強手伝ったからってことで、琴葉に奢ってもらおうって話だったのに…」
本当にこれじゃあ、琴葉に奢ってもらう意味がないじゃないか…。
「お!蒼太くんもカフェ来れるんだ!てことはぁ~高校入ってから最初の四人で放課後カフェタイムだね!!」
四人で学校を出て、他愛もない話をしながら歩く。
着いた先は、朝待ち合わせしている交差点のカフェ。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは、叔父さん」
ここ『Cafe 日和』は俺の叔父さんが経営しているカフェだ。俺たちも昔からよく来ている。パフェがこの店の看板メニューだ。
「おう、湊か、それに三人も一緒か」
「「こんにちは」」
「こんにちは、空いてる席へどうぞ」
促されるままに空いている席へ座って、それぞれパフェと飲み物を注文した。
「それにしてもやっぱり、校長先生の話って長いのなあ。湊、うとうとしてたの俺は見逃してないぞ」
「だって仕方ないだろ、あんな長いんじゃ眠くなるに決まってる。思い出しただけで眠くなるよ」
「ふっふっふ、わかるよ湊、あれは催眠術の類だよ!」
「ことちゃんも寝てたのね」
「……てへっ」
こいつ、とぼけやがったな。
「担任の先生かわいかったなぁ~、私、絶対ぜ~ったいなかよくなるも~ん」
「ことちゃんならすぐね」
「ほんと、琴葉すぐ友達出来てたもんな」
「で、蒼太。あなたは女の子に囲まれて、鼻の下伸ばし切ってましたね。ね、湊」
「そうだそうだ、女子にちやほやされてこいつ浮かれてました~」
「なっ…そんなことは.......…ありました…」
「認めましたよ、この人」
「認めちゃいましたね、この人」
蒼太は嘘をつくのが下手だ。これはもう、下手を通り越している。まあ、蒼太の良い所でもある。
その後パフェが来て、満面の笑みでパフェを頬張る琴葉を横目に、高校の授業ってどんな感じかなとか、そんな他愛のない会話を楽しんで解散した。
ああ、これからはこの四人で、放課後を過ごせるんだな。この時間は、きっと心地いい。




