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ある日、辺境の貧乏男爵家の当主になった。前世の記憶で楽園を築きたい。  作者: ありんこの王様


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(39)友達を作ろう。



例の獣人族の人達の件だが、ようやく落ち着きを見せた。

三十人のうち十人が獣人の国ウルフス王国へ行く事を希望し、こちらについては、商人のニーナが責任を持って送り届けてくれた。ただ、ウルフス王国へ行っても知り合いがいない人たちが殆どらしく、今後の生活が心配ではある。

何かあれば、いつでもリンドロット領を頼ってもらいたい。


残りの二十人はリンドロット領に残る事を選択してくれて、さっそく仕事をしてくれることになった。

黒熊族の人達は力持ちで頼りがいがあり、白兎族の人達は畑仕事が、狼犬族の人達は狩りが得意と、それぞれの分野で今や大活躍している。




「だぁ~っっ!? もうやってられん! こんなのいくらやっても終わんねぇっ、たまったもんじゃねぇ……」


ガルドさんとゼノさんが、ガシガシと頭を掻きながらアルフレッドもとへやってきた。



「ガルドさんにゼノさん!? 二人が揃って来るのは珍しいですね、何かありましたか?」


アルフレッドとフローラは揃って目をまん丸くして驚いた。


「かぁ〜っっ、何かありましたかじゃねぇっての。ここのところ忙し過ぎて、自分達の用事すら何も手につかない状態がずっと続いているんだよッ!!」


言われてみれば確かにそうだ。

ロンメル辺境伯に届ける複合弓とクロスボウ六百挺を大急ぎで作り上げ、銃を完成させ、女性達に尻を蹴飛ばされながら追加分を作り、学校を建てたかと思えば大砲の製作依頼⋯⋯。


その他にもゼノさんは白魔石や錆鉄山に鉄鉱石を採掘しに行ったり、魔鉄を作ったり⋯⋯。


確かに休む隙などこれっぽっちもないような生活になっている。



「……た、確かに、これは健康的とはとても言えない生活かも知れないわね……」


アルフレッドとフローラはお互いの顔を見合わせて納得してしまった。


「それで、ワシらはもうこれ以上はやってられねぇから、アルフレッドのところへ直談判にきたって訳だ!」


「……じ、直談判って……長期休みとか?……」


周りの情勢を考えると、今それは困る……。


「いや。ワシらも、ルシエラ婆さんのとこみてぇに、仕事の応援のために故郷から仲間たちを連れてこようと思う。今日はその許可をもらいにきた」



「「………………へっ?」」


アルフレッドとフローラは、揃って口を大きく開けたまま固まってしまった。


「ちょ!? ちょっちょっ、ちょっと待って!? お二人ともこの村の出身じゃないのっっ?」


先に我に返ったフローラが、半ば叫ぶように食いついた。


「いや。ワシらはそれぞれ別のドワーフの村の出身じゃ」


「「ドワーフ!?!?」」


アルフレッドとフローラは、またも揃って口をあんぐりと開けて固まってしまった。



「そうだぞ。二人ともそれぞれの村ではそこそこ腕の立つ職人だったが、それ以上にお互いに村一番の戦士でもあった」


……だからこの二人は、この辺りに出る強い魔物も平気で討伐出来ていたんだ……


「まあそれで、まだ若かったワシらは新たな刺激が欲しくなってのう。たまたま酒の席で隣同士になった時にそんな話をしたのがきっかけで、ついに気持ちが抑えきれなくなって揃って村を出たのじゃ。その後はほうぼうを渡り歩いた末に、強い魔物がいて、白魔石やら錆鉄山やらがあって面白そうなこの村に移り住んできたと言う訳じゃ」



……本当にドワーフだった。

だから二人ともお酒が大好きで、いつもあんなに飲んでいたんだ……。

ドワーフってお酒が無いと生きていけないなんて言われているくらいだし……。


ああ、なんかすんなり納得してしまった。



「二人のお仲間さん達が来てくれるなら、ぜひともお願いしたいです! この村の発展にも協力してもらえたらありがたいと思うんだけど……」


「ああ、その辺りはワシらからちゃんと説明しておく。それではさっそく呼びに行く準備をしてくる」


アルフレッドの許可を取った二人は、来た時よりも若干軽い足取りになって戻っていった。


それにしても驚いた。

ルシエラ婆さんと言い、今の二人と言い……もしかしたらこの村にはアルフレッドの知らない秘密を抱えたすごい人たちが、まだまだたくさん住んでいるのかもしれない。


まあ、どんな秘密を抱えた人たちでも、この村を選んで住んでくれているのだから、居心地の良い村にしてあげたいと思う。


とりあえずは、ドワーフの皆さんのために大量のお酒を仕入れておかなければならないだろうな……。


商業ギルドのナタリー支部長に相談に行くかな。エへヘッ


……って、ちょっとっ、フローラの目が怖いんだけどっ!? なんでぇぇぇ!?




ガルドさんとゼノさんは、それぞれの職人仲間たちに住居用の建物を大急ぎで建てておくように指示を出すと、その翌日には揃って自分たちの仲間を呼びに行く為に、村を旅立って行った。


さらに、ここまでの一連の流れを見ていたケットシー商会のニーナから思わぬ提案をしてきた。


「エルフやドワーフの人たちが移住して来るなら、獣人たちも移住させても良いかニャ?」


詳しく話を聞くと、やはり一部の場所では獣人たちに対する扱いが酷く、辛い思いをしている人たちがたくさんいるのだという。

そんな話を聞いては放っておけない。その場で移住の許可を出した。

それだけでなく、ニーナを始めこの村に住むことになった獣人族の人たちにも話を聞いて、移り住んでくる獣人族の人たちが快適に暮らせるよう、受け入れ準備を急いだ。


「――えっ? 水浴び? 温泉あるけど……?」


「――えっ? 窓いらないの? 暗い方が落ち着く? ……そう……」


「――はい? 家は土の中が良い? ……あ、自分たちで掘ると……」


「――へっ? 満月の夜に変身する!?……ふぁっ!?」



そして、ニーナが動き出してからすぐに、獣人族の人たちが少しずつリンドロット村に移住してくるようになった。

最初は皆戸惑った表情を見せるものの、先に来ていた獣人たちがこの村の事を丁寧に話して聞かせることで、次第に落ち着きを取り戻していくようになる。


新しくきた獣人の人たちはすぐに明るさを取り戻し、この村に溶け込む為に努力をしていき、村の方でも獣人の人たちに対して好意的に接していたので、大きなトラブルもなく村に馴染んでくれた。




そうこうしているうちに、ガルドさんとゼノさんが村を発ってから一ヶ月が過ぎた。

そろそろ二人のことが心配になりだした頃、ようやく揃って、それぞれの村から仲間を連れて戻ってきた。



「初めましてじゃ。ドワーフの里ガンダール村からきた、ゲオルグじゃ。今日から里の者たちと共に世話になるので、よろしくお願いするのじゃ」


ガルドさんの横にいたゲオルグさんが、自分の背丈より何倍も大きな荷物を背負ったままあいさつをしてくれた。その後ろには同じ村の人たち合わせて六十四人が並んでいた。



「こちらも初めましてじゃの。ワシはゾルデ村からきた、バッカスと申す。村の者たち共々、よろしくお頼み申す」


ゼノさんの横にいたバッカスさんが、続いてあいさつをしてくれた。

バッカスさんも、その後ろに続いている他の四十八人の人たちも、ゲオルグさん同様に大きな荷物を背負っていた。



「皆さん、ようこそリンドロット村へ。心から歓迎いたします。これから一緒にリンドロット村を発展させていくのをお手伝いしてもらえたらありがたいです。どうぞよろしく!」


アルフレッドのあいさつに、ドワーフの人たちは大きく頷いてくれた。


その後、それぞれ用意された家に向かい、旅の疲れを取るためにさっそく温泉に浸かってもらった。ドワーフの人たちは思いのほか温泉を気に入ってくれて、村の人たちと温泉の話で大盛り上がりを見せて、早くも仲良くなっている。



そしてその後は、恒例の村を挙げてのお祭り騒ぎの宴会に突入した。


新しくきた獣人の人たちも混ざっての大盛り上がりを見せた宴会は、この日の為に用意した普段の十倍もの酒樽を全て空にしても足らず、慌ててケットシー商会のニーナに頼んで、商会に保存していた酒樽を全て放出してもらってようやく間に合った。


ドワーフ恐るべし……。


宴会は、夜遅くまで続いていく。

村じゅうに楽しそうな歌声が響き渡り、笑い声がこだまする。


人族も、エルフも、獣人も、ドワーフも……。

種族など関係なく、共に語り、肩を組んで歌声をあげている。

そこには、何の隔たりも垣根も存在していない。きっとこれで、彼らは良い友人になれただろう。


また明日から、皆で一緒に村を発展させて住みよい場所を作り上げていけるのが楽しみだ。

今宵は、とことん交流を深めてもらいたい。




――翌朝。


村の広場には、昨夜の残骸と化した人たちが死屍累々とそこらじゅうに転がっていた。


それを、村の女性たちが温泉水を持って回り、皆に飲ませて無理やり回復させ、ヘロヘロのまま仕事場に引っ張っていった。



やはり、この村の女性たちは逞しい。

絶対に逆らってはいけないと、アルフレッドは改めて認識させられるのだった……。




そんな折、ロンメル辺境伯より連絡があり、国王陛下に謁見することが決まったとの報告を受け取った。


アルフレッドは、この時から既に胃がキリキリと痛み始めるのであった。



「ルシエラ婆さん、薬ちょうだい……」


「ふむ。軟膏で良いかの?」


「何でぇぇぇ〜〜!?」




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