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ある日、辺境の貧乏男爵家の当主になった。前世の記憶で楽園を築きたい。  作者: ありんこの王様


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(24)不穏な足音。



「――ッ、くそっ! くそっ、くそっ、くそっ!

えぇ〜い! 腹立たしいッッ!! 何で、何でワシがこんな目に遭わねばならんのだッッ!!

全てワシの計画通りに進んでいたものを、あともう一歩というところまで来ていたものをッッ

何者だっ! ワシの計画を邪魔した奴はッッ! えぇ〜いッ、くそっくそっ!!――ッ」


ガシャン、ドカン、ガッシャーーン、ガラガラガラ……


「ワ、ワルター様、落ち着いて下さいっ……」


「うるさいッッ、うるさい、うるさい、うるさいッッ、えぇ〜い、どいつもこいつも腹立たしいッッ!! そもそも、ワシの邪魔をした奴は誰だか分かったのかっ!!」



……コンコン……


「――ッ、誰じゃっ!」


ガチャッ


「失礼します。先ほど手の者から報告がありまして、ワルター様の邪魔をした落札者の素性が判明したとの事です」


「何ッ!? それはまことかっ!?して、其奴は何者なのだっ? あの、何の価値もない母娘に金貨700枚も出す様なイカれたヤツはっ!!」


「はっ、先の落札者の名は、アルフレッド・リンドロット男爵。ついこの間、リンドロット領の領主になったばかりの男にございます」



「……ほぅ。リンドロット領と言えば、最近何かと話題の領地ではないか。そうか、奴があの、リバーシやチェスを発明したとかいう奴か。

……うぬぬっ、ちょっとばかり発明で金が入ったからと良い気になりおってからに……

して、そのアルフレッドとやらは、今どうしている?」


「はっ。現在は、この領都グランリゲルの宿に宿泊しておりますが、情報によりますと、あと数日でリンドロット領に戻る予定だそうです」



「何ッ!? リンドロット領に戻るだとッッ、くそっ、あんな山奥に籠られたらどうしょうもない。そうなる前に、何か良い手立てはないかッッ……」


「恐れながら申し上げます。リンドロット領へ帰るには、我がリーゲル領の一番西の端にあるフルール村を通らねばなりません。そして、そこからリンドロット領へと通じる唯一の道は、険しい山道のうえ、以前より盗賊が出る事で有名な場所でもございます」


「――!? ほお、そうなのか?⋯⋯グフフフ、そうか盗賊が出るのか。それなら運悪く襲われても仕方ないのぅ?」


「はっ、その通りかと」


「よし。いつもの奴らに連絡を取れ! 今回は報酬を弾むから総動員をかけろと伝えろ。

それから、ウチの私兵達も出せ。なに、格好を偽装すればうちの商会の私兵だとは気が付くまい。但し武具は最上の物を持たせろ! こちらも総動員だ。

若い女は生け捕りに、その他は皆殺しにしろ! 急げよ。奴らを逃がすなッッ!!」


「はっ。仰せのままに」


「グフフフッッ。見てろよ、山奥の片田舎に住む貧乏貴族風情がいい気になったら、どうなるかタップリと教えてやる。待ってろよ、アルフレッド・リンドロット。グワッハッハッハ……」





「フィオナっっ!?」


「ナタリーっっ!?」


ナタリーの友人だと言う言葉通り、2人は再会すると直ぐに、声を上げて泣きながら抱き合っていた。


「フィオナっ、私、何も出来なくてゴメンねっ、辛かったね、怖かったよねっ……でも、良かった。本当に良かった……」


「うんっ、正直もうダメかと思った。この世に神様なんていないのかと思った。……誰か助けてって、ずっと心の中で叫んでた。……でも、奇跡って本当にあるんだって……」


お互いに泣き笑いの顔で、喜びを分かち合っていた。


「ぐずっ、でも、私を落札してくれた人が、あのワルターより酷い人だったら目も当てられないから、まだ安心はできないんだけどね……」


「うふっ、それなら大丈夫よ! アルフレッド様は、フィオナが考えている様な方ではないわ。すごく素敵な方よ!」


「……アルフレッド様?」



そこで、初めてこちらの存在に気づいた様に目線を向けて来た。


「初めまして。アルフレッド・リンドロットと申します。あなた達母娘を落札した者です。安心して下さい、決して乱暴な事はいたしません。これから私達と一緒に、リンドロット領の発展に協力してもらえたらと思っていますよ」


アルフレッドのあいさつに、フィオナは目を見開き飛び上がった。


「あ、アルフレッド様って、あのリバーシを発明されたアルフレッド様っっ!?……ええっ!? アルフレッド様って領主様よねっ、男爵様よねっ!? えっ、えっ……」


「ふふっ、フィオナ落ち着いて。そのアルフレッド様で合ってるわよ。そんなに怖がらなくてもアルフレッド様はとても良い人だから、心配しなくても大丈夫よ」


取り乱してしまったフィオナを落ち着かせようと、ナタリーが笑顔を作り慌てさせないよう、ゆっくりと諭した。



「た、大変失礼いたしましたっ! わ、私はフィオナと申します。こっちは娘のシェリルです。母娘共々、どうかよろしくお願いいたします。」


意外にも、フィオナはとても見事なカーテシーを決めて見せた。


それに驚いていると、「これでも商会にいましたから、いつでも貴族様にご挨拶出来る様に身につけました」と笑顔になった。



その日は、既に夜も遅かったのでそのまま宿に連れ帰って休んだ。


もちろんその後は、エレノアに奉仕をしてもらった。

朝食の時に、隣の部屋で寝ていたフィオナの顔が赤かったのは気のせいだろう。


朝の忙しい時間が過ぎた頃、アルフレッドは商業ギルドへ顔を出して、ナタリーに頼んでフィオナとシェリルの身の回りの物を揃えてもらった。


いくらアルフレッドが落札したとはいえ、今はまだフィオナ達に、この町で顔を晒して買い物をさせるのは不安だったからだ。

噂が本当なら、あのワルターが大人しくしてる筈がない。危険はなるべく回避しておきたいと思った。


それにしても、シェリルもフィオナに似て、綺麗な白金髪の髪の毛を背中に流して、お人形の様に綺麗で可愛い娘だ。将来はきっとフィオナと同じ様に、とびきりの美人になるに違いない。


年齢的に、妹のミーシアと年が近いからきっと仲良くなれると思う。

ミーシアとシェリルが2人で遊んでいる姿は、天使か妖精達の様に可愛いんだろうなぁ〜と、想像しただけで顔が緩んでしまった。




その後、市場を見て回ったり商店を回って皆へのお土産等を物色したアルフレッドは、午後の混み合わない時間を選んで再度ナタリーに会いに行った。


「うふっ、1日に2回も来てくれるなんて、そんなに私に会いたかったの」


個室に入るなり、そう言ってしなだれかかってきた。


良く考えたらこの部屋は防音がしっかりしていて、商談が終わるまでは決して誰も入って来ないんだよな。

そう思ったアルフレッドは、そのままナタリーを強く抱きしめ返した。


「えっ!?」


ナタリーが戸惑っているうちに、キスを落とす。


「……もぅっ、仕事中なのに……フフフッ…なんだか恥ずかしくなってきたわ。 もうっ、これがクセになったら責任取って下さいねッッ」


ナタリーの可愛いお願いに、もう一度キスで返事をした。



しばらくそのまま二人の時間をゆったりと過ごしてから、今後の話をした。


ワルターがこのまま黙っているとは思えない為、早めに、出来れば明後日にはこの町を出ようと思っている事。


来る時よりも帰りの方が人が増えるので、馬付きで馬車を3台購入したい事。


ワルターの動向を探って欲しい事。


こんな話をした。



「……そう。また、しばらくアルフレッド様に会えなくなるのは本当に残念だけど、私もその方が良いと思うわ。ワルターの事は分かり次第伝えるわね。それと、馬車は中古でも構わないわよね? ああ、あとニーナから連絡が来たわよ。物資の第一便の手配が済んだそうよ。数日の内にリンドロット領に届くと思うわよ」


さすがナタリー、仕事が出来る。


そのナタリーが推薦してくれた猫獣人の商人ニーナも仕事が早い。流石だ。



さて、これで話は終わり……

と、思ったがここに来てお金をずいぶん使った事が気になった。

リバーシもチェスも、一家にひとつあれば良いモノなので、いつかは売り上げが頭打ちになる事を想定しておかなければならないと思う。


それなら、次の手を打っておくのも悪くない。ここは前世の記憶を発動だ。


「あ〜、ナタリー。急で悪いんだけど、新しい玩具を思いついたんだ。登録手続きしてくれる?あと、ギルドとのロイヤルティ契約も。よろしくねっ! テヘッ」


「…………はあっ!? えっ!? ちょっと!? 本当なのっ!? いきなり何言っちゃってるのっ!?何をそんなさらっと言ってるのよっ!? テヘッって何、テヘッって!? 新しいアイデアって、そんな簡単に出てくるものなのっ!?」


慌てて書類やら何やらを取りに、部屋を飛び出していったナタリー。


戻って来た時には、何故か慌てた様子のギルド長が一緒について来てた。



「……あー、それで、また突然新しいアイデアが浮かんだとお聞きしましたが……」


ギルド長はとても困惑した表情をしていた。



「ああ、はい。こういうものです」


さっきナタリーに借りた紙とペンで、簡単に[すごろく]を作ってみた。


人生ゲームも考えたが、この国の識字率はそんなに高くないので、簡単な『すごろく』にした。


・マス目の当たりには[+]のマークと数字を書き込んだ。例えば[+6]とか。そこに止まれば、プラスでそこに書いてある数字の分だけ先に進める。

・ハズレのマス目には[ー]のマークと数字を書いて、そこに止まればその分後ろに下がるようにした。

・赤いマス目に止まれば1回休み。

・前の人に追いついて同じマス目に止まれば、追いつかれた人は1回休み。

・ハズレのマスから後ろに下がって、誰かと同じマス目になったら、先にそこに止まっていた人の方が1回休み。

・黒いマス目に止まったら、振り出しに戻る。

・サイコロは2つ使用し、いちのゾロ目が出たら1回休み。ろくのゾロ目が出たらもう1回サイコロを振れる事にした。

この世界にもサイコロはあるので、これで十分に楽しめると思う。


これなら何人でも一緒に遊べるし、コースは幾らでも自由に作れるので、今後色んなパターンの『すごろく』が出てくるはず。



これは庶民向け、子供向けの玩具になるだろうから、そんなに儲けは出ないかも知れない。

とりあえずは、小遣い稼ぎくらいのつもりで良いかとそんな話をすると、ギルド長とナタリーはポカーンとして我に返った後、いやいやいや!何を言っている、これは絶対に売れるとものすごい勢いで食いつかれた。


まあ、売れるならありがたい。


こうして、登録はギルド長とナタリーが前のめりになってくれたおかげでスムーズに終わった。



さあ、リンドロット領へ戻る準備に取り掛かろう。







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