(2)始まりの一歩目。
……コンコン……
「こんにちは〜、ガルドさんいる〜?」
「おう!アルじゃねぇか!どうした?なんか用事か?……おっと、領主様って呼んだ方が良かったか?」
大工のガルドさんが、ニヤリと笑いながらそんな事を言ってくる。
「あははっ!何言ってるの、そんな気全然ないくせに。生まれた時からアルって呼ばれてたんだから、今まで通りで良いよ。それより、実はガルドさんに頼みたい事があってさ……こうこう、こういうのを作って欲しいんだけど――」
説明をしながら図面を見せると、ガルドさんはそれを見ながらアッサリと試作品を作ってしまった。
「……ほう、なるほど。こりゃあ面白れえ!こっちは高級感を出すのか?それなら石工のゼノにも声を掛けた方が良いな。出来上がるまで十日間ほど時間をくれや……うーん、今日辺りだとゼノは白魔山の方か……」
ガルドさんはそう言うと、早速とばかりに石工のゼノさんの所に出かけて行ってしまった。
この領には、植物が一切生えていない2つの大きな岩山がある。
ひとつはこの領の北西側にある白魔石という真っ白な石で出来た岩山で、そのまま白魔山と呼ばれている。
実は、この白魔石にはほんの少しだけ魔力が籠もっているらしい。
でも、長い間その使い道が誰にも分からず、だから何だと言わんばかりに、今では普通の白い石として切り出されて使われている。
もうひとつは、この領の南西にある赤く染まった石で出来た岩山で、錆鉄山と呼ばれている。
こちらは、書いて字のごとく鉄が含まれた岩石から出来た岩山で、地表に出た鉄が雨にさらされて、赤く錆びている事からこう呼ばれる様になった。
それだけ鉄があるなら色々と使えそうに思えるが、ここで採れる鉄は質がかなり悪いらしく、こちらも使い道があまりないと言われている。
どちらも、何か良い解決方法が見つかると良いんだけどな……。
石工の人達が山に行くのは、だいたいこの2つの岩山のどちらかになるのだが、今日ゼノさんは白魔山の方にいるらしい。
……良く分かるな。
「にぃ様、お帰りなさい!」
家に帰ると、妹のミーシアが満面の笑顔で飛びついてきて、頭をグリグリと擦りつけてくる。
「ただいまミーシア。良い子にしてたかい?」
「うんっ!にぃ様の帰りをずっと待ってたんだよっ」
キラキラとした瞳で見上げてくる。
くぅ〜、なんだこの可愛い生き物はッ
「そ、そっか。えへへっ、ミーシアありがとうね!」
ミーシアの頭を撫で回してあげると、嬉しそうに目を細めてまたギュッと抱き着いて来た。
くぅぅ〜っ、ミーシアは本当に天使だ!
「そうだ!ミーシア、これで今から遊ぼうか?」
そう言ってあの試作品を取り出した。
「にぃ様、それはなーに?」
「これ?これはね、リバーシって言うんだよ」
そう、この領地を発展させる為に、前世の記憶とラノベの知識から閃いた第一弾はリバーシだった。
ミーシアに遊び方を教えていると、母さんとメイドのリナも側に寄って来た。
「あら、面白そうね!私にもやらせてもらえるかしら」
「わ、私もやってみたいですっ!」
2人とも食いついたので、そのまま皆でしばらくリバーシを楽しんだ。
「……ま、また負けた……そんな……1回も勝てないなんて……8歳のミーシアちゃんにまで負けるなんて……私っていったい……」
リナが暗い顔で何かブツブツ言っているが気にしないでおこう。ドンマイ!
「父上、相談があります」
まだベッドから上手く起き上がれないジェイドの元を訪ね、今後の相談をした。
「アルフレッド、凄いな。良くそんな事を思いつくものだ。私にはない発想力だよ。良いと思う、好きにやってみなさい」
よーし、父上の許可も出た事だし、いっちょやっちゃいますか!
10日後、大工のガルドさんの所に行くと、石工のゼノさんもそこにいた。
「アル坊、ずいぶん面白れぇモンを考えたじゃねえか!俺もすっかりハマっちまったぜ!わはははっ」
豪快に笑うゼノさんを見て、コレならイケると思った。
「そういゃあアルよ、お前さんコレをリーゲル領の領都グランリゲルまで持って行くんだろ?同行するヤツは決まったのか?」
「あはは、いや、実はまだ決まってなくて……」
「そうか、ふむ、それならワシが一緒に行ってやろう」
「おう!そういう事なら、俺も一緒に行くぞ!」
「ええっ!それは有難いけど、お二人とも仕事は良いの?」
「なぁに、何日か空けたって何にも支障なんかねぇよ!がはははっ」
「そもそも、そんなに仕事もねぇしな!わはははっ」
豪快に笑う2人に頭を下げて、同行して貰う事にした。
「よぉーし、皆、忘れ物はねぇな?」
「「「「おぅっ!!」」」」
なんでこんなかけ声になっているかと言うと、事情を知った大工と石工の職人達が護衛兼荷物運びで、ついて来てくれる事になったからだ。
ガルドさんとゼノさんを含めて総勢12人で領都グランリゲルへ行く事になった。
「がはははっ、これだけの人数がいれば魔獣にも盗賊にも、そうそう後れを取る事はないだろうさ。よっぽど強いヤツでも出て来ない限りは何も問題はねぇよな!」
「おうよ!あの赤毛斬牙熊でも出て来ない限りは大丈夫だろう!わはははっ」
「ちよっ!それ、思いっ切りフラグだからっ!」
「フラグ?なんだそりゃ?アルが変な事言い出したぞ」
「俺、領都グランリゲルで指輪を買って、帰ってきたらプロポーズするんだ!」
「俺も、領都グランリゲルでオシャレなモン見つけて、帰ってきたらあの娘に交際を申し込むつもりなんだ!」
「おらぁ、今まで親孝行ってした事ねぇからさ、領都グランリゲルで服でも買って、帰ってきたらお袋を喜ばせてやるんだ!」
「ちょ、ちょっとちょっとちょっとっ!皆、それフラグだってばっ!言っちゃダメなヤツだからっ!!」
「んぁ~、若様が何か変な事言ってるぞ?」
「なんだ?領都グランリゲルに行けるってので舞い上がってんのかぁ?」
「それは皆の方でしょっ!!」
「細けえ事は気にすんな」
「「「違げえねぇ!わはははっ」」」
もうめまいしかしない……
「にぃ様、お気をつけて」
「ミーシアありがとう!」
ああ、やっぱりミーシアは可愛いなぁ〜、天使だよ!うんうん!!
「アルフレッド、気をつけて行って来なさい」
「はい、母さん行ってきます!」
「旅のご無事をお祈りしています」
「リナ、ありがとうね。父上や家族の事をよろしく頼むね」
「なぁに、このメンツで行くんだ。道中でドラゴンでも出ない限り、ちゃんと無事に帰って来るさ!がはははっ」
「ちょっ!?ガルドさん、またそれフラグだってばっ!!」
「「「「わはははっ」」」」
こうして、アルフレッド一行は、リーゲル領の領都へ向けて出発した。




