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ある日、辺境の貧乏男爵家の当主になった。前世の記憶で楽園を築きたい。  作者: ありんこの王様


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(12)ブルーノ子爵からの支援。



ブルーノ子爵から支援が届いたと聞いて駆けつけると、そこに居たのは、ほとんど着の身着のままで不安気な表情を浮かべている約50人の人達だった。



……これはいったいどういう事だ?……



この状況に理解が追いつかず唖然としていると、その人達の中から老紳士がひとりスッと前に出てきた。


「お初にお目に掛かります、アルフレッド・リンドロット男爵様」


背筋をまっすぐに保ち、左手を腹部に当て右手は後ろに回し、腰から上体を倒した。



「……これは……執事の作法……」


フローラがボソッとつぶやいた。



ゆっくりと顔を上げると、こちらを真っすぐに見て話を続けた。


「私はブルックス・ガードナーと申します。先代の頃からリーゲル家に家令としてお仕えしておりましたが、この度ブルーノ子爵より下命を拝しまして、こちらのリンドロット領へ参りました次第でございます」



「……えっ?執事さんが村の支援?」


アルフレッドが不思議に思っていると、ブルックスさんは申し訳なさそうな顔をして理由を話してくれた。



「……実は私は、リーゲル家を解雇されたのでございます。」



「…………はっ?」


ブルックスさんの衝撃のひと言に、アルフレッドもフローラも、話を聞いた人達皆が固まってしまった。



「先ほども申し上げました通り、私は先代の頃よりリーゲル家にお仕えしておりました。先代にはとても良くしていただいておりましたので、ご恩をお返しするつもりで、私も誠心誠意努めてまいりました。

もちろんブルーノ様にも、幼少の頃から将来良き当主になられるよう、教育にも力を注いでまいったつもりでございます。

当然その中には苦言を呈する場面も多くあったのですが、どうもそれがブルーノ様にとってはお気に召さなかった様でございます」



「……じいやが口うるさいのは、どこでも一緒なのね」


フローラにも思い当たる事があるのか、何かを思い出したように苦い顔を浮かべている。


メイドのサラさんと護衛のミレーユさんマリアさんの3人が、フローラの方を向いて妙に納得しながら、うんうんと頷いているところを見るとフローラも相当やらかしてきたのかもしれない……



「フローラお嬢様は、ああ見えて結構おてんばですので、じいやに怒られる事もしばしば……」


メイドのサラさんが、スッと寄ってきて教えてくれた。


「そして、結構ぽんこつです」


護衛のミレーユさんが続いた。


「……その上、結構大食漢」


さらにマリアさんが追い討ちをかけた。



「ちょっと!?聞こえているわよっ!!3人とも、後で覚えてらっしゃいっ!!」


フローラが顔を真っ赤にして叫ぶも、3人ともどこ吹く風だ。しれっと元の位置に戻って、何事もなかったかのように澄ました顔で立っている。



「……フローラ、今まで気付かなくてごめん。これからは食事の量増やすから」


「ちょっ!?アル様までっ!?ひどっ!?」



……ぷっ、あはははははっ!!


このやり取りを聞いていた人達から、笑い声が溢れ出した。


今まで不安そうだったのが、皆少し柔らかい顔つきに変わっていた。



「皆さま仲が宜しいようで、大変微笑ましい限りでございますな。それで、先ほどの続きになりますが……」



……ああ、忘れてた……


皆の顔がまた引き締まった。



「ブルーノ様が当主になられてからも、当然厳しい事も度々申し上げて参りました。ですがそれも、日が経つにつれて段々と聞く耳をお持ちにならなくなってしまったのです。そして最近では、疎ましく思ったのか私を遠ざけ、違う者を側に置くようになったのでございます」



……ああ、だからこの間ブルーノ子爵の屋敷に行った時、若い人が側にいたんだ……


アルフレッドはリバーシの一件の時にブルーノ子爵の屋敷で会った人の顔を思い出していた。



「しかし、それでも先代のご恩がございます。ブルーノ様が間違った事をしたらお諌めせねばと思っておりました。ですがこの頃は聞く耳を持たないどころか増長していくばかりでして。そして極めつけは、今回のリンドロット領への支援の件でございました」



「……えっ?うちの領が関係しているの?」


アルフレッドは困惑した表情を浮かべた。



「ブルーノ様は、私から何度申し上げても、今回のリンドロット領への支援について、ただの1度も本腰を入れようとはなさりませんでした。リバーシやチェスなど、あれだけの素晴らしい逸品をいただいたにもかかわらずです」


ブルックスさんは、呆れたと言わんばかりの顔で、フルフルと顔を横に振った。


「視察の際にも、部隊の編成をまともになされようとはせず、ロンメル辺境伯の部隊を見て慌てて兵をかき集めましたが、内容は目を覆うばかりのモノでございました。兵はお世辞にも精鋭とは言えない者ばかり。携行品ですらも在庫が減る事を嫌がり、命に関わる薬草やポーションでさえ、使えばお金が掛かるからと持たせる事を拒みました」



だから、ルシエラ婆さんがポーションを配っていた時、あんな顔をしていたんだ……



「……結果はご覧の通りの酷い有様でございました。また、アルフレッド様には兵の為にポーションを譲っていただいたにもかかわらず、その代金をお支払いする事すら頑なに拒んでいる次第でございました」


「……あー……、まあ、お金を貰おうと思ってやった訳ではないから良いんだけどね……」



「そして今回の支援でございます。ブルーノ様は、小麦の数袋でも渡せば良いくらいに思っておられた様でございますが、ロンメル辺境伯様の支援隊が領都グランリゲルを通過するのを見て、その規模に驚嘆されたのでございます。そして、慌てたブルーノ様はリンドロット領で人材を求めている事を思い出し、それならこの際、支援の名目で邪魔者を排除しようと画策なされました。そして私にリーゲル家の解雇と、リンドロット領への支援と言う名の追放を告げられたのでございます」



「……酷い……酷過ぎるわ……」


フローラの顔が怒りに満ちている。



「アルフレッド・リンドロット様。私は今年で58になる老体でございます。そんな年寄りは要らないと言われれば、このままどこかへ流れて行こうかとも思っております。ですが、もし宜しければ何か仕事を与えてはいただけないでしょうか?草むしりでも何でもいたします。家族を飢えさせる訳にはいきませんので、何卒よろしくお願い申し上げます」


見れば、奥さんだろうかブルックスさんの後ろで不安そうにしている女性がいた。




「お屋敷を解雇され、支援の名目でリーゲル家を追放されたのはブルックス殿だけではございません」


ブルックスさんの横に進み出てきたのは30歳前後に見える、綺麗な女性だった。


「お初にお目に掛かります、アルフレッド・リンドロット様。私はリーゲル家にてメイド長を務めさせていただいておりました、カミラ・テイラーと申します。」


カミラさんは、見事なカーテシーをして見せた。


「……私を含め、後ろに控えている者達は全てリーゲル家を解雇された者達とその家族にございます。」


そうして後ろを振り返った。



そこから、各々の自己紹介が始まった。


ルーチェ・プリラーレ 13歳。

プリラーレ騎士爵家の三女。リーゲル子爵家にメイドとして採用され喜んでいたのもつかの間、ブルーノに手篭めにされそうになり股間を蹴り上げた事から不敬を働いたと断罪され、リンドロット領に追放された。


カミラ・テイラー 28歳。

テイラー男爵家の三女。先代の頃より勤めてきたメイド長。

メイドとして働き出した頃に家が没落した。落ち込んだ彼女を先代が慰め、そのまま愛妾として迎えてメイドを続けさせた。本人の頑張りでメイド長まで登り詰めたが、現当主ブルーノにしてみれば父親の愛妾など目障り以外の何者でもなく、この機会とばかりにルーチェの監督責任を問われリンドロット領に追放された。


エレノア 24歳。

剣の才能に溢れており、また統率にも優れている事から先代が目を掛け、平民ながらリーゲル子爵家騎士団副団長にまで駆け上がった。

だが、副団長になった事でその容姿端麗な姿が目立ってしまい、ブルーノに目をつけられ執拗に言い寄られる事となってしまった。

それに対して彼女がまともに相手にすらせず、無碍に断わっていた事をずっと根に持たれていて、また以前から平民であるにもかかわらず副騎士団長に収まっている事も気に入らなかった為に、リンドロット領へ追放となった。


メアリー 19歳。

見た目は11〜3歳位にしか見えないミニマムレディ。孤児院出身で突如現れた魔法の天才。その魔力は王国内でも飛び抜けており極大魔法一撃で大きな街を消すことが出来るほど。

だがしかし、実はその魔力をコントロール出来ずに上手く魔法が操れない。

それでも、いつか何かの時に役に立ってくれればと先代が雇い入れていたが、ブルーノからすればタダ飯ぐらいの給金泥棒としか見ておらず、良い機会とばかりにリンドロット領へ追放された。


キースティン 22歳。

リーゲル子爵家魔法師団の団員。

貴重な魔法使いの才能があるが、火・水・風・土の基本4属性の中で1番使えないとされる土魔法使いだった為にブルーノからずっと酷く冷遇されていた。魔法師団の中でも土魔法使いは高レベルな者が1人いれば良いとされており、今回、レベルの低い土魔法使い20人と共にリンドロット領に追放された。



………………



それぞれの自己紹介が終わると、皆何とも言えない空気になった。



「ひ、酷い。支援の名目で、自分にとって邪魔な人達をまとめて追放するなんて⋯⋯こんなのあんまりだわっ!それにアル様に対しても、あまりにも失礼極まりないです!お父様に報告して、今すぐ厳重に抗議いたしましょう!!」


フローラが顔を真っ赤にして憤慨している。


まあ、言いたい事は分かる。




――でも



「皆さん、ようこそリンドロット領へ。私は皆さんを心から歓迎します。どうか村の復興に力を貸して下さい。」




アルフレッドは笑顔で皆を迎え入れた。







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