第二十八話【旅行一日目、観光地巡り】
荷物を置いて再び集まった俺達は、まずアユと紗霧ちゃんへの説教から始まった。
旅館の入り口で俺がアユを、ヒナが紗霧ちゃんを正座させているのをミノとレイが苦笑いしながら眺めていた。
ひとしきり説教を終えて、アユと紗霧ちゃんがぺしょぺしょになった辺りで今後の予定について話し合った。
「この辺りは観光客向けのお店もいっぱいあるらしいね」
ミノが旅館の入り口に並べられていたパンフレットを一冊持ってきて眺めている。
俺とレイも横からひょっこり。
「あちこち回ってみるのも楽しそうだけど、みんなはどうする?」
「俺とミノルはお土産色々見て回るつもりだけどよ」
どうやらアユとミノは既に決めている様だ。
「どうすっかなぁ。土産かぁ……」
一緒に住んでいる人間、友人はほとんどこの場に居る。わざわざ土産を買う必要も無い。
いや、タクとチカゲには何か買っても良いかもしれない。いつも相談に乗ってくれているし。
夏休み中は会えないだろうし、日持ちする物か食い物以外が良いだろうか。
「お姉さんは旅館に閉じこもるとするよ。しばらく太陽の下を歩きたくないんでねぇ……」
「お、なんか吸血鬼みたいな事言ってる」
「似たようなものだからね」
紗霧ちゃんはそう言い残して部屋に戻ってしまった。
まあ温泉旅行のメインは温泉だ。旅館から出なくても楽しみはたくさんあるだろう。
「私はお父さんとお母さんに何か買って帰ろうかな」
「あたしはカイトと一緒に行く!」
ヒナとレイも旅館周辺を見て回る方向で一致した様子。
残るのは紗霧ちゃんだけか。若さかな。
「よし、それじゃみんなで行くか」
そう言って俺は部屋に財布を取りに戻ろうとした。
ヒナもレイも俺の後ろをついてきたが、アユとミノは何か言いたげだ。
「ああいや、僕達は先に出てるよ」
「は!? なんで!」
「なんでってお前……本気かぁ?」
アユとミノに半ば呆れられたような目で見られ、若干たじろぐ。
「わざわざあの二人と同じ部屋にしてやったの、もう忘れたのかよ」
「いやそれはお前らが勝手に……」
「委員長もレイちゃんも、カイトと離れたくないと思うよ?」
「うぐ……」
二人に詰め寄られ、ちらっとレイとヒナの方を見る。
「言っておくけど、僕は委員長に恨まれるつもりは無いからね」
「馬に蹴られんのはごめんだしな~」
だめだ、ミノもアユもこの旅行、俺と一緒に行動するつもりはさらさら無いらしい。
これ以上は何を言っても俺の方が言い負かされそうだ。
「……わーったよ。俺はヒナとレイと一緒に居るよ」
「おーおー、そうしろそうしろ」
観念して女子二人の方へ向かう俺を、アユとミノが楽しそうに見送っていた。
もしこの旅行で俺とヒナ、レイの関係に良い変化が起きても、絶対感謝なんてしてやらねえからな。
◇
「なんだか気を遣わせちゃったみたいだね」
三人で街を見て回りながら、申し訳なさそうにヒナが呟く。
「私達がカイトと一緒に居られるようにしてくれたんでしょ? 大空くんも畑中くんも」
「やめとけ、どうせあいつら面白がってるだけだ。それよりもさ」
俺は数歩先で楽しそうにお土産の工芸品を眺めているレイを指差す。
「ねえねえカイト! 見てみて、すっごい綺麗!!」
「……あいつみたいに楽しんだ方がお得だぜ」
「ほら、こっちこっち~!」
「今行くよ!」
手招きするレイの近くに俺も寄った。
「……そっか、そうだよね」
ヒナもようやく割り切れたのか、俺から離れない様に数歩遅れてついてきた。
それでいいんだ。別にアユもミノも紗霧ちゃんもただ気ぶってるだけだ、何かを負担に感じている事は無いだろう。
それでもあいつらの事を思うなら、あいつらの思惑通り楽しんでやるべきだ。
どちらにせよここは楽しむのが正解なのだ。
「アクセなんかもあるんだな」
「見てるだけでも可愛いねぇ」
「何個か買ってやろうか?」
「う、うーん……このお店で使ってる金具、全部銀製みたいで……」
「あっ……」
店頭に並べられた色とりどりのアクセサリーを見て目を輝かせるレイだったが、種族レベルでどうしようもない相性の悪さに購入を断念していた。
可哀想に。もし使われているのが金や銅なら何も気にしなくてよかったのに。
「工芸品って言う事は、歴史のどこかで吸血霊鬼と対立していた時代があるのかもね」
「なるほど」
ヒナは銀を用いて作られた工芸品を見てその様な考察をしていた。
確かにこう言うものは大抵長い歴史を持つ場合が多い。時代を遡ればまだ吸血霊鬼との共存を望まれていなかった頃もあるのかもしれない。
科学や研究が発展した現代と違って、昔は吸血霊鬼との能力の差を埋めるのも簡単ではなかっただろうから。
「あたし、生まれたのがこの時代で本当に良かった……」
「レイは色々甘いからなぁ、ふらっと討伐されちまいそうで確かに怖いな」
「レイカさんの場合現代でも危なかったけど」
「…………そういやそうでしたね」
ふと放ったヒナの一言で、三人の間で気まずい空気が流れる。
レイとヒナが初めて会った時、俺が間に入ってなかったらマジでやられてた可能性があるからな。
ややこしくなったのも間違いなく俺のせいなんだけど。
「あの時は、まさかこの三人で旅行に来るなんて思っても見なかったよ」
「そうね……レイカさんとここまで仲良くなるなんて思っ……」
「あ! ヒナタさん、あたしと仲良くなったって思ってくれてるの!?」
「お、思ってない!! 思ってないわよ!! 貴女は敵! 恋敵!!」
「ひーん……」
口を滑らせたと思ったのか、慌てて訂正するヒナと、悲しそうに鳴き声を上げるレイ。
「あんだけレイにも手料理振舞っておいてか?」
「あれはカイトに作るついでだってば!」
「さっき汗拭いてやってたろ」
「あれもついでよ! 一気に拭いた方がタオルも使いすぎないし……」
「レイの事可愛いって言ってたくせに」
「かっ、可愛い事と敵な事は両立できるでしょお!?」
俺に痛い所を突かれまくってどんどんヒートアップするヒナ。
「ほらレイ、ヒナもレイの事好きだってよ」
「ヒナタさん、あたしの事好き?」
「す……好きな訳ないでしょっ!!!」
とうとうそっぽを向いてしまった。
そんなヒナを見て笑う俺とレイ。ヒナは耳まで真っ赤になっていた。
「本当に素直じゃねえんだから」
ヒナは口ではこう言っているが、普段の会話の端々からもレイの事を気遣っている様子が読み取れる。
特に以前、レイのじいさんと会った日の夜、ベッドの中でヒナにレイの事をぼかして相談した時。
俺はぼかすのが本当に下手で、ヒナはレイがじいさんを殺すところだったと言うのを遠回しに理解したはずだ。
それを聞いて理解してもヒナはレイに対する態度を変えず、冷静にアドバイスしてくれた。これはただの吸血霊鬼嫌いだった頃のヒナとは大違いだ。
それはヒナの中でもレイと言う存在が大きく、大切な者に含まれてきた何よりの証拠では無いのだろうか。
「えへへ~、ヒナタさ~ん」
「っ……近寄るんじゃないわよ!」
と言うのは流石に黙っていよう。
レイもヒナにあの時の事を知られたくは無いだろうし、ヒナだってレイの事をそこまで案じていると悟られたくないだろう。
相手に隠し事をするのは不誠実なんかじゃない、相手を案じて最善の手を選ぶ事こそ誠実さだと俺は思う。
どっかのじいさんも言ってたしな、正しい選択よりも後悔しない選択って。
◇
「すごーーーーい!!」
俺達は土産を見て回った後、店が並ぶエリアを抜けて近くの高台に来ていた。
パンフレットによればこの辺りの景色を一望できる絶景スポットらしい。
「確かに良い眺めだなー」
「もっと早く来れてたら海にも行けたかもね」
レイに引っ張られる形で俺とヒナも景色を眺める。
ここから海岸は決して近くは無いのだが、この高台からは綺麗な海岸線がばっちり見えていた。
歴史を感じる瓦屋根の建物が並び、緑も多い。観光スポットになるのも納得だった。
ただ、歴史を感じる程古い建築が多いと、注意しなければならない点もあって。
「レイ、あんま手すりに乗り出すなよ」
この高台、手すりが付けられたのもかなり昔らしく、弱った場所から随時修繕が行われている様だ。
レイが手をついていたのは修繕前の手すり、何かあっては危険だ。
「壊れたら大変だからな」
「はーい!」
「……でもレイカさん、飛べるんじゃない?」
「あ、そうか」
レイは元気の良い返事をあけしてくれたが、隣のヒナからはマジレスされてしまった。
確かに吸血霊鬼は宙に浮ける。落下する危険はない。
それでも公共の施設を壊す可能性は無いに越した事は無いではないか。
レイも素直に新しい綺麗な手すりに移動して、引き続き景色を眺めた。
「でも、本当に綺麗だね」
「そうだなぁ。天気もいいし、海面がキラキラして輝いてら」
俺とヒナも安全そうな手すりに移動して、並んで景色を眺める。
「…………」
「えっ、なんだ」
ヒナが景色を見て綺麗だと言うから、俺も素直な感想を伝えただけなのだが、ヒナは何か物足りなさそうな顔で俺を睨みつける。
「ん……まあ今のは流石に期待しすぎたかな……」
「だからなんなんだよ」
ヒナは勝手に何か納得して、勝手に話を切り上げようとしやがる。
流石に気になったので俺もヒナをじっと見つめ返した。
しばらくそうしていると、観念した様子でヒナが口を開く。
「……お前の方が綺麗だよって言って欲しかったなーって」
「はぁ~~!?」
若干照れながら頬を染めるヒナに俺は渾身の疑問符をひねり出す。
「そんなんさらっと出てくんのは少女漫画のキザ野郎ぐらいだよ」
「でもカイト、たまにそういう時あるよ?」
「いや、んな訳…………」
無い。そう思ってヒナやレイに対する発言を思い返してみた。
いや大丈夫、無いはずだ。思い当たる内容なんて。
「やっぱお前は笑ってる方が可愛いよ、だっけ?」
「ブッ!? なんでヒナがそれを……」
「レイカさんが嬉しそうに自慢して来たわよ」
レイの奴、何やってんだよ。確かにレイとの家デートの時にポロっと口を滑らせはしたが。
ヒナもよくレイにマウント取るしなぁ、カウンター喰らったのかなぁ。
俺にまで飛び火してきたが。
「そりゃからかい半分に意図してキザな事言った事はあるけどさぁ」
寝たふりをするヒナを起こした時とかな。
「……じゃあレイカさんなら言ってた?」
「比べさせんなお前」
「私より顔が好みなレイカさんなら、言ってた???」
「あの、めっちゃ根に持ってません?」
ダメだ、完全に拗ねモードに入ってる気がする。
えー、そんな歯が浮くようなセリフ言わなきゃいけないの?
本当に言われて嬉しいの?
「……はぁ~、ったく」
腹を括ろう。
深く息を吸い、覚悟を決めてヒナをまっすぐ見た。
「…………」
いや、それだけじゃ足りない。
「きゃっ!?」
ヒナの顎を掴んでクイっと俺の方へ向けた。
ただ言っても満足するかもしれんが、思い通りってのも俺の気が済まん。
少しは反撃させてもらうぞ。
「かっ、かいとっ……」
「ここの景色よりも、ヒナの方が綺麗だよ」
「ひゃんっ!」
俺の顔が近付いてヒナが困惑している内に、そっと耳元で囁いてやった。
ヒナが小さく悲鳴をあげたのを聞いてさっと元の距離に戻る。
「ほら、これで満足かよ」
めちゃくちゃ恥ずかしいのを表に出さない様こらえながらヒナに訊ねる。
「……ま、まあまあかな」
「てめぇ……」
絶対照れ隠しにしか聞こえないヒナの厳しい評価に、つい眉間にしわが寄る。
本当にこいつ、可愛いけど可愛くねぇ。
「じぃ~~っ……」
「ん? ……うわっ!? 居たのかレイ!!」
そんなやり取りをいつの間にか間近で見ていたレイは、何か言いたげな顔で再び手すりを掴んだ。
「わーっ! 綺麗な景色ー!!」
「……?」
「景色綺麗ー!!」
「あの、レイ?」
「きれいだなーーーーーーーーー!!!!!!!!」
「………………」
ああもう、わかったよ。
贔屓すんのは良くないもんなーそうだよなー。
こうなりゃとことん相手してやるしかねえか畜生。
「……レイの方が綺麗だよ」
「んー! 顎クイってやって!!」
「ぐっ……こいつ」
レイのお望み通り、その小さな顎を俺の方へ向けて再度言い放ってやる。
「レイの方が綺麗だよ!」
「ん!」
二度目にしてようやくレイは満足してくれた。
しかし今度は再び訝し気な視線を向けるものが居て。
「じぃっ……」
「今度はなんだ!?」
「レイカさんには二回言ったね」
「だぁ~~もぉ~~!!」
結局その後も何かと理由を着けて俺にキザな事を言わせたがる二人によって、それぞれ五回ずつぐらい恥ずかしいセリフを言わされる羽目になった。
非常に辛く苦しい時間ではあったのだが、何か言われる度に可愛い反応をしてくれた事だけは収穫だったかもしれない。
本当にもうごめんだが。
◇
観光地巡りも終え、旅館に戻って来た俺達は温泉を堪能した。
女湯の方から本当に紗霧ちゃんの声が聞こえてこないかヒヤヒヤしたが、流石にそこまで命知らずではない様で安心した。
っていうか一般客も居るのに普通に迷惑になるからな。
で、男女に別れてしまえば特にこれと言ったイベントも起こる訳はなく。
「あぁ~……いい風呂だった……」
俺は売店でキンキンに冷えたコーヒー牛乳を片手に幸せを噛み締めていた。
「フルーツ牛乳も捨て難かったが、やっぱコーヒー牛乳だなぁ……」
果物の酸味や甘味を味わえるフルーツ牛乳もかなり魅力的だった。
しかし、俺のコーヒーに対する情熱が気付けばコーヒー牛乳を手に取っていたのだ。
「……ぷはー!」
火照った身体に染み渡るぜ。
「一人で楽しそうね」
「お、お前らも風呂あがったか」
「カイトおまたせ~!」
ヒナとレイも入浴を終えた様で、旅館で貸し出している浴衣に身を包んで俺の前に現れた。
「…………おぉ」
「カイト? どうしたのよ」
二人の姿に見惚れていると、ヒナが俺の顔を覗き込んできた。
ヒナもレイも風呂上がりの姿と言うのは見た事がある。
しかし旅館で浴衣姿と言うオプションが追加されると、これまた違った魅力が引き出されるようだ。
二人共美人な事に変わりは無いのだが、浴衣なのも相まって大人っぽいと言うか、セクシーと言うか。
「二人共綺麗だなって思ってさ」
「「っ!?」」
無理やり言わされたさっきとは違う、本心から出た言葉を二人に伝えた。
「ふ、ふーん。あっそ……」
「えへへ~、カイトもかっこいいよ~?」
「おう、そうか?」
俺も浴衣を着る機会はあまりない。かっこいいと褒められるのは素直に嬉しかった。
「カイトはコーヒー牛乳?」
「うむ。やっぱこれだな」
「へぇ……」
ヒナが何か言いたげな目で俺のコーヒー牛乳を見つめている。
「飲みたいなら自分で買え」
「まだ何も言ってないんですけど?」
「どうせ俺の飲みかけ寄越せとか言うつもりだろ。コーヒーも飲めねえくせに」
「むぅ……」
図星だったか、ヒナは不満そうに頬を膨らませていた。
以前のデートの時はしてやられたからな、何度も同じ手は食わん。
「カイト! あたしフルーツ牛乳が良い!」
「いいぞ、買ってきな」
「ありがと!」
一方素直に欲しいとねだるレイには快く小銭を握らせてやった。
それを見て余計ふくれっ面になるヒナ。
「……んだよ」
「レイカさんに甘いなーって思って」
「仕方ねえだろ、レイ金持ってねえんだから」
「そこじゃなくて……ふんだ、いいもん」
そう言うとヒナは俺に向かって手を伸ばしてきた。
「むにっ……?」
そのまま俺の唇にうっすらと残るコーヒー牛乳を拭き取る様に自らの親指を滑らせた。
「……ちゅっ」
「ばっ!!?」
親指はそのままヒナの唇に吸い寄せられ、小さな音を立てて舐め取られてしまった。
「……コーヒー牛乳くらいなら、私でも飲めるんですけど?」
「それっぽっちで何がわかるんだよ」
「じゃあ、一口ちょうだいよ」
「……やらん」
「けーち。でももういいもんね」
「チッ……」
ヒナは満足したのか、一足先に売店コーナーから出て行ってしまった。
「あれ? ヒナタさんどうしたの?」
「……レイ、お前は純粋なままで居てくれ」
「うん! ……うん?」
フルーツ牛乳片手にキョトンとしているレイの頭をわしゃわしゃと撫でた。
いや、まあ、レイもレイで内心ヤバい欲望抱えてそうなのは前の家デートで判明したんだけど。
ヒナみたいに小細工したり不意打ちかまして来ないだけ精神衛生上はレイの方が優しかった。
「さて、俺達も部屋に戻るか」
「はーい!」
ヒナを追いかけるようにして俺とレイも売店を後にした。
(……え、待てよ?)
数歩歩いた所で、今更過ぎる事実に気が付いた。
俺は今回、バカ三人の気ぶりのせいでヒナとレイと同じ部屋になってしまった。
昼間はそこまで意識していなかったが、浴衣姿の二人を見ていたら改めて思い知ってしまった。
(俺……この二人と一緒に寝るの……!?)
浴衣姿のヒナとレイは非情に魅力的だった。
可愛いし綺麗だし、色っぽかった。
加えて浴衣姿と言う事は、動けば簡単にはだけてしまう事もある。
そんな二人と同じ部屋に今から戻って、眠る準備をする。
「カイト、ぼーっとしてる?」
「っ!?」
「貧血気味? 大丈夫?」
急に足を止めた俺を心配して今度はレイが覗き込んでくる。
言った傍からレイの浴衣は胸元がはだけ始めていた。
ヒナより元気に動くし、なにより引っかかるものがヒナより無いから簡単にずれてしまうんだろうきっと。
「だっ、大丈夫大丈夫!!」
慌ててレイから視線を逸らす。
きっと浴衣の下には何もつけていない。危うく見えてしまう所だった。
(これが二晩も……耐えられるのか、俺ーッ!?)
その後の足取りは、戦いに赴く戦士の様に重かった。
それでも俺は歩みを止めなかった。
様々な事に目を瞑れば、この先にあるのは男にとっての楽園だから。
天国となるか地獄となるか、この目で確かめようではないか。




