第十三話【夏休み開幕、二回戦開幕】
夏本番。
連日の猛暑や照り付ける日差しに焼かれながら、毎年毎年人々は抗っている。
だがそれでも、俺達学生はこの夏の到来を喜ばずにはいられなかった。
理由なんて、たった一つだけで充分なのだ。
「「「夏休みだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」」」
学期末の終業式も終わり、最後のホームルームを済ませた担任が教室から離れると同時に、俺とアユとミノは肩を寄せ合って高らかに叫んだ。
「明日から夏休みか……やりたい事が山程あるぜ!」
「今年のサマーフェスにはBBBも出るし、今回こそチケット当たってくれよ〜!」
「僕は二人みたいに予定があるわけじゃないけど、やっぱり夏休みってなるとテンション上がるね!」
明日からの毎日を想像してワクワクが止まらない俺、前回ライブに行けなかった悔しさを繰り返さない様必死に祈るアユ、いつもなら落ち着いて俺達をたしなめるミノまではしゃいでいた。
それ程までに夏休みという言葉の魅力は絶大なのだ。
「それにカイトはこの夏休み、忙しくなるんじゃねえか〜?」
「んあ? なんで?」
と思っていたら、三人で肩を組んでいたはずが俺一人外され、アユとミノが俺を見ながらほくそ笑んでいた。
「そりゃあもう、ねえ?」
アユとミノは互いに分かっている様子で、顔を見合わせてヘラヘラしていた。
ミノが俺の耳元に寄って小声で囁く。
「この前のスーパーでの二人、カイトの事取り合ってるんでしょ?」
「んなっ!? ……んでわかるんだよ」
「なんでって言われてもねぇ」
「あんなん子供が見ても丸わかりだっつの」
さっきまで有頂天だったテンションが徐々に平常時まで落ちてくる。
以前スーパーの出来事を二人に追及された時は必死に誤魔化したと言うのに。
「しかもあれ、片方委員長でしょ?」
「……そうだよ」
「委員長侍らせてるだけでも結構敵作りそうだけどな」
「侍らせてねえよ!!」
断じて侍らせてなんていない。
弁当も作らせ、面倒も見させ、この前添い寝してたけど決して。
「もう一人の人も凄く美人だったよね」
「なー。俺どっかで見た事ある気がすんだけどなぁ……」
「気のせいだろ! な!」
もう一人。おそらくレイの事を言っているのであろう。
アユが記憶を辿るのを必死に遮る。窓の外で飛んでたのを思い出されたら色々と面倒だ。
って言うかあんだけ衝撃的なシーンを忘れるものだろうか。美化しているのか?
「あいつは、えっと……」
二人を納得させる為にレイの事を説明しようとするが、丁度いい言い訳が思いつかない。
どうしたものか、あんまり長引かせると不審に思われるのだが。
「カイトの従兄妹だそうですよ」
「どわーっ!?」
頭を悩ませていると、背後から俺の代わりに説明する声が聞こえた。
驚いてひっくり返ってしまった。
「お。噂をすれば」
「よっ、委員長。カイトに用事か?」
「はい。カイトに伝えておかなきゃいけない事があって」
「……なんだよ」
情けなく床に尻もちをつきながら、ヒナの事を見上げる。
どうしてわざわざアユ達と居る時に顔を出すんだ。別に後でもいいだろうに。
ヒナが来た時のこいつらの顔と来たら、ムカつく事この上ないんだから。
「じゃあ僕達は退散しようか」
「邪魔したら悪いしなー」
「あっ! 待てや!!」
「集まる時は連絡すっからな~」
言わんこっちゃない。アユとミノの二人は俺を見下ろしてヘラヘラ笑いながら教室を出て行ってしまった。
余計なお世話と言うか、ヒナとの会話を聞かれなくて済んだと喜ぶ所か。
ヒナが俺の世話を焼いている様は、どこを切り取られてもからかわれる材料になり得るからな。
「ったく……んで、どうした?」
「夏休み中の事なんだけどね、カイトにお願いしたい事があって」
「お願い?」
俺と二人になって口調も崩れたヒナが、珍しくお願いなんて言葉を口にした。
今までやろうと決めた事は何を言っても強行してきたのに。
「ほら、私って毎日カイトのお弁当作ってたじゃない? でも長期休暇に入ったらそれも必要なくなるなって思って」
「あー、確かにそうだな」
当然の事ではあるが、学校が無い日は家で昼食を取る。作った弁当を家の中で食う事は珍しいだろう。
ヒナの手料理が食べられないのは残念だが、ヒナも大変だっただろうし仕方ないだろう。
「まあヒナも夏休みの間はゆっくりしてくれって事で……」
「だからね? 休みの間、何度もカイトの家にお邪魔する事になると思うの」
「…………はい?」
ヒナがわけのわからない事を言った気がした。
念のために聞き返してみる。
「えっと……なんで?」
「お弁当の代わりに、カイトの家で料理を振舞おうと思って」
「……マジで言ってる?」
ヒナの申し出に内心複雑な気分だった。
休みでもヒナの手料理が食えるのはすごくありがたい。ヒナの料理は美味いし、自分で毎日用意するのも大変だから作ってくれるのは非常にありがたかった。
だがそれ以上に、俺の家にはレイが居るのだ。ヒナにとっては恋敵であり、嫌いな吸血霊鬼のレイが。
流石に一触即発と言う事にはならないだろうが、どうしたって空気は悪くなりそうだ。
「ダメ?」
「ダメじゃねーけどさぁ……ほら、ヒナは知ってるだろ?
一応確認の為にヒナに聞き返してみる。
レイが居る事を失念しているとも思えないが。
「わかってるわよ、レイカさんの事でしょ? むしろ、だからお邪魔しようって思ったの」
「まさか本当にレイの邪魔をする気じゃ……」
「違うわよ! 言葉の綾よ今のは!!」
俺の懸念を慌てて否定すると、ヒナはすこしもじもじしながら、声のトーンを落として打ち明けた。
「……こうでもしないと、カイトの事独り占めにされちゃうから……やだなぁって」
「…………」
俯きがちにそう語るヒナの顔は少し赤く染まっていて。
俺を見上げる瞳は若干潤んでいるようにも思えて。
「……カイト? どこ見てるの?」
「…………壁」
不意打ちでいじらしい事を言われた俺も、多分似たような顔をしてるんだろうなあと思った。
そんな緩んだ顔を見せる訳にはいかないので必死に顔を逸らした。
「……いいよ、来ても」
「本当!?」
「この前言ったしな、どっちか片方だけ贔屓するのも違うなって」
俺の許可を貰ったヒナは晴れた空の様に笑顔を浮かべた。
「じゃあ、行く日の朝に連絡するね!」
「おう。無理はしなくていいからな」
俺の心配の言葉は届いていたかわからない。ヒナは満足した様子で駆けて行ってしまったからだ。
「…………侍らせてる、か」
確かにそう見えてもおかしくないなあと思った。
◇
と言う訳で。
「いらっしゃい、ヒナ」
「うん、お邪魔します」
翌日。夏休み一日目からヒナに連絡を貰い、あっという間に私服姿のヒナが我が家にやってきた。
「……ほう」
「えっ……どうかした? そんなじろじろ見て」
「いやあ? たださ……」
そう、私服姿のヒナだ。
学校じゃないから校則をガン無視したバチバチのメイク。
制服の時はほとんど露出なんて無かったのに、肩までガッツリ開いてる服。
「俺が見た事あるヒナじゃねえなぁって思ってさ」
ヒナぐらい長い付き合いにもなれば、たまにではあるが学校外で会う事もあった。
その時の私服はもっと普通だったはずなんだが。
「何でそんな気合入ってんの?」
「カイト、本気で言ってないよね?」
「ひっ! 怖い!」
とぼけたふりをしてからかってみた途端、ヒナの鋭い眼光に睨みつけられてしまった。
「冗談だよ! 似合ってる。可愛いよ」
「……ふん、じゃあ許してあげる。ばーか」
言葉だけ聞けばまだ少し怒っているようにも聞こえるが、ヒナの少しおどけた言い方から既に怒気は感じなかった。
ヒナはいつも良い反応をするから、すぐからかいたくなってしまう。
「ずるい!」
「ぶはっ!?」
ヒナをからかって遊んでいると、急に視界がピンクの闇に包まれた。
「なっ、なんだぁ!?」
慌てて目の前を覆っているピンクを掻き分けると、不機嫌そうなレイが天井からぶら下がっていた。いや、天井を足場に浮いているのか。
本当に髪長いなお前。
「あたしには全然可愛いって言ってくれないのに!」
「え!? いや別にそんな事ないだろ……あれ?」
抗議するように拗ねるレイの言葉に俺は否定を示そうとするが、自分の記憶を遡ってみても確かにほとんど言った事がないかもしれない。
初めて会った時とか、可愛い顔してるなとはいつも思っていたが、面と向かって言った事ってもしかしてないのか?
「ふふん。それはカイトにとって、レイカさんより私の方が可愛いって事じゃないかしら?」
「やだーーっ!! カイト!! あたしにも可愛いって言って!!」
「やだってお前な……」
勝ち誇った顔でヒナがレイを煽る煽る。
わかってるさ。レイもヒナと同じく俺の事が好きだと言ってくれた。
そんな俺にヒナだけが可愛いと言われていたら気が気じゃないだろう。
「だってお前、素直に褒めたら調子乗りそうだし、いつもテンション高いからそういう事言う空気にならねえんだって」
「でもヒナタさんも褒められて調子に乗ってる!!」
「それはレイの言う通りだ」
「ちょっと!?」
「ほらレイ、降りて来い」
急に刺されて困惑するヒナをよそに、レイの手を引いて抱き抱えキャッチする。
そして若干拗ねているレイの頭を撫でながら、普段思っていた事を伝えた。
「……何度も言わねえからよく聞けよ」
「うん! わくわく……」
「……レイ、俺は初めてお前を見た時からずっと可愛いと思ってる。家に誘ったのだって最初はレイの顔が可愛すぎたから。ドストライクだったからだ。可愛いだけじゃなくて俺の好みど真ん中の顔をしてた」
「……カイト?」
「普段からコロコロ表情が変わるのも見てて飽きないし、血を吸われてる時なんて毎日目の前まで顔が迫るから緊張が顔に出てないかヒヤヒヤしてるんだ」
「も、もういいかな? あたしが思ってたよりいっぱい来てちょっと心の準備が……」
「告白された時なんか本当に心臓が飛び出すかと思ったんだぞ。好みど真ん中の仲の良い美少女が俺の前で目閉じて俺を待ってたんだから、あれは本当にあと一歩で理性が崩壊する所で」
「かいと! もうやめてかいと!! はずかしいから!! もういいから!!!」
まだまだレイに思っていた言葉は山ほどあるのだが、顔を真っ赤にしながら涙目になったレイに全身を揺らされてしまい、中断せざるをえなかった。
「なんだよ、言えって言ったのはレイだろ」
「サラッとでよかった!! さっきのヒナタさんみたいに一言可愛いって言ってくれたら満足したのに!! コップ一杯のお水が欲しいって言ったらダムが壊れた!!!」
甘いなレイ。お前が今決壊したダムの水だと思っていたものはほんの一部に過ぎないんだぞ。
その気になればお前を海に放り込んでやる事だってできるんだからな。
「じぃっ……」
「ハッ!?」
レイを褒めてる間に変なテンションになり、すっかりヒナを置いてけぼりにしてしまった事を思い出した。
主に本人からの猛抗議の視線によって。
「カイト、レイカさんの事そんなに可愛いって思ってたんだ……」
「確かに今言った言葉に偽りはないが……」
「私より可愛いって思ってるんだね……」
「あ、安心しろヒナ! 身体はヒナの方が抱き心地良かったぞ!!」
「最悪!! 零点の返答!!」
宥める為に言ったはずの言葉が、かえってヒナの怒りを加速させてしまった。両手で胸を抱えて俺を睨むヒナ。
おかしいな、レイの顔が好きって言った後ならそこまで否定されないと思っていたのに。
「……まったく」
「おっ、おっ?」
どうやら俺の考えはあながち的外れでも無かったみたいだ。
まんざらでもなさそうにヒナは俺に近付き、今褒め称えた身体をギュッと押し付けてきた。
「……そんな言葉で喜んでくれるの、私ぐらいなんだからね」
「喜んだんだ……」
本当はまあ怒られるだろうなと思ってたんだが。
「ずるい! あたしも!!」
「ぐえっ」
前からのヒナの柔らかさを堪能していると、背中にドンと衝撃が走る。
俺に抱き着くヒナを見ていたレイが、背中から挟み込むように抱き着いてきた。
「ちょっと! カイト苦しそうでしょ! レイカさんはいつも抱き着いてるんだからいいでしょ!?」
「抱き着いてないもーん。血を貰う時に膝に乗せてもらってるだけだもーん」
「世間ではその距離は抱き着いてる内に入るのよ!!」
前からは美少女。後ろからも美少女。美少女サンドイッチだ。
加えてその二人が俺を取り合って言い争っている。
ああ、俺はなんて幸せ者なんだろうか。
「シャーッ!」
「がるるるる……」
「…………」
威嚇し合う様子は美少女と言うより猛獣だが。
俺、食われないよな?
◇
「はいどうぞ。と言ってもお昼だからそこまで豪勢じゃないけど」
「「おぉ~~っ」」
二人の争いもひと段落し、ヒナお手製チャーハンが三人分、それぞれの前に並べられた。
「なーに言ってんだ! お昼にチャーハンだなんてウチじゃ豪勢も豪勢だぜ!!」
「ヒナタさん、あたしの分もいいの?」
「当然でしょ」
俺の分はわかるとして、レイは自分の分のチャーハンまで用意してくれたヒナを不思議そうに見つめていた。
ヒナはエプロンを外し、俺達と同じ様に食卓に着きながら説明した。
「チャーハンなら一度に大勢の分作れるし、貴女には少し負い目もあるから……それに! いくら恋敵だからって目の前で貴女の分だけ省いたら私が性格悪いみたいに見えるでしょ!? ついでよついで!!」
一瞬本音が見え隠れした様な気もするが、最後はそれを誤魔化す様に強い言葉で蓋をした。
ヒナってこんな絵に描いたようなツンデレだっけと思っていたが、俺への対応を思い返してみれば確かにヒナはツンデレ属性持ちだったかもしれない。
最近はヒナのデレの部分しか見ないものだから、意識から外れていたのだろうか。
「そっか……ありがとヒナタさん! えへへ」
「っ……!?」
素直になれないヒナとは対照的に、素直に感謝を伝えるレイにヒナは若干たじろいていた。
まさか恋敵からこんな純真無垢な顔を向けられると思っていなかったのだろう。
一度は殺意と見紛う程の敵意を向けた相手だからなおさらだ。
「どうした? お前もレイが可愛く見えたか?」
「くっ……別に可愛い事は否定してないわよ」
「素直になれないお前も結構可愛いけどな」
「もう! いいから二人共、冷める前に早く食べなさいよ!!」
からかうチャンスを見付けてすかさずからかっていたらヒナがぷんすこし始めてしまったので、程々の所で切り上げる。
俺とレイはスプーンを手に持ち、両手を合わせて元気よく声を上げた。
「「いただきまーす!!」」
「……いただきます」
◇
ヒナの作ったチャーハンはそれはもう美味で、俺とレイで何度も「うまい!」「おいしい!」と連呼した。
その度にヒナは恥ずかしそうにしていたが、これは料理人が受け取るべき正当な報酬なのだから素直に受け取ってもらうしかない。
「洗い物手伝うよ」
俺達三人分の皿とスプーンを持ってキッチンに向かおうとするヒナを後ろから追いかけた。
「たったこれだけよ? 別に一人で充分よ」
「まあまあそう言うなって」
ヒナの言う通り、今回はチャーハンを三人で食べたのみであり、一人で洗い物をしたとしても大した時間はかからないだろう。
それでもヒナを追いかけたのには理由があった。
俺は洗い物を始めたヒナに近付き、レイには聞こえないように小声で囁いた。
「……八月二日はちゃんと空けてあっから」
「っ!?!?!?」
ヒナの手からチャポンと音を立ててスプーンが水桶に落ちる。
「お前も今日はそれが本題だったんじゃねえの?」
「……カイトってズルいよね」
「俺がただ美少女二人に尽くしてもらって喜んでるだけだと思ってたのか?」
「まあ、少し」
「てめぇ……」
ヒナの辛辣な物言いに物申したくなる気持ちを抑えて、再度小声で囁く。
「それに毎年祝ってんだから覚えてるに決まってんだろ」
「……そうだけど」
「誕生日、どこか出掛けたいんじゃねえかなって」
そう、八月二日はヒナの誕生日だ。
夏休み真っ最中の誕生日は学校で祝われる事は無く、ヒナの誕生日を知っている者は意外と少ない。
もちろん幼馴染の俺は知っている訳だが。
「去年までとは事情が違うからな。それにこういうのは俺から誘われた方がお前も喜んでくれるかと思ったんだけど……あれ、もしかして外したか……!?」
ヒナは俺の事が好きだから俺からデートに誘われたら喜ぶ。
なんだか当然の様にそう考えていたのだが、もしかしてコレは俺の自意識過剰だっただろうか。
言ってから不安になる俺。
「いやすまん! もし家族と予定とか入ってたら全然断ってくれても……」
「……言質とったからね」
「お?」
しばらく無言だったから困らせているのかと思ったが、こちらを向いたヒナの表情はとても柔和で、嬉しそうに微笑んでいた。
「プレゼント、ちゃんと用意しておいてよね」
「お、おう!」
よかった、外してはいなかったようだ。
お互い顔を見合わせて、ヒナは微笑み、俺は焦りながらも頷き、レイはじっと睨んでいた。
「…………?」
レイはじっと睨んでいた?
「でーといくんだ」
「うわぁ!? レ、レイ!? 何してんだ!!」
「ひなたさんとかいと、でーといくんだ」
レイはふよふよと浮かんで、足音ひとつ立てずに俺のそばに迫っていた。
くそう、静かにしていると思ったのにこんな近くに居ただなんて全く気付かなかった。
吸血霊鬼の霊の部分を初めて強く感じた気がする。
「あたしひとりるすばんで、ひなたさんとでーとなんだ」
「あーいやこれは違くてだな? ヒナは誕生日が近いから、お祝いの計画を立てていてだな?」
頬を膨らませながら拗ねるレイをなんとかなだめようとするも、うまい言葉が見つからない。
レイの誕生日は知らないし、聞いたところで近くなければ誕生日祝いとしては意味がない。
とは言え誕生日でもないのにデートに誘ったら、今さっき誕生日だからと誘われたヒナがどう思うか。
「……いいんじゃない? 誘ってあげなよ」
「え?」
「ふぇ?」
そう思っていたが、なんと先に提案したのはヒナの方だった。
「それにそれぞれデートした方が、カイトにとってのより良いデートを比べられて良いんじゃない?」
「い、いや、お前の誕生日まで争わなくても……」
「それはそれ、これはこれよ」
慌てる俺をよそに、ヒナはレイを指差して宣言した。
「この夏休み、お互いにカイトとデートして自分の魅力を再認識してもらうって言うのはどうかしら?」
「……やる! あたしもカイトに喜んでもらう!!」
あれよあれよのままに、ヒナからの第二の宣戦布告がレイに受理されてしまった。
「先に誘われたのは私だから先手は私がもらうけど、もしカイトが私を選んでレイカさんの番が来なかったらごめんなさいね」
「カイトはあたしともちゃんとデートしてくれるから大丈夫だもん! 顔はあたしの方が好きって言ってくれたし!!」
「おい、やめろ」
「そ、それを言ったら私の方が身体は好きって言ってくれたんだから! こここ、今回のデートでそれを証明……」
「しねえしさせねえよ!? 何言ってるかわかってんのかお前!?」
「か、身体で証明!?」
「しねえってば!!」
その後もなんやかんやあって、八月二日はヒナとデート。後日レイともデートと言う予定が決まった。
色々考える事もあるが、ひとまずはヒナの誕生日プレゼントをどうするかが最重要課題か。
自分で言いだした事ではあるが、女の子二人とデートの約束が入ってしまった。
人生最高の夏休みが決定した瞬間だった。




