32 『新人類』
どうぞよろしくお願いします。
黒須ちゃんは愛理さんと一緒に過ごすことになった。それなら安心。
早乙女中尉はそれどこじゃないらしいし、敏夫もその助手みたいな感じらしい。いろいろ夜のうちにやらなきゃいけないそうで、明日はタケイクリニックへの査察もあるそうだ。
うーん、あのちりちりした感じはハヤトによると魔物の気配らしいから、できるだけ早く対処した方がいいけれど、なんか心配だ。
ハヤトは私に合わせて休みを貰えたというか勝ち取ったというか、新婚の権利というか……、夜休みを貰えたそうだ。
「何しろ、初夜ですもんねー!」
愛理さんが笑って言うから!!
敏夫がまたダメージ喰らったみたいな表情をしてた。
確かに今日結婚したのだから、初夜っていうのか?
私とハヤトは苦笑しながら、ハヤトの部屋に入り、ほっとした。
やっとふたりっきりだ。
促されてベッドに腰かける。
「たくさん話したいことがあって……」
「何?」
「えっと……」
どれから話したらいいんだ?
「……父が『新人類』と呼んでた、不思議な力を持つ若者達のこと……、知ってるよね?」
「ああ、リアも俺もそうじゃないかって」
「もしかしてダンジョンがその力に大きく関わってないかな?」
「……うん、中佐の説だとそうだろう?」
「えっと、なんて言うか……。
うん、力を持っている人がダンジョンのそばにいると力が強くなるみたいな!」
「……あ、まあ、言われてみれば……、そうかな?」
「でさ、それまでハヤトも私も魔物に関わったことはほとんどない」
「リアはそうかもしれないけれど、俺は魔物と戦ってたよ」
「でもさ、戦う前から、魔物に気づく感覚って感じてたんじゃない?」
「戦う前から……、気配は少し感じてたところがあったといえば……。確かに人の悪意とかそういうものには敏感な子どもだったかも……」
私は息を整えてから、一気に言った。
「私の母はダンジョンのそばでないと生きていけなかった人じゃないかと思うの」
「……ん?」
「つまり、ダンジョンの理で生きていた人。
私はその力を受け継いでいて、でも父の血も受け継いでいるから、ダンジョンを離れても生きていける。
でも、ダンジョンのそばに来てから、母の方のその、力が強くなっていることに気がついた……」
「リアの力って、治癒率が高くなるとか……」
私は頷いた。
「今日、気がついた。
私が治療に関わったり、見守りして、こう治っていったらいいと思ったりする患者の外傷が私の目の前で治っていくの……」
ハヤトが少し顔を強張らせた。
「それは……、すごいな」
「医師にも治るのが早過ぎると言われた。
それで思い出したの。
母は私が小さい時、小さな傷やちょっと体調不良とか、手のひらで撫でたり抱っこしたりして治してくれた人だった。
ギリシャでそうで。
日本に来てからは寝付くことが多くなり、そういうこともできなくなった。
武井先生が『なんでだ!?』と言うくらい薬がうまく効かなくて。
その時『これが運命だ』とか『ダンジョン』とか何か言ってる記憶はあるんだけど、はっきりとは思い出せない」
「つまり?」
「母はダンジョンの世界から来た人なんじゃないかって」
「魔物ではなく、人?」
「人がいたって言ってたじゃない」
「ああ、人型の魔物。でも、人に見えた」
「ダンジョンがある世界の人が地球で生きていこうとしたら?
自分達の生存に必要なダンジョンの世界の理を地球に持ち込んで、地球の人類に交わって生きていこうとしたら?」
読んで下さり、ありがとうございます。




