29 知っているはずなのに
どうぞよろしくお願いします。
「早瀬アレクサンドリア医療士だね。
今回行方がわからなくなっている早瀬美咲医療士の従姉妹だとか。
彼女から何か連絡は?」
小池大佐に言われるけども……。
「従姉妹同士ではありますが、関りはほとんどありません。連絡先も知りません。
医療班でも班が違うので、そちらの連絡も繋がっていませんし」
本当は黒須ちゃんにコンタクトが来てるけど、言ってもいいのかだし。
小池大佐、美咲の……、秋馬叔父さんとは知り合いらしいから、美咲と私のこともある程度は知っているはず。
なのに、わざとあまり知らない感じにしているような感じだ。
「早瀬中佐……、亡くなって准将、娘さんとして、何か彼から聞いていることは?」
「……父から聞いた話ですか?
研究については『早瀬ファイル』として発表してますし……。
他に……。話すことは普通の家族と同じ、変わらないと思います。
ダンジョンのことも聞いたことはありますが、苦労したとか大変だったとか、大雑把というか抽象的な話が多くて、防衛隊員になって、いろいろ詳しく知って驚いているところです」
「そうか……。
父上は優秀な防衛隊の隊員であり、研究者だった」
「はい、アラスカに来て、父のファンだという外国の方に会って驚きました!」
私の笑顔に小池大佐も微笑んだ。
なんかよくわからないが、疑念……は晴らせたかな?
「君は本部の……、大岡大尉の婚約者だとか?」
私が答えようとすると井狩総班長が言ってくれた。
「もう結婚しました」
「結婚!?」
驚く小池大佐。
「だって、君は早瀬製薬の研究者と結婚するのではなかったのかね?」
ほら、知ってるじゃん……。
「叔父はそのつもりだったようですけど。
私は何も言われてませんでしたし、そのつもりはなく、防衛隊に入団して家と会社を離れたことをきっかけに、自立して、そちらとは縁を切ることを選びました」
「自立と言いながら、結婚かね?」
ああ、そういう見方もあるかもね。
私は苦笑した。
「自立と結婚は相反するものではないです。
私の場合、自立することで自分で望んだ結婚をできた。そんな風に私は感じています。
……小池大佐は、私が最近まで知らなかった叔父が決めた結婚話、よくご存じでしたね?」
「う、いや、早瀬製薬の研究者!
彼は年に一回、このダンジョンまで来てくれていたからね」
「染野さんですね。
あ、染野さんはこの日本街のタケイクリニックの武井先生と一緒に研究されてたと!」
「武井ね。そうだな。でも彼は……」
「はい、父の古くからの友人で、私も6歳ぐらいまでお世話になりました。
今回、アラスカに来ることになり、調べたら、今はアラスカの日本人街でクリニックを開業していると知って。
でも父から聞いたことがないので、父は知らなかったのかもしれません。
今回、お会いして、懐かしかったです」
「……会ったのか?」
「はい」
小池大佐の目が、きゅーっと細められた。
読んで下さり、ありがとうございます。
自立と結婚。
確かに結婚に逃げたとか、依存とか言われたら……、ちょっと嫌だよな。




