26 ダンジョンの理の世界
どうぞよろしくお願いします。
母はダンジョンから生きる力を得ていたのでは?
それは、新人類というより、ダンジョンの理の中で生きていた人類、ということ!?
小さな私が転んで、手のひらを擦りむいて泣いていて。
母が傷を洗ってくれて、母の手がそっと触れるか触れないかぐらいで私の傷を覆う。
少しすると……、私の手のひらはきれいに治っていて。
思い出した。
ギリシャでは、小さな傷は、母がそうやって治してくれてて、それが私には当たり前で!
でも、日本に来て、母が弱って、そういう機会もなくなり……。
手のひらで覆うだけで傷が治るなんてそんなことはありえないと、私はだんだん……、それまでのことを無意識に封印するというか、勘違いというか……、そう思い込んで。
母は何者?
父には黙っていた!?
だから、ギリシャダンジョンが消えて、日本に来たことでどんどん衰弱して……。
もし父が知っていれば、アラスカの方に連れて行っただろう。
でも、母は日本にいることを選んだ。
……ダンジョンのそばにいることで、私の中で、その母譲りの部分の力が強くなっている!?
お母さん!! お父さん!! どういうこと!?
男性の足はほぼ治りかけていて。治るのが早過ぎる……。
その時、私は視線を感じてはっとして振り返る。
保存再生治療機器の水槽部分に浸かっている身元不明の男性が目を開いて、こちらを見ていた。
私と同じ濃い青の瞳。
何か言いたそうな、目の表情が……。
ドアが開き井狩総班長が医師と入室してきて、治療の状態を確認していく。
全身治療の男性はもう目を閉じていた。
そして、私がそばにいた足の怪我の男性はもう湿潤治療に切り替えて大丈夫となり、普通の病室に移ることになった。
「驚異的な再生スピードだ」
医師が首を捻る。
「……アレク医療士だったね。
君が治療すると治癒率が上がるという報告は知っていたが、ここまでとは!
何か、コツなどあるのかい?」
「……コツというか、このように治るといいなと願うような?」
「念のようなものか! さすが早瀬中佐のお嬢さんだ」
医師は笑って……。
でも、私は笑えなくて。
「午後は次の医療士が入れます。アレク医療士はもう宿舎に戻って。
長い時間、ありがとう」
井狩総班長の言葉に思い出した。
そうだった。ハヤトが迎えに来るんだ!!
私は宿舎に戻り、シャワーを浴びてから、私服に着替え、スマホを見た。
日本の本部の万理さんから『結婚、おめでとう!!』とメッセージが来ていて。
ああ、身分証などの作成の依頼がされたのかな、と思い『ありがとうございます。手続きよろしくお願いします』と打ち返した。
ああ……、ハヤトに打ち明けても大丈夫だろうか?
母はなんで父に言わなかったのか!?
「お母さん、どういうことなの?」
その時、ハヤトが私と同じ感覚を武井先生の所で感じたと教えてくれたことを思い出した。
もしかして、ハヤトも……!?
でも、ハヤトのお母さんは日本で生きてる。お父さんはダンジョンで戦死……。うん?
これはちゃんと話して、話さなければいけないことだ。
私のことを気持ち悪いと思われたって、ちゃんと話し合わねばならないことだ。
私は決心した。
ハヤトに話して……、そしてこの力を、どう使ったらいいか考えよう。
読んで下さり、ありがとうございます。




