20 報告
どうぞよろしくお願いします。
お父さん……。
わからないことが多いまま、論文を『早瀬ファイル』を発表するべきではなかったかもしれない。
でも、ここまでわかったことを積み上げておくことが、この先の人達のためにも、この先の人達が続けて考えてくれればダンジョンの謎に到達できると考えたのかもしれない。
それでなくても、不幸な事故で、魔物と人間の急激な関りも起きてしまっていたから……、変な方向への舵取りを警戒しての発表だったのかもしれないね。
そう感じて、急ぐことがあったのかもしれない……。
第三師団の宿舎に到着すると、もう黒須ちゃんと牧野さんは病院に向かったという。
私も追いかけようとしたが、井狩総班長に報告を求められた。
原隊員は先に病院へ行っていると。
病院へは隣みたいなものだし、ひとりでも大丈夫。
井狩総班長の部屋で報告した。
「大岡大尉と相談した結果、私の名で婚姻届など出されたらとなり、先に大岡大尉と婚姻届を出しました」
「え?
婚姻届ということは、結婚ということ?」
「はい、籍というかデータベースだけ。
そうすれば『早瀬アレクサンドラ』はエラーになります」
「つまり『大岡アレクサンドラ』に?」
「はい」
「……それは思い切ったわね」
「ですよね」
「って人ごとみたいに。
でも、おめでとう。
そうなればいいなと思っていたから」
「ありがとうございます」
「そうね。エラー表示が出るなら、その時の早瀬医療士の居場所の特定も可能かもね」
「はい……、美咲は、利用されてる状態ですよね」
「早瀬医療士の方も勘違いというか、いろいろ利用しているけどね」
「でも、命を懸けるほどのことでは……。美咲はそんな深刻な事態だとは気づいていないみたいですけど……」
「心配?」
「……そうですね。
関わりたくないと思いながら、彼女が命を落とすなんて、それは嫌です」
「まあ、何があっても、それは早瀬美咲が選んだことよ。あなたが気にすることではない」
選んだこと……。そう思えたらどんなに楽か。
ハヤトのことを思った。
私は父が自分で治療を拒否したんだから、ハヤトのせいじゃないと思ったらいいと思っていたけど、ハヤトからしてみたらそこまで割り切れるものじゃないと。
美咲がもしこの事件で死んだりしたら、それはずっと私の心に刺さって残り続ける……。
自業自得とは言えない。
「病院へ行きます」
「ええ、気をつけて。
あなたの医療士としての力、期待してる。
私は早瀬医療士の連絡もあるので、今はここに残ります」
「はい、よろしくお願いします」
読んで下さり、ありがとうございます。




