18 攪乱
どうぞよろしくお願いします。
「うん、休んでて」
ハヤトがニコニコ顔でそう言ってから出て行った。
本部の方が確かに安全だと思っているのかも。
東京より、アラスカの現地の方が、私に対する圧というか嫌がらせというか、そういうのは少ない気がしていた。
医療士や衛生士達も心配されたほどでは……。美咲とのことがあったってのもあるのかも!?
まあ、特に前線の場合、父の、早瀬中佐のことが好意的に伝えられているからだろう。そして、父が治療を拒否したことはほとんど周知されていないから、普通の戦死と思われているし……。
ハヤトの部屋……。
私はベッドに座ってから、パタリとうつ伏せに上体を倒した。
うん、ハヤトの匂いがする。
私が帰りに街を歩いていたり、民間の乗り物を利用したりするよりはここにいる方が安心だと思ったんだろうな。私もハヤトのそばにいるのは安心する。
靴を脱いで、ベッドの上に上がり込む。
寝転がる。
ハヤトはいつもこの天井というか景色を見て寝ているのかー。
寝転がったまま、胸ポケットの防衛隊身分証を取り出してみる。
追記の『大岡アレクサンドリア』を見て、じわじわ結婚したんだ……と実感が湧いてきた。
まあ、日本に帰るまでは『早瀬アレクサンドリア』と『大岡アレクサンドリア』と両方使っている感じだろうけど……。
「えへへ、大岡アレクサンドリア……」
自分で言って、照れた。
大切に身分証をしまっておく。
スマホを取り出し、11時にアラームを設定して目を閉じた。
少し休ませてもらおう。
うとうとしていたら大きな声、人が廊下を走る音、ドアの開閉音などが響いて来て目が覚める。
なんだろう?
起き上がりスマホを見ると10時51分。なんかちょっと損した気分。
アラームを解除して、上着のポケットに入れると靴を履いて立ち上がる。
のどが渇いたな。ミニ冷蔵庫があって開けさせてもらうと封が切られてないミネラルウォーターのボトルが3本あった。
1本取り出すと開けて、そばにあるコップで飲んだ。
ふう。冷たい水がおいしい。目も完全に覚めた気がする。
開けたペットボトルは手前になるように冷蔵庫に戻し、コップも軽く拭いておいた。
よしっ!
私はドアを少し開けた。声が聞こえてくる。
『爆発が!』『住民の被害は?』『怪我人が多数出ているようだ』などの言葉が聞き取れ、慌ただしく人が動く音や気配がよりはっきりと感じられた。
怪我人!?
病院へ行かないと!!
慌てて椅子に掛けてあった防寒着を掴んで部屋を出ると下の階へ下りて一階の事務室に向かう。
ハヤトが事務室とエントランスの間のあたりで隊員と話をしていた。本部だから少尉以上の士官なのかも。
隊員が頷いて走って行く。
声かけて大丈そうなタイミング!
「大岡大尉!」
私は声を掛けて走り寄る。
「怪我人が出てるって?」
「ああ、早瀬医療士も見失った」
「えっ!? あんなにみんなで気をつけてたのに!?」
「ああ、でも大丈夫だ。スマホの位置情報と発信機が防寒具に仕込んである。
阿部医療士が最後まで一緒だったんだ。
待ち合わせの場所と時間、なかなかはっきりしなくて。
本人もはぐらかすように指示されてたのかもしれないな。
ピエールが現れた時、少し離れた場所で爆発が起きて、そこから避難してくる人達で現場はたちまち混乱したらしい。
状況を確認しようとしたら、早瀬医療士もピエールもいなくなっていたと」
「わざと?
こちらに接触することをわざと知らせるために手紙で連絡をしてきたのかも……」
「かもしれない。
どうあっても監視がついていることは予想していただろうし、な」
「となると、スマホは電源を切るか、捨てられるか?」
「ああ、発信機もどこまで生きるかだが……」
発信機のことだよな。
なんか美咲の命と被って感じてしまい……。
「ハヤトも出るの?」
「ああ、すぐにではないが、必要なら」
「……武井先生の方はどうなっているの?」
読んで下さり、どうもありがとうございます。




