10 新たな声掛け
どうぞよろしくお願いします。
私の言葉に振り向く武井先生。
「ああ」
「ここは街の人のためのクリニック?」
「ああ」
「父とはお会いしていたんですか?」
違和感。
武井先生はまた階段の方を向いた。
あれ、なんか……、若い頃の写真の姿、自分が6歳の時の記憶、一年半前の父の記憶……。
「リア?」
動かない私を見て、後ろからハヤトが緊張したように私の名を呼んだ。
「……染野さんはよくここに?」
私は大きな声で言った。
武井先生がまた振り返った。
「ああ、染野は時々来るよ。
今年もそろそろ来るんじゃないかな?
当番月には……。
来ると、アレクのことを話していたよ」
「……武井先生?
父とではなく、染野さんと研究を?」
「染野は私の弟子みたいなものでね」
私の何かが警告している。
気配というか、何か、身体が前に進むな、行くなとチリチリしたような。
ハヤトが私の腕を掴んだ。
「すみません!!
隊から呼び出しが!
また来ます!」
私はそのハヤトの言葉と触れてもらったことに安心できたのか動けるようになり「先生、ごめん!」と言って、ハヤトと回れ右して待合室を通り抜け、ビルの外に出た。
武井先生は追いかけては来なかった。
そのまま、少し遠ざかるように歩き……。
「大丈夫か? リア?」
ハヤトが心配そうに言って……。
私は呟いた。
「武井先生は染野さんと繋がっていたってことは……」
ハヤトはクリニックの方を振り返りながら、私を守るようにしてまた歩き出す。
「もしかしたら、ここが例の培養液の……」
「なんで……武井先生は……」
私は母の姿を思い出した。
日本へ来てから、だんだん弱って。
「もしかして、母の死にも何か?」
私は子どもの頃のことをもっと思い出そうとして、顔を顰めた。
大通りまで出ると「早瀬さん!! 大岡大尉!」と声を掛けられた。
あ、小野田さん! 黒須ちゃんも牧野さんもいる!
「どうして?」
「あ、ここの本屋、俺の行きつけで」
小野田さんが本屋を指差した。
私は無理に微笑んだ。
「本、いいですね!」
その時に「早瀬?」と声を掛けられる。
そちらを見ると、日本人……ぽいような? ん、でも、ちょっと私みたいに外国の血が入ってるっぽい?
「君は早瀬?
あれ、昨日の早瀬は?」
昨日の早瀬?
「昨日、休みで街にいたのも、早瀬です。
早瀬美咲ですよね?」
その男の人は首を振った。
「いや、早瀬アレクサンドリアと……、君は?」
黒須ちゃんが言った。
「何!?
またアレクのふりして、名前使ったとか!?」
その男の人はびっくりして叫んだ。
「早瀬が複数いるのかっ!?」
えっと……。複数いるって?
「今のところ、日本の防衛隊に早瀬は2人ですね。
昨日、お会いしたというのが早瀬美咲だと思います。
私は、早瀬ですが、早瀬アレクサンドリアです。
従姉妹同士で、なので、2人とも早瀬です」
「じゃ、早瀬冬馬の娘は?」
「……私ですが」
読んで下さり、ありがとうございます。




