1 現地到着
第二章スタートです。
どうぞよろしくお願いします。
「寒い……」
吹き曝しの風が冷たくて乾燥している。私は少ししか草が生えていない大地を歩いてからトトトトッと足踏みしながら、周囲を見回す。
うーん、広い。寒い。でも、空がとてもきれいだ。
制服は冬服。防寒具は愛理さんのアドバイスでフル装備申請してあったので、ちゃんと着こんで対応できている。これから春になる時期なのだが……。寒いよっ!
ここはアラスカの内陸部にあるアラスカダンジョンのために作られた空港。
日本からまず民間の飛行機を利用し(チャーター)アンカレッジまで飛んだ。そして一泊。
アンカレッジからは国際防衛隊の飛行機でこの空港まで、やっと到着した!
ダンジョンのために作られた飛行場。
このおかげでだいぶ物流や人的派遣は楽になったはず。
ギリシャダンジョンのコアが破壊される時、どこに新たなダンジョンが発生するかと各国は待機をしていたわけで。
そこまで世界がすぐに対応しようと待ち構えていたとしても、最初は大変だったろうと思う。
乗ってきた飛行機から見たダンジョン全景と周囲の街の様子を思い出す。
黒い大きな穴がダンジョン。
その周囲に緩衝地帯を設けながら、大きな監視所のような建物が間隔を取りながら並んでいた。
12棟あり、日本は1棟を受け持っている。
「アレク医療士!」
黒須衛生士が私を呼んだ!
「はーい!」
私は答えて戻るように駆け寄った。
私のペアは黒須ちゃんなんだ。
とりあえず、移動中は井狩総班長が美咲と組んでいる。
苦渋の決断。
美咲と黒須ちゃんを組ませたら……。
私と組ませたら……。
絶対に組んだ人が虐められる。いや、相手にしなくても、相当なダメージというかストレス抱えることはわかりきっている。いや、私はともかく、既に上司にまでそう思われてるってすごいな美咲。何したんだろう?
美咲はまだ早瀬製薬が大変なことになっていることを知らない。
なんか連絡がつかなくなったと思っているが、井狩総班長が『ダンジョンという機密へ派遣されるため』と説明してスマホを隊の物と交換させたそう。
小池大佐対策でもあるらしい。
でも、とばっちりを受けて黒須ちゃんと山野井くんもスマホ交換になっちゃったそうで……。
早瀬製薬の件はそこまでおおっぴらにはなってないので(本部の方で調査中。まだ公表はされてない)、第三師団の派遣される人達もまだ早瀬製薬のことは知らない。知っているのは私と井狩総班長くらい。
第三師団の医療士と衛生士の宿舎は基本二人部屋なんだそうで。
美咲と二人部屋なんて恐怖でしかない。
井狩さんはもう宿舎に個室を持っているから、黒須ちゃんと私が一緒の部屋で、美咲がひとりで勝手にやってくれた方が逆に安心。ん、安心ではないけど。
というわけで、私はこの移動の二日間ほどで、黒須衛生士と山野井医療士とかなり仲良くなった。
私は『アレク医療士』と呼ばれている。
早瀬医療士がふたりだからね。
私が『アレク』。美咲が『早瀬』と呼ばれることになったんだ。
移動は本部も一緒だったから、山野井くんは第三師団や本部の男性陣と一緒にいることが多く。つまり、ハヤト達とだ。
でも、ここからは本部と第三師団は別れる。
ダンジョンに一番近い建物が監視塔であり、監視塔に近い場所に第三師団の施設や宿舎があるからだ。本部はもう少し遠く、防衛隊の施設のさらに後ろに展開している街に近い感じの所らしい。
「アレク!
休みに街を見に行くの楽しみね!」
黒須ちゃんの言葉に私は笑う。
「そんな元気あるのかなー。慣れるまで大変そうじゃない!?」
休みがどうなるのかすら、まだよくわかんない。
私と黒須ちゃんが楽しそうにおしゃべりをしているのをハヤトが微笑んで見ている。
えーと『前線』に来たわけなんだけど、私達。
下ろした荷物の確認と師団ごとのトラックへの積み込みも終わり、ここからは別々の移動になる。
ハヤトがさっと私そばに来るとぎゅっと抱きしめてきたので、私も抱きつき返す。
「じゃ、後で」
「うん、後で」
名残惜しく……、やっと離れたとたん「アレク行くわよ!!」と美咲の怒ったような声が飛んできた。
ハヤトと顔を見合わせて苦笑して、お互いを見送り合った。
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