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67 やり直しプロポーズ

この話で第一章が終わります。

少し長くなってしまいました。

どうぞよろしくお願いします。

 三人で研究室を出てカウンターの前で海斗さんは入退室のチェックに寄った。

 万里さんは奥の方で仕事をしていたんだけど、私に気づいて手を振ってくれて、私も振り返す。

 ハヤトが私を見るので説明する。

「今日、昼食をご一緒して、友人になりました」

 海斗さんがちらちら万里さんを気にして……。

 は!? もしや、タイプか!?

 今度、万里さんに彼がいるのか聞いてみよう。


 玄関を出たところで駐車場に向かいながら海斗さんと別れの挨拶をする。

 車で来たそうなので、ここでお別れだ。


「それにしても……」

 海斗さんがハヤトと私を見て笑う。

「こんな兄貴の姿を見るなんてなっ!」

 ……こんな姿?

 ハヤトは私達の制服を入れた大きな紙袋をふたつ持っている。

 なんか、確かに荷物持ち!?

「兄貴、母のことがあったからか、女性嫌いっていうか……」

「えっ?」

 私はびっくりして声が出ちゃった。

 そんなこと感じたこともない。

「言い寄ってくるような女性は、自分の利益のことしか考えてないから信用できないって……」

「おいっ!」

 ハヤトが慌ててる。

 私……、自分のことしか考えてない女だったかも……。

「じゃあ、日本に帰ってきたら。また連絡してくれ!

 こんなにかわいい義姉ねえさんができて、俺はうれしいよ!」

 不穏なことを言ったくせに笑いながら去って行く海斗さん。

 しばし見送って……。

「……女性嫌い?」

 私の言葉にハヤトが焦った表情をする。

「いや、そのっ!

 リアは違うからっ!」

「あ、そうか。

 私から告白したもんね……。

 本当だったら、受け入れてもらえないシチュエーションだった!?」

「ちゃんと説明するから、早く車に乗って!」

 赤くなって恥ずかしそうにそう言うハヤトを見ながら『好きだな』と思った。


 動き出した車の中で、大通りに車が進むとハヤトがゆっくりと話し出した。

「父を亡くして……、母がその弟とっていうのは。

 人間、前を向いて生きないとっていうのはわかってたけど、息子としてはね。

 そのショックでもあり。

 女性の好意を、その純粋に信じられなくなって。

 別に女嫌いってわけじゃないけど、しばらくは恋とか愛とか言われてもって感じで。

 でも、早瀬中佐を亡くして……。俺もなんとなくわかったんだ。

 ずっと…………、尊敬する、愛する人の死を引きずっていてはいけないって。

 でも、わかっているのに。

 少しずつ、もがいてはいるけど、なかなか浮上できないって感じで……」

 そこで、ハヤトが黙った。

 うん、運転中だから、無理して説明しなくても……。そう言いたいけど、なんか口を挟めない。

 信号が赤になり、車が停まる。

「そんな時、帰りの電車の中で時々出会う、おとなしそうな女の子に……、心惹かれていることに気づいた。

 ちょうど、早瀬中佐の娘さんがこれぐらいかな? なんて思ったこともある。

 だんだん電車の君が気になっていって……。

 君が花束を持っていた時、胸がズキッとした。恋人か、結婚が決まったのかと……。

 でも、ちゃんと……なんて言うか、きちんと失わないとまた後悔するって」

 信号が青になり、車が動き出す。

 きちんと失う……。

 父のことだろうか。

 父は助けてもらったのに、治療を受ける段階で治療をしない、つまり『死』を選んだ。

 彼はそれを見ていない。

 助けられたと思ったのに、亡くなったと聞いた時は、どんなにショックだったろう……。

「話し掛けて、結婚じゃなくてほっとしたけど、君が泣きそうになりながら最後とか前線とか、その、抱いて欲しいとか言うから……。

 その時にはもう、女性が信用できないとか、そんなのは吹っ飛んでて」

「え? あの時、ハヤト、すごく余裕な感じだったけど!?」

「いや、もう、なんだか夢の中っていうか。

 本当なのか、俺の都合のいい妄想なのかって……」

 車が曲がった。

「……リアを恐る恐る抱いた。

 このまま帰したら、消えてしまいそうで。

 自分の欲望を押し付けてひどいことをしているという自覚はあったけれど……」

「いえいえ、私の方が欲望を押し付けたんですよっ!」

「でも、リアは、恥ずかしさとかそういうのを越えて、一歩踏み出してくれた。

 それに比べて俺は……」

 私は車の前方を睨みながら言ってしまう。

「気にしないで。

 ハヤトは私を救ってくれたんだから。

 本当に、気にしないで下さいっ!」

「それは無理だよ。

 それにリアを初めて抱いて寝た時、本当に幸せで、あんなに寝られたのは久しぶりで……」

 あ、だから、起きなかった!?

 車は見たことのある建物の中へ。この前のショッピングモールだ。駐車場入り口に入り、空いている場所を見つけて、停める。

 ハヤトが私を見た。

「俺達、いろいろ順番がおかしくなってるけど、俺は電車で挨拶する様になっている頃からリアに惹かれてた。

 リアが花を持っているのを見て、心が痛くなるくらいリアのことが好きになってた。

 リア、俺と結婚して下さい!!」

「はい、よろしくお願いします」

 私は微笑んだ。

 ハヤトがホッとしてから少し困ったように言った。

「もう婚約してるのにな……」

「もう一緒に住んでいるのにね」

 私もそう言って、ふたりで面白くなってしまい、笑った。


読んで下さり、ありがとうございます。

第一章、日本編が終わり、次はアラスカダンジョン編じゃ!

ハヤトとリア、中佐(父)を失った心の痛みも吹っ切れて、最初と比べるとずいぶん明るく以前の姿を取り戻しました。このふたりなら、どんな異世界に放り込まれても大丈夫でしょ!

これからもどうぞよろしくお願いします!


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