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66 弟

どうぞよろしくお願いします。

「私も父が亡くなって……、生活というか、環境というか、予定していた進学もできなくなりました。

 同じような喪失感に惹かれて、何者でもない時間が必要で……。

 なんとなく同じ気配を感じて、好きになったのかもしれませんね……」

 私は呟くように言ったのだけれど、静かな部屋にその言葉はけっこう響いて……。

 私は苦笑して海斗さんを見た。

 海斗さんは頷いてくれた。

「兄は……、中佐の遺族のあなたに話をしに行かなければと悩んで、でも、実際に行動に移すことができないほど、でした……。

 夜、うなされることも多かったようだし。

 防衛隊を離れることも考えたようですが、早瀬中佐のこの研究室を残したいという気持ちだけで、何とか生きていたような……」

 そんな状態だったとは。

 少し話は聞いていたけど、そこまで気に病んでいたなんて……。

 私と出会って、急に私服通勤から、制服通勤になって、ダンジョンに戻る……。

 大丈夫なんだろうか。


「あなたが兄をダンジョンに引き戻そうと、わざと近付いたということは……」

「そんなことはありません!

 あ、でも、父の最期の話を一緒に聞いてくれて。私もハヤトも気になることがあって……。

 それを一緒に調べてくれているところはあります……」

「そうですか……、で」

 海斗さんが言いかけた時にドアが開いて「ごめん、遅くなった!」とハヤトが飛び込んできて。

「リア? っと、海斗!? なんでここに!」

「兄貴! 急にダンジョンに行くと聞いて!

 驚いて来たら、こんなかわいい婚約者がいて!

 なんだよ! 心配して損した!」

 海斗さんがハヤトの前で急に弟って感じになったのが微笑ましくって、クスッと笑ってしまった。


 ハヤトが仕度をする間、海斗さんと話をして待つことにした。

 役所の仕事とは聞いていたけれど、都の職員さんなんだそう。

 私は高校を卒業してから、製薬会社に就職して、病院で技師として働いていたこと、そして志願することになったと事実だけ、簡単に説明した。

「さっきの、での続きは?」

「ああ、もういいです。

 兄貴を見て、わかりました。

 抜け出せたんですね。早瀬中佐を失ったという何というか暗闇の中から。

 きっと、あなたが連れ出してくれたんだと思います。

 兄貴は『リア』と呼んでいたけど?」

「名前がアレクサンドリアなんです。

 だいたい友人は『早瀬』か『アレク』と呼びます。

『リア』はハヤトだけの……」

「じゃあ、俺はリアさんとは呼んじゃだめなのか?」

「ダメ!」

 ハヤトが衝立から出てきて言う。

 海斗さんが苦笑しながらハヤトを見上げた。

「本当に兄貴、元通りだな。

 じゃあ、俺は何と呼んだら?」

「早瀬でもアレクでも」

 私の言葉に海斗さんは微笑んだ。

「じゃあ、アレクさん。俺のことは海斗と。

 それからもうひとりの弟のことは?」

 ハヤトが答える。

「いることは話してある。それと、母と叔父の関係も……」

「……うん、わかった。

 もうひとりの弟は陸人りくとといいます。

 そのうち、会うことがあるかも。

 アレクさん、こんな兄貴ですけど、よろしくお願いします」

「いえいえ、こちらこそ、ハヤトにはすごく助けてもらって、ます。

 あ、海斗さん、連絡先を教えて頂けますか?」

 海斗さんがハヤトを見た。

「いいよ。それくらいは許す」

 海斗さんが笑う。

「こんな兄貴で本当にいいんですか?」

「はい、ハヤトのこと愛してますから」

 私が笑うと、海斗さんじゃなくてハヤトが真っ赤になった。

読んで下さり、ありがとうございます。

次が第一章ラストの話になります!

これからもどうぞよろしくお願いします。

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