65 家族
どうぞよろしくお願いします。
男性はびっくりしたように振り返る。
あれ? なんとなく、ハヤト、に似ている?
「いつから?」
そう言われて申し訳なくなる。
「ごめんなさい。
あなたが入ってきた時、ここにいて。
もう、仕事が終わって休みに入っていたので、どうしようかと……。
居留守を使ってしまいました!
何の御用でしょう?」
「君は?」
「この研究室所属で大岡大尉の助手をしている早瀬と申します。医療士です」
男性が首を傾げた。
「早瀬って、中佐の?」
父のことは知っている?
「はい、早瀬冬馬は私の父です。
もしかして……、大岡大尉のお身内の……、弟さん?」
「ああ、大岡海斗です。隼人の弟です。
俺のことを兄から聞いている?」
「はい、弟さんがふたりいると……」
ちょっと安心して、台所から出て、研究室に少しだけ入る。
「……兄があなたに? 教えた?
えっと、早瀬さんはおいくつですか?」
怪訝そうな表情で聞かれる。
「19歳です。もう少しで20歳になります」
「……その、兄の助手?」
「助手、ですけど……。婚約者でもあります」
「え?」
「ですから、防衛隊の所属だと助手ですが、大岡大尉と私は婚約してます」
「……7歳も下の女の子と!? 兄貴、何やってんだ!?」
はい?
「……大岡大尉はアラスカダンジョンに急遽行くことが決まって、それで今、大佐の所に行っています。
午後は休暇の予定なので、そろそろ戻って来られると思いますが……」
「そうそう!
アラスカに行くって聞いて、驚いて話を聞きに……。
その、早瀬さんも一緒に?」
「はい、一緒に参ります。
あ、でも、宿舎は別だそうです」
「いや、それは当たり前でしょう」
「ん? 今、私、大岡大尉と一緒の宿舎に住んでいますが?」
「え?」
「はい?」
海斗さんが黙り込み……。
少し考えてから私を見た。
「……本当に?
兄貴の婚約者?
早瀬中佐の娘さんで?
……兄貴に同情して、とか?」
「……同情?
いえ、私は大岡大尉の名前も職業も知らなかったんですが……、仕事の帰りに電車で御一緒することが多くて……。
その……、私の方から、その、告白して……。
そうしたら、父の部下だったこととか。後からわかって。
ハヤトも私が早瀬冬馬の娘だと最初は気づかなかったと……」
海斗さんが驚いた顔をした。
「は……、そんなことがあったとは!
兄貴は、あなたの父上を亡くして……、その、精神的に参ってしまい、本部の研究室付けになっていたんですよ」
「精神的に?」
私は出会った頃のハヤトを思い出す。
いつも冷静な感じで、静かに電車に乗っていて……。
私と顔を合わせて会釈するくらいの穏やかという感じの人だった。
声を掛けてきたのも私が疲れていて、座席に座っていた人がマナー的に座席を占領していたからで……。さすがに見るに見かねて心配してくれたのかも。
制服ではなく、私服で、電車通勤。
なんだろう、敢えて防衛隊という縛りから出て、日常の中に埋没したように自分を置きたいと思っていたのかも……。
周囲を見ているのに積極的には関わろうとはしない時間。
何かを思い出す、考える時間をなくしたいみたいな。
それは私も同じで……。
読んで下さり、ありがとうございます。
後2話で第一章が終わります。
これからもどうぞよろしくお願いします。
読み直しをしてガチョーン!
父の中佐が少佐になってるところが何カ所があり……、直しました。




