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62 楽しみと心配

どうぞよろしくお願いします。

 ケープとヘアバンドを外して髪を整えている時、ドアがノックされる。

「大岡大尉かも?」

 私が言うと上野さんは微笑んでドアを開けてくれた。

 やっぱりハヤトだった。部屋の中に入ってきたので、私は振り返って「どうですか?」と聞いた。

「えっと……、その……、きれいだ」

 なんだその、えっと、その、というのは?

「あんまり?」

「いや、きれいだよ。すごく! 

 その、こっちが緊張するっていうか……。

 その、心配になるっていうか」

「心配?

 メイクしない方がいい?」

 私の言葉に上野さんがハヤトの背中をバシッと叩いた。

「ちょっと!

 はっきり言いなさいよ!」

「すごくきれいだ!

 だから、他の男がそういう目で見るんじゃないかって、心配になる……」

「……大岡大尉はいや?」

「いや、リアがきれいにしてるのは見ていてうれしい!」

「リア?」

 上野さんがくり返した。

「いや、早瀬医療士が……」

 上野さんが笑った。

「あの堅物で有名な大岡大尉がこんなにメロメロだとはね!

 もう愛称で呼び合う仲なのね。

 こんなにきれいなんだもの、心配になるのはわかるけど、メイクは楽しみでもあるから。

 好きにさせてあげて。あなたのために彼女はメイクしているところもあるんだから」

 ハヤトは大きく頷いた。

「はい」


 私は立ち上がった。

「ありがとうございます」

 上野さんがこちらに来ながら説明してくれる。

「あ、使った物はそのままどうぞ!

 えーと、ヘアバンドと泡立てネット、それから、クレンジングと化粧水と乳液のミニボトルはそのままお持ち帰りできるから。後……、アイシャドウの試供品があるわ。

 メーカーは違うけど、ピンク系と青系があるの。練習に使ってみて」

「わ、うれしい、ありがとうございます」

「研修の感想を研修終了のメールについてるフォームで返信してね。それで研修は終了よ」

「はい、上野さん、楽しかったです!

 もう少しナチュラルメイクに慣れたら、次のメイクにも挑戦してみたいです!」

「ふふ、またの研修申し込み、お待ちしてるわ!」


 私とハヤトは上野さんに礼を言って部屋を出ると、帰りに寄る約束をしていたカウンターへ行った。

「早瀬医療士! って!

 何、すごくきれい!」

 係がびっくりしたように叫んで。なんだか注目されてしまう。

「あ、ごめんなさい。前から美人さんだとは思ってたけど、すごいメイクが映えますね!

 素敵! きれいです!」

 すごく褒めてくれて、恥ずかしやらうれしいやら。

「ありがとうございます……。研修でしてもらって。自分でできるかわからないんですけど、頑張ります!」

「うんうん、すごくいいです! がんばって!」

 なんだか、係さんとすごく意気投合してしてしまった。

 ハヤトが「遺族年金のことで?」と声を掛けてきた。

「あ、すみません!

 こちらです。

 遺族年金は早瀬秋馬名義の口座に入るという申請がされていましたが、確実にアレクサンドリアさんに渡るかわからないということで、振り込み停止状態でプールされてたようです。

 今回、三ヶ月分の請求を新たにかけて承認されたことで、年金機構から確認が来まして、今までの全額こちらの口座に振り込まれることが決まりました! 良かったですね!」

「……ありがとうございます。

 もっと時間がかかると思いましたが、すぐ解決して良かったです」

「遺産と給与の件は……、もう少しお持ち下さい。今、早瀬製薬が調査中になり、その結果でいろいろわかると思います」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 私とハヤトは見送られて本部を出て駐車場に行く。

 車に乗って言われた。

「明日、午後休みを貰えたから。

 着替えを持って来て、そのまま買い物に行こう」

「はい。その時に化粧品を少し買ってもいい?

 ハヤトには退屈かもしれないけど、もう買うものは決まってるので、時間はかけない」

読んで下さり、ありがとうございます。

恩師から貰った口紅、使えて良かったね。

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