54 繋がりは見えてきたが……
どうぞよろしくお願いします。
稲岡さんが私を睨みつけた。
いつも控えめな感じの稲岡さんのこんな表情、初めて見た。
「……不在の時のリーダー代理は、いないわ。みんなで……。
あの時はまだ美咲さんもいなかったし!」
ああ、あの時のことだと、それもわかっているんだ。
「いや、それまでの染野の助手は稲岡で!
僕は、何も知らないっ!」
舛添さんがオロオロと叫び返す。
「黙れ!」
稲岡さんの低い声。
舛添さんはさらに後退りすると「僕は何も知らない!」とハヤトに向かって訴えた。
ハヤトが何かに気づいた顔をして言った。
「じゃ、早乙女中尉に協力を」
私がハヤトの視線の方を見ると、私達が揉めていると騒ぎになっていたようで、早乙女中尉とその部下達ががこちらに向かってくるのが見えた。
「染野が研究の総リーダーだが、No.2はこの稲岡だそうだ。
で、その責任を押し付けられるのではと恐怖している舛添ってとこらしい」
ハヤトの説明に早乙女中尉が言った。
「大佐がさっき話してくれた。
ダンジョンでの培養液の件もあるんだな。
実質的に第三師団のダンジョンでの指揮官である小池大佐と早瀬製薬がつながったことでこの件も表に出すとね」
「ああ、頼む」
ハヤトの言葉に頷いて、早乙女中尉は部下に稲岡さんと舛添さんに話を聞く必要があるので連れて行くようにと指示を出した。
彼らが動き出したのを確認してから、こちらを振り向いた。
「第三師団の日本側での指揮官である少将殿ともう話はついてるそうだ。
知らぬは現地の指揮系統の小池大佐と……。
小池大佐は早瀬製薬の早瀬ちゃんへの志願強要、配属先に法令違反を見逃す指示を出していたこと、特定の企業との癒着で話を聞きたいと引っ張れる」
ハヤトが難しい顔をした。
「指示していたのが小池大佐だとしても、動機は?
小池大佐のことは知っているが……。
そんな研究とか実験とか人の命を危険にさらすような人では……」
「まあ、早瀬製薬の方から持ち掛けたって線もあるか。
これからわかるだろう。
気をつけて帰れよ」
私とハヤトは会社の外に出て、駐車場に停めてある車に乗り込んでから、ため息をついた。
「……よく頑張ったね」
ハヤトが言ってくれて。
「はい、思ってたことぶちまけてやりました!」
私が笑いながら言うと、頭を撫でてくれた。
「でも、もっと言いたいこと、あっただろう?」
その言葉に私は目が熱くなって、鼻がツンとして、涙が……。
そう、父のこと。
もし叔父が染野さんのやっていることを知っていたら……。
兄である父を殺してもかまわないと叔父は思っていたということだ。
叔父も当主という立場に……、身内である兄が死んでもかまわないと……、いや、殺していいという判断を……。
さすがにそこまでは……、言えなかった。
「……そうですね。父のことを……、言ってやりたかった、かも」
「うん、ここからは本部と警察が協力して調べてくれるから、安心して」
「……例の培養液で治療を受けた人の追跡調査って?」
「ちょうど一年半前の戦闘のその前後。
培養液が切り替わったのを井狩総班長が認識した前後、大きな治療を受けた者はいなかったが、応急手当てに培養液をかけたり、傷薬のように塗布して使用したケースが15件ほどあって。
その時に日本から民間の医師が来ていたそうだ。染野だろう。
紹介された時、医師でもあると聞いて、なんとなく繋がった」
読んで下さり、ありがとうございます。




