52 それは謝罪?
どうぞよろしくお願いします。
「叔父さん!
私、結婚して早瀬家を出ます。
認めて頂けるんですね!」
私のうれしそうな声に押され気味の叔父は声を絞り出すように返事をした。
「あ……、ああ、認めるも何も……」
「今の早瀬家と早瀬製薬とはもう関りはありませんが、父の……、防衛隊で指摘された父の遺族年金や遺産のこと。仕事と志願と当番のルール、払われていない給与など、それは引き続き調査と法的に追及が入りますから、きちんと対応お願いしますね」
大佐が微かに笑った。
「もう、言い残したことはないかな?」
「はい、ありません!」
叔父が社長の顔を取り戻し、敏夫を怒鳴りつけた。
「お前が勝手にしでかしたんだ! 責任を取れ!」
敏夫は唇を噛んでから、社長室から出て行く。秘書は残っている。
早乙女中尉がそばに来て私にこそっと言った。
「とりあえず、彼は書類や手続きのことを話してくれそうだね」
「いえ、私が志願になっていたこと、直前まで敏夫は知りませんでした。
ここに残っている、敏夫の秘書を捕まえといた方がいいかと」
私とハヤトはさらに到着した応援の防衛隊の本部の隊員の姿を見ながら、会社のエントランスを歩いていた。もう先に帰っていいと言われたんだよね。
「早瀬さん!!」
女性の声で呼び止められる。
稲岡さんと舛添さんだ。稲岡さんは女性研究者なんだよね。
稲岡さんが呼びかけたくせに戸惑いながら話し出す。
「えっと、その……、お久しぶりです」
私はその言葉に笑ってしまった。
「まだ、退職して一週間くらいですけど」
「いえ、きちんと、こうやって話すのは久しぶりで……」
稲岡さんが首を傾げるみたいにする。黒くて長い髪が揺れた。
舛添さんが稲岡さんを庇うかのように、気にしながら言う。
「僕達、会社が早瀬さんにひどいことをしているのに気づいていたのに……、助けられなくて。
彼女は美咲さんに脅かされていたんです」
稲岡さんが俯く。
「本当に美咲さんが……、その……」
美咲に私のことは無視するとか、助けるな、関わるなとか言われていたのかな?
私は次の言葉を待ったが、なかったのでこちらから聞いた。
「……で?」
舛添さんが答える。
「いや、だから美咲さんがっ!」
また言葉が続かない。
だから……?
私に察しろと?
察して、許すと先に言えと?
「……美咲、一年経ったら戻って来るでしょう。
そうしたら、また美咲の言うことを聞かないといけなくなるでしょうし。
美咲の仲間でいればいいですよ。
今だけ無理しなくても」
「無理って……」
「せっかく、こうやって……」
ふたりが傷ついた顔をする。
「私にとってはみんな同じだから。
美咲も敏夫も稲岡さんも舛添さんも、染野さんも叔父も……。
もう忘れてしまいたいことですから」
「私達のことも!?」
稲岡さんが信じられないという顔をする。
何故、自分達で美咲に従うと決めて行動したのに、美咲がいない場で謝ろう……、いや謝罪の言葉を口にせずに許してもらいたいと促してくるんだろう。
読んで下さり、ありがとうございます。




