51 誰の責任?
どうぞよろしくお願いします。
「社長、そんな『約束』はないと、ここにそのふたりはいますから、この場で言って下さい!」
私の強い言葉に社長は忌々し気に頷き、叫んだ。
「染野! 敏夫!」
ふたりは社長と大佐を引き合わせ私がそばに行った時に、社長室のドアのあたりまで下がり、待機していたので、何事かとこちらに来た。
「その……、アレクについての『約束』は何か誤解があったようだが、ない。元から白紙だ」
ふたりとも怪訝な顔をしている。
染野さんが言った。
「社長どういうことでしょう?
私の早瀬への婿入りの約束は?」
染野さんの言葉に社長が怒り出す。
「そんな時代錯誤なことを!
アレクは成人した女性だ!
親代わりとはいえ、そんな約束をするわけないだろう!
ま、雑談の中で、もしそうなれば、そうなったらというくらいの軽い話だよ。
君は真に受けていたのか!
なあ、敏夫もそうだよな。いや、叔父としてアレクの先行きを不安に思っていたこともあってね……」
「不安に思うから、愛人としての世話を?
大きなお世話です」
私はぼそっと言った。
大佐が笑った。
「はははっ! 何も心配することはありませんよ。
早瀬医療士、大岡大尉、このふたりはもう婚約してましてね。
防衛隊ではとてもめでたいと、上層部でも話題になっているんです」
「……上層部でも?」
社長が不安気な顔になる。
「ああ、亡くなった早瀬准将の娘さんだからね。
何故、志願したのか?
高校を出て、仕事をしていたのに個人の口座も持っていなくて、亡き父の遺族年金も受け取っていない。志願に当たって仕事を退職。入団前日まで仕事をしていた……といろいろ報告は上がっていて、調査中だ。それ以外の調査もあってね」
大佐が早乙女中尉を見た。
「はい、事務手続きの方の書類は証拠として押収しました。
第三師団の小池大佐とよく連絡を取っておられることも、第三師団の方には早瀬医療士の手続きで不審な点があっても了承済みで受け入れるようにと通達があったことも確認済みです」
あ、研究棟への視察は、陽動だったのか!?
会社の書類の方を押さえたかったから!?
それに本部の大佐は私のことを知っていてくれたんだ!
大佐を見ると、微笑まれる。
「色々調べがいがあるとは思っていたが……。
姪の未来まで『約束』という言葉で利用していたとは、いやはや……。
早瀬准将の弟さんとはとても思えない所業ですな」
「いや、これは! そう、と、敏夫が!」
社長である叔父が、狼狽し、周囲を見回し、敏夫を見て叫んだ。
「敏夫が! こうすれば利益になると!」
敏夫が驚いた表情をし叫んだ。
「えっ? 社長?」
「……敏夫は美咲の夫になるからと!」
「ちょっと待って下さい!
何のことですか?
美咲との婚約は解消したいと!」
「……ならば、何故、ここにいる!?」
「え?」
敏夫が心底から困った表情をしているように見えた。
「私が、営業や予算管理や、全て引き受けて動かしているからです!
私が出て行ったら……」
「それが君のやり方かね!!
ああ、私も美咲もすっかり騙されていたよ!
大佐! すべてはこの敏夫が、私には何も知らせず、独断で仕組んだことでしょう!
お詫びいたします」
大佐が苦笑する。
「では、この早瀬医療士の将来を縛る『約束』は何もないと?」
「当たり前です!!」
社長の言葉に、大佐は私とハヤトを見て言った。
「よかったな。これですぐ結婚できるぞ」
「ありがとうございます!」
私はにっこり笑って、ハヤトの腕に抱きついた。
読んで下さり、ありがとうございます。




