50 ぶちまける
どうぞよろしくお願いします。
染野さんが先に目を逸らして、離れていった。
「……言ってしまっても良かったの?」
私はハヤトに小さな声で言った。
「奴が関わっていることは確実だ。実行役というか……。
ただ、どこの指示かはわからない。奴だけだと、ダンジョンの第三師団の指揮系統に指示を出すことはできないだろうし」
私は頷く。
私の婿になるというのが見返りならば、黒幕は社長ということも考えられる。でも、第三師団に協力者か本当の黒幕がいるのかもしれない。
他家に嫁に出されるのとは思っていたが、婿を取るとは全く考えていなかった。
染野さんは敏夫のそばに行き、視察の流れに戻る。
研究棟から本社の方に戻り、上階へ上がり、敏夫が社長室のドアをノックして開けた。
秋馬叔父さんがいた。
父と少し似ているのが、なんだか恨めしい。
叔父、ここでは社長か。
大佐と挨拶してから、何やら話をしている。
私とハヤトはドア付近に待機していたが、敏夫が話の折を見て何か社長に耳打ちしたのが見えた。
私の方を手で示す。
社長は私を見て、顔を顰めてから笑顔を作った。
「アレクサンドリア! そんな他人のような顔をしているから、わからなかったぞ!」
私は大佐に手招きされ、ハヤトとそばへ行く。
社長が私が何か言う前にという感じで急いで話し出す。
「私の姪でしてね。
自ら志願した優秀な医療技師です。
どうだ、よくやっているか?」
私はここでぶちまけることにした。
「……社長、私の志願が決まって、会社を退職するように言われたのは違法だそうです。
それに志願休暇もなかったのはおかしいと。それから……」
社長はぎょっとして大佐を気にして、私を睨んだ。
「アレク! 何を言っているんだ!?」
大声で私を黙らせようとする。
「防衛隊でいろいろ早瀬家と早瀬製薬の対応がおかしかったことを指摘してもらえて。
本部の方が調査して下さっています」
「……本部が調査? 第三師団は?」
「私、第三師団から入団式前に本部に移りました。
それから、私はもう成人していますよね?」
社長がまた大佐を気にしてから、頷く。
「私の将来の『約束』を社長としたという方にふたりも会ったのですが。
どういうことでしょうか?」
「……なんのことだ?」
「社長がした約束ではないのですね?
では染野さんと竹中さんには、社長から、今、この場で、そんな『約束』などないと話をして頂きたいです。
大佐、証人になって頂けますか?」
大佐は頷き「その『約束』とは?」と言った。
社長が慌てて私の肩を掴んだ。力が強くて私は顔を顰め、口を開くのが少し遅れた。
ハヤトが代わりに言ってくれた。
「染野研究員には早瀬医療士との結婚を『約束』し、そこの竹中氏には、早瀬医療士をいずれ愛人にすると『約束』していたそうです」
社長が私を掴んでいた手にさらに力を入れた。
「痛いです!」
私は声を上げ、ハヤトが助けてくれる。
大佐がその様子を見ながら、呆れたように言った。
「それは……、ずいぶんと時代錯誤というか……。
親でも許されない所業ですね」
読んで下さり、ありがとうございます。




