49 切り売り
どうぞよろしくお願いします。
「話が違います!
社長は私とお嬢様を結婚させると!
私を早瀬グループの中へ入れると!」
染野さんの言葉に私は驚く。
えっと、染野さんは40代後半……ぐらいだよね?
つまり、早瀬家の身内にするために私とってことは婿になるってこと?
あれ、私、敏夫に引き取られるんじゃ。
敏夫にも『約束』で……、あれ?
ハヤトが私を守るように肩を抱くと言った。
「早瀬医療士は私と婚約しています。すぐにでも結婚する予定です」
私も頷いて、染野さんを見た。
怒りと驚きの表情がさらにもう一段階上がっている、気がする。
「社長は約束した! そう言って!!」
「私はもう今の早瀬家とは縁を切るつもりです。
早瀬製薬も退職していますし。
父が亡くなってからの、いろいろな手続きにおかしいところがあり、防衛隊本部が確認してくれています。それが終わったら、彼と結婚します」
「……お嬢様は『約束』を聞いていない?」
「はい……、それにその『約束』っていうの、私は知らない。
私の知らない私の将来の『約束』について言われるのは2回目で。
先日、敏夫と美咲にも、将来、私は敏夫に引き取られて、その、愛人になる『約束』だと言われました。
秋馬叔父さんとその『約束』を?
なら、染野さんを婿に取るという戸籍上のこと?」
だんだん腹が立ってきた。
私の未来をそんなふうに勝手に『約束』して、利用していることが許せない!
秋馬叔父さんも、美咲も。そして染野さんも敏夫も、気持ち悪い!!
もしかして、まだ『約束』している人が他にもいるんじゃないかと、自分の身体が切り売りされているような不快感にぞわっとした。
ここは早瀬製薬の視察の場。
個人的な騒ぎは起こしたくないし、考えたくもない。
あれ……、そういえば、染野さんはアラスカダンジョンに何度か行っているって……。
「……染野さんは、アラスカダンジョンで何を?」
私の不意の問いかけに染野さんが動揺したように目を逸らした。私は畳み掛ける。
「研究のため?
それとも、品質管理や使用法についての視察的な?
会社からの出向ですよね?
それとも、防衛隊からとか、他の命令が……」
染野さんが首を振る。
「なんのことだ?
その、適切に保存されているか、保全と再生医療に使用されているか。
指導というか……。
製薬研究の治療の責任者として……」
「実験段階の培養液を使用してみたり?」
ハヤトが急にそう言って。
「な、なんてことを言うんだ! 失礼なっ!」
染野さんは声を荒げたが、言葉が続かない。
ハヤトは冷静に続ける。
「あなたがアラスカダンジョンに滞在していた時期、その期間に治療を受けた者達。
追跡調査を始めている。
他にもデータがあってね。それと照らし合わせてみたら……」
「なっ!」
染野さんとハヤトが睨み合う。
視察の流れは続いていく。
どうぞよろしくお願いします。




