48 染野さん
どうぞよろしくお願いします。
「魔物の粘液の保管については?」
大佐が聞いてくれ、予想通り『厳重に保管されている』こと、まだ研究の余地があり『粘液の培養』研究も行われていて、新たな採取をする必要がなく、日本国内で研究できていることを染野さんは強調した。
「厳重に管理をお願いします。
最近、各国ともダンジョンからの持ち出しにピリピリしていましてね。
新たに採取することが難しくなっています」
大佐の言葉に染野さんが大きく頷く。
「お任せ下さい!」
こんな声を張る染野さん、初めて見たかも。
そこへ、敏夫と秘書が合流してきた。
私はハヤトの陰に隠れようとしたが……見つかった。
「アレク!?」
敏夫の言葉に染野さんが私を見た。
いつもよりテンションが高い染野さんの目が私を捉え、見開かれた。
「お嬢様!?」
私は仕方なく会釈した。
「お嬢様がいらしてるとは! もし来るなら、美咲お嬢さんの方かと」
「……美咲は第三師団の医療士なんです。
私は本部のダンジョン研究室にいまして」
簡単にそう説明する。
「ああ、そうなんですね。
お嬢様が医療現場の方がいいのに……。
実際、その方が治癒率が……」
そう早口で言いかける染野さんに敏夫の秘書が近づき、何か耳打ちすると、染野さんは黙った。
早乙女中尉が私に囁く。
「早瀬ちゃんがお嬢様で、あっちの早瀬医療士がお嬢さん?」
「私の方が、まあ当主令嬢だった期間が長かったからだと思います。
子どもの頃からいる方ですし」
「ああ、早瀬ちゃんは生まれつき、18歳までは当主のお嬢様だったもんな」
早乙女中尉が納得している。
視察が再び始まり、敏夫が説明を代わったようだ。営業としての無難な説明という感じだ。でも、視察相手ならそこまで詳しくない方が逆に親切なのか?
染野さんがこちらに来て私に話しかけてきた。
「お嬢様、現地へは?」
「……今度行くかもしれません。視察みたいな感じで?」
私は首を傾げながら言った。
「そうですか!
私も何度かアラスカへは行っているんです。
向こうで治療をご一緒できたらいいですね」
急に染野さんが親し気な表情で手を握ってきて、私は身体を強張らせた。ハヤトが気がついて止めようとしてくれたけれど『大丈夫』と目で伝えた。もう少し、しゃべらせたい。
「染野さん? えっと……」
「二年後が楽しみです」
しみじみという染野さんの言葉に戸惑う。
「二年後?」
「志願期間が終わったら……。
お嬢様を私に下さると社長は約束して下さいました」
ん?
私は理解できなくて……、きょとんと染野さんを見返した。
『私に下さる』『約束』
あれ、なんか……。
私は握られていた手を苦笑しながらやんわりと引き抜いた。
「私は早瀬製薬には戻りません。
今回のことで早瀬家からも出ましたし」
染野さんがか表情を歪めて……、顔が赤くなる。 怒り?
読んで下さり、ありがとうございます。




