42 取り戻した自分
どうぞよろしくお願いします。
私は苦笑した。
「全然違います。
美咲は幼馴染の敏夫と婚約していたんですが……。
私に対する当てつけみたいな気持ちがあったようです。
だから、私とハヤトが婚約したと知ったら……。
敏夫との婚約を解消するから、私達も別れろって」
「なにそれ? 意味がわからない!?」
愛理さんの言葉に私は笑った。
「そうですね。
でも、美咲の中ではそうなんです。
私は……、美咲のために、早瀬家のために生きなきゃいけなくて、美咲が不幸なら、それ以上に私は不幸にならなきゃいけないと……」
「え? まったくわからない」
「ま、美咲にとって、私は『目の上のたんこぶ』みたいな?
父が死んで、当主の娘という座から引きずりおろしたと思ったら、逃げて幸せになろうとしている、身の程知らずで恩知らずな、早瀬家の恥の混血児ってところです」
「中佐が生きている時は、早瀬さんの方が当主令嬢だったんだろ?」
早乙女さんが言った。
私は頷く。
「だから……、余計に我慢ができなかったというか、我慢してたぶん、私から奪いたいのでしょうね。
父が不在がちだったこともあって、子どもの頃から『不公平だ』と言われて……」
「で、今は向こうの早瀬医療士が当主令嬢になって、それは早瀬ちゃんからしたら不公平だよね!?」
「いや、それはいいんです。
自分で努力して当主の娘だったわけでもないんで……」
早乙女さんが大笑いするから、びっくりした。
「わははっ!
早瀬ちゃん、面白いよ!
天然なのかと思ったけど、ちげーな。
なんか、武士って感じがする」
武士……とは?
私は首を傾げた。
早乙女さんはまだ笑ってる。
「いいコンビだよ。おふたりさん!」
愛理さんが突っ込んだ。
「コンビって! お笑いじゃないん……」
そこまで言って、黙り、私とハヤトを見て、ぷっと笑った。
「いや、けっこう面白いコンビかも!?
武家の姫と従者みたいな?」
ん?
夕食会が終わり、早乙女夫妻は賑やかに一緒に片付けまでしてくれて、帰っていった。
お見送りしてドアを閉めると、私の後ろに立っていたハヤトがそのまま背中へ抱きついて来て「はあ……」とため息をついた。
「楽しそうだったのに、疲れたの?」
私は自分の肩に乗せられたハヤトの頭に手を伸ばし、髪を撫で撫でした。
「……リア、雰囲気変わった?」
「あ、かも。
さっき、美咲と敏夫にめっちゃ怒ったら、なんか、すっとして……。
思っていることはしゃべりやすくなったし、行動しやすくなった」
「……抑制されてた感情が、自由になってきているんじゃない?」
「かもしれない、
父が亡くなって……、ひとりになって。
でも、早瀬家の娘だからって叔父達の言うことを聞くしかなくて。経済的にも高校生で自立できなかったし……。
我慢っていうよりは諦めることが多くなって……。
自分に自信がなくなった、ずっと否定されてたし。
でも、ハヤトに会って、防衛隊に来て、どんどん自分自身を取り戻して……。
父とのことも仕事を通じてたくさん思い出した!
そうしたら、自分が子どもの頃のことをたくさん思い出せて、自分は幸せになりたいし、幸せになっていいんだって! 思えるようになった」
読んで下さり、ありがとうございます。




