40 プロポーズ
どうぞよろしくお願いします。
「時が来たら?
それまで私は虐げられてろと?
美咲が私のふりをして園遊会で傲慢に意地悪に振舞って、私の名を名乗ることを許せと!?
男に命じて、私を襲わせることを許せと!?
自分の都合のために、私を差し出すことを……、許せと!?
もう嫌なの!
私は私を大切にしてくれる人と生きたい。
父や母のように、私を大切に思ってくれる人と家族になりたい!」
ハヤトが私の肩を抱き寄せてくれた。
感情が昂り、言葉が止まらなくなる。
「それに、敏夫が引き取るって何!?
美咲と結婚して、あの屋敷に住んで、私を使用人として雇いたいってこと!?」
「いや、そうじゃなく!
おじさんと美咲と約束していて……。
美咲……、アレクにそんなことをしていた?」
私はカッとなる。
「わかってたでしょ!?
知ってるじゃない!!
屋敷で使用人に襲われた時のことも、水曜日の夜に、私はいなかったけれど男の二人組が押し入ろうとしてたことだって、話、聞いてたよね!?
私が自分自身で、自分を守っていたこと!」
「それは、俺のために……」
私は首を振った。
「違う!
自分のため!
そして、本当に好きな人に出会う時のため!」
敏夫は私の隣のハヤトを見た。
「その男が……、その……、好きな男なのか?」
私は頷く。
ハヤトが言った。
「婚約した。もう一緒に住んでる」
ん? まだプロポーズ的な……、まあいいか。
敏夫はわなわなしている。
「そ、そんな。こいつに会ったのなんて、つい最近だろ!?」
私は首を振った。
「いいえ、一年以上前から仕事の帰りに、顔を合わせて挨拶するくらいだったけど、彼には惹かれてた。
話してみたら、父とも縁があった人で、お互いの話を聞いていたことがわかった。
父が出会わせてくれた人だと思う」
「俺とアレクは……、もう19年も……」
「それを言うなら、敏夫と美咲は20年もだ」
美咲は21歳、敏夫は20歳、私は19歳だから。
私はにっこり笑った。
美咲が遠くから叫んだ。
「敏夫との婚約は解消するわ!
だから、あんたも大岡大尉との婚約を解消しなさい!」
は……!?
私とハヤトと井狩総班長は『?』という表情になった。
井狩総班長が怪訝そうに「……あなた達の婚約解消と何の関係が?」と聞いてくれた。
うん、なんでだ?
「私が婚約解消したんだから、アレクもするべきよ!」
……どういう理論?
まあ子どもの頃から美咲が『不公平だ!』と喚いてはひどい目に合わされてきたけれど……。
不公平というか、私が美咲の持ってないものを持っていたり、自分ができないことは私にもさせないとか、自分の心が傷ついたという理由で私を『罰』と称して、本当の怪我をさせた。
まあ、背中の傷が一番ひどかったけどね。
「私と美咲は同じ人間でもないし、繋がっている人間でもない。
その理由はおかしいよ」
「敏夫を『返す』って言ってんのよ。
敏夫にはあんたを将来『愛人』として宛がうと『約束』してあるの!」
「え……?」
「敏夫はあんたのことが好きだから、今だけでも奪ってやりたかったのよ!
でも、あんたが羨ましがらないんじゃ、つまんないわ。返す!」
……は?
なんだそれ?
私は敏夫に向かって言った。
「私はこの先、自分で決めた道を生きていきます。
私の将来を勝手に約束しないで! 気持ち悪い!
私のこれからに美咲や敏夫はいませんっ!
敏夫も自由になって。
では、さようなら。
井狩総班長、制服ありがとうございます」
「あ、早瀬医療士、大岡大尉、ご苦労様でした」
井狩総班長は我に返ったようにエントランスから外へ手で示して送り出そうとしてくれる。
私とハヤトは一礼して歩き始める。
……こんなエントランスでする話じゃなかったな。
玄関を出ると「明日にでも結婚するか?」とハヤトがぼそっと言って。
私は苦笑いしてしまった。
「こんなプロポーズは何だか……」
「じゃ、仕切り直す」
「そうして頂けるとうれしいです」
読んで下さり、ありがとうございます。




