39 守っていた?
どうぞよろしくお願いします。
ハヤトは顔を歪めてからため息をついた。
「……今のところ、あれから大きな戦闘は起きていない、はずだ」
井狩総班長も頷く。
「特に今の時期は日本は当番を外れていますから。
もうしばらくすると、新人を連れて、向こうへ戻りますが……」
「こちらでは確かめようがない。私も向こうへ」
ハヤトの言葉に私は弾かれたように叫んだ。
「私も連れてって下さい!
父が亡くなるまで、会社の研究室には時々出入りしてました!
他の研究のことも少し聞いています。
それに仕事で培養液を使った四肢再生治療に携わってきました。
現場でおかしいことがあれば、気づけると思います」
井狩総班長は頷いてくれた。
「彼女の助けが必要です」
井狩総班長は、こちらから積み荷として持っていく培養液を調べておいてくれるという。
「気をつけて動いて下さい」
ハヤトは心配そうに言った。
中が見えないように梱包されているか、もしくは正規品に現地で何か加えているのか?
慎重に調査し、連絡を取り合うことを約束し、私達は第三師団の玄関エントランスに向かったところで……。
「だから、もう、いいのよ!
それともあなたが志願してくれるとか!?」
エントランスに響き渡る……美咲の声。
立ち話しているのは敏夫?
敏夫はやれやれという顔で周囲を見回し、私を見て止まった。
「……アレク!?」
その言葉に美咲は私を、見事な二度見をして「え!?」とびっくりした。
「アレク! なんで髪と眼鏡!!」
美咲の怒り混じりの叫び声。
ハヤトが私を庇うように前に出ようとしたが、それを止めて、自分で前へ出た。
「入団の書類読んでないの?
髪染めは禁止でしょ。
眼鏡も度が入っていないものだし、防衛隊での生活には必要ないわ」
「……生意気言うのね。
私達に生かされてた混血児のくせに!
戻って来た時、家に入れてやんないから!」
敏夫が『えっ?』という顔で美咲を見た。
「私はもう早瀬製薬には戻らない。早瀬家にもね。
心配してくれてありがとう。もう大丈夫だから」
私の言葉に敏夫が戸惑うように言った。
「アレク?
どういうことだ?
アレクは二年経ったら戻ってくるんだろう?」
私は敏夫を見た。
「帰らないし、戻らない。
私は早瀬製薬を退職しましたし、早瀬家を出ました」
「話が違う!!」
なぜか敏夫が美咲に言った。
そして私の方に歩いてきて……。ハヤトが私の横に並んだのを見て立ち止まる。
「俺は……、アレクを守ってた」
敏夫が苦しそうに言って、ハヤトを気にした。
「……私があの家でどんな風に扱われているか知っていたでしょ?」
「だから、できる範囲で!」
襲ってきた使用人を一緒に取り押さえてくれたりとか、時々、内緒で差し入れをしてくれたりしたことを思い出す。
「そうね。助けてもらったことはあるか……。
でも、私はもう早瀬には戻らない。
守ってたというなら……。
私が美咲の兵役短縮のために志願させられないようにするのが、守るってことじゃない?」
「だから、それはぎりぎりまで知らなかった!
アレクが退職したことを前日に聞いて!
時が来たら、アレクを引き取る予定だった!」
読んで下さり、ありがとうございます。




