33 仕事開始!
どうぞよろしくお願いします。
研究室で私は口座の確認をしてにっこりする。
金額にじゃない。父からの愛が届いたというか、私自身がこの世界に、社会にいると認められたような気がした。
それはとてもうれしい。
そうそう、使い方をちゃんと覚えないと。入金や払い戻しの仕方とカードの申請方法!
それは通帳と一緒に資料が入っていた。
パソコンを見ていたハヤトが言った。
「夕方第三師団に行く時、早瀬中佐を看取ったひとりに会える。
今、返事が来た。あとひとりはその人が連絡を取ってくれているそうだ」
「ありがとうございます!」
忘れずに、ちゃんとすぐ対応してくれたんだ。
そう思ったら、すごく心が温かくなった。
とても大切にしてもらってる。
「どうした?」
黙った私に心配そうなハヤトの声。
私はにっこり微笑んだ。
「ハヤトに大切にしてもらってるなぁとうれしくなって……」
はっとした。
「あ、大岡大尉に!?」
慌てて言い直して、赤くなる。
ハヤトがふっと笑う。
「そうだな、今はふたりだから、ハヤトでいいよ」
「いえ、その、ちゃんとしないと!」
そうだよ。ちゃんと仕事もしないと。
この部屋の資料や書類は持ち出せないから……。
「大岡大尉!
私はこの研究室の資料を整理というか、読んで、仕分けしたり、まとめたりすればいいのでしょうか?」
「ああ、そうしてもらえると助かる。
中佐の視点を知っている、早瀬医療士に頼めて良かった。
それから医療士としても活動できるように話をすすめていいだろうか?」
「はい、お願いします」
とりあえず資料整理、がんばろう。
父が『進化』と言っていたことからまとめていこう。
これが、今現在進行形で動いている事案だしね。
この部分がわかってくると、誰がこの力に気づいて、この力を得ようと事故に見せかけて実験をしようとしているのか……、見えてくるかもしれない。
しかし……やり始めて頭を抱えた。
思ったより、難しい。
資料が……。いろいろなことに使えるというか……。
ひとつの資料でも、進化、ダンジョンの魔物、戦い方といくつかの内容を含んでいる……。
仕分けるということが難しい。
これは資料をテーマごとにそれぞれ参照できるように仕組みを作るしかない!?
うう、資料にナンバリングして、関係しているテーマのタグつけるか!?
読みながら……、どんどんデジタル化していくか……。
ハヤトにも相談し、とりあえず資料を読んで、各テーマのノートを作り、そこに記録を取りながら、資料にはナンバーと何のテーマに関わっているかを付箋で付けていくことにした。ある程度溜まったら、デジタル化して行けばいいと、それは他の人に頼むこともできる作業だし、ということだった。
私は『進化』『ダンジョンについて』『魔物について』『戦い方』という4つの大きなテーマを作り、そのノートを作ると、資料を読んで、仕分け作業を始めた。
午前中、集中して作業を行い、私の中のダンジョン像というか、父から聞いた話や子どもの頃ギリシャダンジョンの入り口まで父と入った記憶とか、いろいろ思い出した。
魔物は既にある程度、資料というか図鑑のようなものができていて、それを参照に、さらに詳しく知れたことをノートに書き留める。
『進化』と『戦い方』が私にとって、なんだか抽象的で……。
でも、父が関係していた仕事に関われることや新しいことを知ることの楽しさがあった。
「食堂に行こう」
ハヤトは私が仕事に取りかかると研究室を出たり入ったり、忙しそうだったのだけれど。
昼には戻ってきて声を掛けてくれ、私は切りのいいところで作業を終えた。
研究室を出て歩きながら「ずいぶん集中していたね」と言われる。
「大変だけど、楽しくなってきました。
新しいことを知ることができるのは楽しいです」
食堂では身分証でぴっとするらしい。
補助金が出てて、補助金以上のメニューを頼むと差額を払うことになるらしい。
「口座から?」
私が心配そうに言うとハヤトが笑った。
「そんなに食べるの?」
読んで下さり、ありがとうございます。




