22 実験?
どうぞよろしくお願いします。
「このことはあまりに荒唐無稽過ぎて……。
こんな実態が外部に出たら、志願はおろか当番も拒否して逃げ出す者が増えてしまうかもしれない。
だから、秩序に守られた現代的な軍隊の見掛けを取りながら、実際はそういう戦いになる」
「つまり、魔物が使ってくる不思議な力の仕組みや理由はわからないけれど、それを科学の力で再現して、戦うということ?」
「そういう面もあるけれど、中佐は……、俺や君や、何かしらダンジョンの影響を受けて、新しい力を得ている者が現れていると考えていたようだ」
「新しい力……」
「リア、君が治療すると治癒率が高いそうだね」
私は頷いた。
そういうデータは既に出ているから……、事実だ。
「……俺は戦いの場に出ると、身体能力が上がるようだ。いつも以上の力が出る。
同じことを感じている者も、他にふたりくらい知っている」
「……地球上に新しい理が持ち込まれ、それに人間が適応してきてると?」
「ああ、中佐の言葉なら『進化」だ」
「物語の魔物のような……。
じゃあ、この世界に『魔法』なんて力も存在するようになると?」
私は少し呆れて言ってしまった。
そういう世界にあこがれていた同級生もいた。
そういう最近の創作小説やアニメが人気あることを知っている。
でも、それが本当に起きたら?
アニメや小説の世界より、大変なことになるだろう。
力の秩序や強さがひっくり返り、この世界は無秩序になりかねない。
力を得た者が正しく使うとも限らない。力を得ようと不用意に魔物に近づく者なども現れるかもしれない。
「周知した方がいいのか……。
いや、ある程度研究が進んでからの方が、いい?」
私は呟いた。
「中佐と同じようなことを言うね」
私はハヤトを見た。
「でも、これは慎重にしないと。
変に力を欲して、変なことをする人が現れたら!!」
「……既に出ている。
どうやら、魔物と直接接触を人間に与えるという実践研究が行われている国があるのではと俺達は心配している。
……中佐が亡くなった時も、気になることがある。
実は女性の治療士と衛生士が多かったんだ。
しかも若い当番兵と志願兵。
まだダンジョンに派遣されて3ヶ月ほどの……。
そして、我々への指示も。
その時、戦闘主力部隊は動物系の魔物と戦闘状態になっていて、我々は医療士達を後方に逃がして、戦闘への応援の指示だった。
医療班だけ後方へ戻る、護衛の指示はなかったが、退くとはいえまだ戦闘区域。
中佐は自分の隊を分け、中佐と俺が護衛についた。
でも、戻る途中、ゴブリンの群れと人型の魔物が待ち伏せしているように現れて」
「ゴブリンは女性を襲うとされてる魔物だよね? 他の種類は?」
「ああ、今のところ、そういう魔物の代表といえばそうだな。
もう一種類は3人ほどだったが、まるで人間のように見えた」
まるで人間?
人間?
「わざと女性ばかりの班が狙われた?
何かの実験のように?」
「……中佐もそう思ったようだ。
実は他国の軍で、女性兵士が襲われて、生きて保護された後に不思議な能力を発現した事例や、魔物の子を産んだという事例がある。
生まれた子はすぐに死んだようだが、子を産み落とすまで人間の母親が胎内で育むことができるということは……、新しい人種の発生ということだろう」
私は背筋が寒くなった。
「……わざと? 実験のため?
父はそれに気づいて、彼女達を守ろうとして?」
……新しい力を得るために、兵士を魔物と関わらせようとしている者が、前線の軍の上層部にいる!?
「第三師団の上層部?」
私の呟きにハヤトが続ける。
「あるいは魔物の力に魅せられて、手に入れようとしている者が……」
となると、父は戦死でなく、殺されたと言えるだろう。
衛生士達が魔物に襲われるという実験を仕組んだ者に。
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