16 臨月
どうぞよろしくお願いします。
うう、マジでした。
臨月って、本当に辛い。
妊婦生活で一番辛い時期かも。
お腹の中でぐるぐる動き回るし、その度にうっ、いたたってなるし、もうパンパンだもんね、赤ちゃんもきついだろうけど、こっちも無理。
寝ている時も動くから眠れない。
胃を蹴られて、食欲がない……。
横にもなれないっていうか、座ってもたれてるのが一番楽かも。
早く出てきて欲しいのに、これこの大きさのものがどうやって出てくるんだろうと思うと、怖い……。
あー、でも、みんな、お母さんが産んでるんだもんね!
お母さん、死んでないもんね!
大丈夫なんだよね!? ね!?
子どもの性別は男かなと言われているけど、はっきりしてない。
子どもの服ってこっちでは本当に売ってなくて。
ネットと防衛隊の物流を使って、赤ちゃんの物は用意したというか、できてた。
愛理さんと黒須ちゃんのおかげ!?
お礼にこの前のハンドクリームとボディクリームをお渡ししました。
ハヤトもなんかそわそわしてて、毎日、何度も研究室とかに様子を見に来る。
その時は黒須ちゃんがロイと私のところに遊びに来てて、ハヤトに「名前考えてるんですか?」と聞いた。
「リアが付ければ……」
えっ?
そういえばちゃんと話してなかった!
「ハヤトがつけて!
顔を見たら、ハヤトがつけてあげて!」
ハヤトと黒須ちゃんが私を見た。
「私の名前は母が付けたの。
でも、それは異世界との繋がりや思いがあったからで。
この子はそういうの何もない。
ハヤトと私が欲しくて望んで来てくれた子だから、ハヤトに付けて欲しい」
「……いいの?」
「うん」
「っと、どうしよう。
候補ぐらい考えといた方がいいのか?」
「字画とかね!」
黒須ちゃん……。楽しんでるねよね?
「アレクサンドリアと隼人だから、アレクトとか?」
おいっ!
「何そのアレクサみたいの!?」
「あ、アレクサってアレクサンドリアの略だったの!?」
私と黒須ちゃんの漫才みたいな会話にハヤトが大笑いしている。
黒須ちゃんがハヤトに言った。
「季節を入れたりもありですよね!
アレクのお父さんの冬馬さんは冬生まれなの?」
「うん、1月生まれだからって聞いた」
「へー。
どんな素敵な名前になるか、楽しみー♪」
「おい、ハードル上げないでくれよ」
ちょっと情けない声のハヤト。
ふふっ、私がこんだけ辛いのだから、ハヤトもそれぐらいは悩んでくれ……。
ちょっと意地悪いことを考えたらぼかっと蹴られた。
「いてて、もう、お父さん好きなの!?」
「動いてる!? 触らせて!」
ハヤトが大きな手のひらを私のお腹に当てる。
「おとうさんだよー」
ぽこっぽこっと返事のようなかわいい動き。さっきと全然違うがな!?
「……本当にあなたはお父さん好きねー」
私は笑った。
今日はクリスマスイブなのに黒須ちゃんは夜勤だという。
「でも、クリスマスは休みなんだ! やった!」
うれしそうに笑って、夕方前には帰っていった。
私は宿舎にふうふう言いながら帰った。
ああ、君がお腹にいるのも、あと少しなんだね。
その日の夜は早乙女夫妻も来て、クリスマスイブディナー。
ハヤトと早乙女さんは名前のことで盛り上がり、愛理さんが字画調べるとかなんとか流とか流派があるとか大騒ぎしてた。
クリスマスの日、本部にうれしいお客様が来た。
マインとミネバだ!
ライナスはジェシーとロイの間、つまり日本街の異世界人拠点と本部の連絡係みたいな仕事をしていて、時々会えて、話は聞いていたんだけど。
マインは拠点から出た家族のケアをしているそう。
ミネバは布の花で作ったリースをプレゼントしてくれた。
異世界で作ってた、枯れない花、だね。
異世界から着てきた服の布を利用して作ったのだそう。だから、私がリメイクに使ったリーリラの服の生地も使われてて!
「わ! うれしい! ありがとう!」
ミネバはナップと学校に行っていることをうれしそうに報告してくれた。
うん、良かった!
もちろん、ハンドクリームのプレゼントのお返しをした。たくさん買ってきておいて、良かった!
その夜も次の日もお腹に何も変化なく。
前駆陣痛とかいう陣痛の練習みたいな腹痛があることがあると聞いていたけど、そんなのも全然ない。
26日に研究室に行くと「クリスマスベビーじゃなかったか!」と言われた。
「あはは、クリスマスと誕生日が一緒なのは嫌だったんじゃないですか!?」
読んで下さり、ありがとうございます。




